これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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42.すべての原因は

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「私は侮辱なんて……だってそれが事実だって言われたから」

「言われたから?」

誰がそんなことを六歳のシンディ様に?

「ねぇ、そうでしょう?お母様!」

え?王妃様が?
シンディ様に問いかけられた王妃様は表情を変えもせずに答えた。

「何を言っているの?私がそんな失礼なこと言うわけないでしょう」

「お母様?何を言っているの?」

「アルフレッド様に叱られて悲しい気持ちはわかるけれど、
 人のせいにしてはいけないと教えたでしょう?」

「お母様!?どうしてそんな!」

助けてくれるはずの王妃様に裏切られて、シンディ様は呆然としている。
それだけ王妃様のことを信じていたのだろう。

「幼いころのこととはいえ、失礼なことをしたのなら謝らなければいけないわ。
 さぁ、シンディ。アルフレッド様に謝って、部屋へ戻りなさい」

王妃様は悲しそうに微笑んだ。
まるで聞き分けのない子どもに言い聞かせるように。

だけど、嘘だ。
精霊が王妃様が嘘をついていると告げている。
まさか、これまでシンディ様がおかしかったのは王妃様のせいなの?

完全に否定されたシンディ様は信じられないのか、青ざめている。
味方だと信じ切っていた王妃様に裏切られても認めたくないのかもしれない。

「お母様……どうしてなのよ。
 そうだ、アキム!アキムならわかるでしょう!?
 お母様が私にそう言っていたの聞いているわよね!」

シンディ様はあたりを見回すようにしてアキムを探す。
呼ばれたアキムは群衆をかき分けるようにして前に出て来た。

「アキム!あなたはお母様の話を聞いていたわよね!?」

「私はシンディ様が王妃様とお茶を飲む時に何度も同席していましたが、
 そのような話が出てきたことはありません」

「嘘よ!アル兄様がルーチェ様と婚約した後もそう言っていたのに!
 アル兄様と結婚するのは私だと決まっているのだから心配はしなくていいって!
 アル兄様の運命の相手は私だって、いつも言っていたでしょう!?」

「……シンディ様はお疲れなのでしょうか。
 アルフレッド様に婚約者ができたことを認めたくないのかもしれませんが、
 初恋は実らないものだと言いますし、あきらめることも必要ですよ」

「……アキムまで……どうして。どうしてなの」

ぽろぽろと涙をこぼしながら、シンディ様はその場に崩れ落ちた。

「アルフレッド様、母親として謝罪いたしますわ。
 シンディは失恋のせいで少しおかしくなっているのかもしれません。
 静養すればきっと前のように明るいシンディに戻るでしょう」

「……本当にそうなのか?」

「あら、それはどういうことですか?
 まさか私が嘘をついていて、シンディのほうが正しいとでも?
 あんなにおかしなことを言っていたシンディが?」

「……」

たしかに発言のおかしさだけで言えばシンディ様が妄想で話したと思う。
周りにいる貴族たちもシンディ様のことをなんてお騒がせなとつぶやいているのが聞こえる。

「誰か、シンディを部屋に連れていきなさい」

陛下が騎士たちに命じる。
このままではシンディ様が退場して、それで終わりになってしまう。
迷ったけれど、どうしても許すことはできなかった。

「お待ちください、陛下」

「どうした?ルーチェ姫。シンディに文句でも言いたいのか?」

「いえ、そうではありません。シンディ様は嘘をついていません」

「は?どういうことだ?」

「嘘をついているのは王妃様とアキムのほうです」

「……王妃が嘘をついたのか。なんということだ」

陛下は私の精霊の力を知っている。
だから私の証言を信じられるのだろう。

他の貴族たちは私の証言を信じる理由がないため、疑いの目で見ているのがわかる。
シンディ様でさえ、どうして?と顔が言っているのが見える。

すぐ後ろで心配そうなアルフレッド様の声が聞こえる。
私だけに聞こえるくらいの小さな声。

「ルーチェ、言ってしまっていいのか?」

「放っておけないんです。だって、シンディ様は騙されただけかもしれないんだもの」

「……そうか。わかった。好きなようにしていい。
 あとのことは俺がなんとかする」

「ありがとうございます」

小声でやり取りしていると、王妃様が私に微笑みかけてくる。
そして困ったように眉を下げたまま、一歩前に出た。

「まぁ……私が嘘をついたと言うのですか?
 私は何かルーチェ様に嫌われるようなことをしたのでしょうか?」

「いいえ、私は王妃様に何もされていません。
 だからあなたを嫌いになる理由もありません」

「では、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?」

「王妃様が嘘をついているとわかるからです」

「まさか、シンディが可哀想だから味方になってあげたいとでも思ったのでしょうか?」

「それも違います。ですが、シンディ様は何一つ嘘を言っていない。
 本気でそう思っているから、あのようなことを言ったのです」

「……シンディが思い込んでいるのは仕方がありませんが、
 どうしてそのように私が嘘を言ったと決めつけるのでしょうか」

悲しそうな王妃様の表情に、貴族たちから同情する声が聞こえた。
ああ、この人はこんな風に人を動かしてきたのか。

「アントシュには精霊がいるという話を聞いたことはありますか?」

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