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52.運命
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「お父様、ルーチェ様がアントシュの王女に戻って、
アル兄様と婚約するという噂を聞いたのだけど、本当?」
「ああ、本当だ」
「それって、ルーチェ様がアントシュを継ぐからよね?」
「……まぁ、そうだな」
「そう……」
何かを考え込むようなシンディ様を誰もが見ている。
いったい何をしに来たのだろう。
見ていたら、くるりとシンディ様は振り返って私を見た。
「ルーチェ様」
「え?何かしら」
「私と交換してちょうだい」
「……は?」
「私だって、その権利があるはずよね!
だって、私もアントシュの王女なのだから!」
生まれはそうかもしれないけれど……。
そのことについては何を言っていいかわからずお父様を見る。
「シンディ……あの時の子なのか」
「ええ、そうです、初めまして、本当のお父様」
「そうか、この子が……クラリスに似ているな……」
それは知らなかった。
シンディ様はお母様に似ているんだ。
さらさらした金色の髪。お母様もそうだったのかな。
ベルコヴァにはシンディ様の居場所はなくなってしまった。
だから、アントシュに戻ってやり直したいのかもしれないけれど、
お父様はどう判断するのだろう。
悩むような表情のお父様に声をかけたのはアルフレッド様だった。
「ダニエル国王、いいですか?」
「ああ、何かな」
「俺にシンディと話させてください」
「わかった」
私の隣にいたアルフレッド様がシンディ様の前に立つ。
それだけでシンディ様がうれしそうに笑ったのが見えた。
ああ、シンディ様は本当にアルフレッド様が好きだったんだ。
王妃様のせいでうまくいかなかったけれど、気持ちは本物だった。
「シンディ、俺はアントシュの王女と婚約したんじゃない。
ルーチェと、ルーチェだから婚約したんだ。
シンディがアントシュの王女に戻ったとしてもそれは変わらないよ」
「そんなの……だって、ずるいじゃない!」
「ずるい?」
「私たちは双子だったのに、ルーチェ様だけ本当のお父様とお兄様と暮らして、
その上、アル兄様と結婚するだなんてずるいわ!」
私はずるいのだろうか?
たしかにお父様とお兄様とは一緒に暮らせたけれど、
精霊が悪さをするかもしれないからと、幼い頃は会わせてもらえなかった。
私のそばにはリマと何人かの使用人だけ。
大きくなってようやく会えるようになったけれど、
それもクーデターで会えなくなって、リマと二人で閉じ込められていた。
「本当にずるいと思うのか?
精霊付きだからと自由になれなかったルーチェが」
いつもよりも低い声。
アルフレッド様が怒っている。
「精霊付きだから大事にされていたんでしょう?」
「精霊付きだから、閉じ込められていたんだ。
シンディはずっと自由で好きなことばかりしていたじゃないか」
「だけどっ!お母様も使用人たちも私を騙していたわ!
ルーチェ様のほうがずっとずっと幸せじゃない!」
どちらがと比べるのはどうかと思うけれど、
選べるのなら私は私でいたいと思うだろう。
そう思えるのは幸せなことなのかもしれない。
「アルフレッド様、私の代わりに怒ってくれてありがとう」
「ルーチェ……」
「シンディ様が苦しかったのだとしても、私が謝ることではないと思うわ。
だから、この立場を交換することはできないの」
「嫌よ!だって、アル兄様は私の運命の人なのよ!
お母様たちに言われたからじゃないわ!
自分でそう思ったから!」
「俺はシンディの運命の相手じゃない」
「っ!」
泣きそうな顔のシンディ様に本当は気づいているんじゃないのと聞きたい。
気づいていて、それでもあきらめたくないのでしょう、と。
でも、その前にアルフレッド様は終止符を打ってしまう。
「たとえ、シンディが俺の運命の相手だったとしても関係ない。
俺は、これが運命ではなかったとしてもルーチェを選ぶだろう」
「そんな……」
「俺はルーチェが好きなんだ。
シンディの運命の相手じゃなくて悪いな……」
泣き出してしまったシンディ様に罪悪感があるのか、
アルフレッド様の語尾は小さかった。
それでもちゃんと聞こえていたのか、シンディ様がぐいっと手で涙を拭いた。
「もういいわよ!アル兄様なんていらないわ!
ルーチェ様にあげるわよ!」
「あ、ありがとう?」
「……絶対に幸せにならなかったら許さないんだからね!」
「ええ、わかったわ」
真っ赤な顔したシンディ様はそれだけ言うと謁見室から出て行った。
それと同時にため息が聞こえる。
お父様とエッカルト様だった。
「エッカルト……」
「後でシンディとも話してもらえますか」
「ああ、ここまで守ってくれてありがとう」
「シンディは私が責任をもって育てます。
安心してください」
「ああ、これからもよろしく頼む」
もしかしたらシンディ様も連れて帰るのかもと思っていたけれど、
考えてみればシンディ様をアントシュの王女だとは言えないのだった。
連れて帰っても双子であることを公表すれば受け入れてもらえない。
そのくらいなら、ベルコヴァで過ごしていたほうが幸せかもしれない。
「とりあえず、シンディは納得したようだな」
「そうですね。アルフレッド様を幸せにしなかったら恨まれそうです」
「俺を?」
「シンディ様が大事なのはアルフレッド様ですから」
きっとシンディ様はアルフレッド様を幸せにしたかった。
方法は間違えていたけれど、その想いはわかる。
それはもしかしたら、私たちが双子だからなのかもしれない。
アル兄様と婚約するという噂を聞いたのだけど、本当?」
「ああ、本当だ」
「それって、ルーチェ様がアントシュを継ぐからよね?」
「……まぁ、そうだな」
「そう……」
何かを考え込むようなシンディ様を誰もが見ている。
いったい何をしに来たのだろう。
見ていたら、くるりとシンディ様は振り返って私を見た。
「ルーチェ様」
「え?何かしら」
「私と交換してちょうだい」
「……は?」
「私だって、その権利があるはずよね!
だって、私もアントシュの王女なのだから!」
生まれはそうかもしれないけれど……。
そのことについては何を言っていいかわからずお父様を見る。
「シンディ……あの時の子なのか」
「ええ、そうです、初めまして、本当のお父様」
「そうか、この子が……クラリスに似ているな……」
それは知らなかった。
シンディ様はお母様に似ているんだ。
さらさらした金色の髪。お母様もそうだったのかな。
ベルコヴァにはシンディ様の居場所はなくなってしまった。
だから、アントシュに戻ってやり直したいのかもしれないけれど、
お父様はどう判断するのだろう。
悩むような表情のお父様に声をかけたのはアルフレッド様だった。
「ダニエル国王、いいですか?」
「ああ、何かな」
「俺にシンディと話させてください」
「わかった」
私の隣にいたアルフレッド様がシンディ様の前に立つ。
それだけでシンディ様がうれしそうに笑ったのが見えた。
ああ、シンディ様は本当にアルフレッド様が好きだったんだ。
王妃様のせいでうまくいかなかったけれど、気持ちは本物だった。
「シンディ、俺はアントシュの王女と婚約したんじゃない。
ルーチェと、ルーチェだから婚約したんだ。
シンディがアントシュの王女に戻ったとしてもそれは変わらないよ」
「そんなの……だって、ずるいじゃない!」
「ずるい?」
「私たちは双子だったのに、ルーチェ様だけ本当のお父様とお兄様と暮らして、
その上、アル兄様と結婚するだなんてずるいわ!」
私はずるいのだろうか?
たしかにお父様とお兄様とは一緒に暮らせたけれど、
精霊が悪さをするかもしれないからと、幼い頃は会わせてもらえなかった。
私のそばにはリマと何人かの使用人だけ。
大きくなってようやく会えるようになったけれど、
それもクーデターで会えなくなって、リマと二人で閉じ込められていた。
「本当にずるいと思うのか?
精霊付きだからと自由になれなかったルーチェが」
いつもよりも低い声。
アルフレッド様が怒っている。
「精霊付きだから大事にされていたんでしょう?」
「精霊付きだから、閉じ込められていたんだ。
シンディはずっと自由で好きなことばかりしていたじゃないか」
「だけどっ!お母様も使用人たちも私を騙していたわ!
ルーチェ様のほうがずっとずっと幸せじゃない!」
どちらがと比べるのはどうかと思うけれど、
選べるのなら私は私でいたいと思うだろう。
そう思えるのは幸せなことなのかもしれない。
「アルフレッド様、私の代わりに怒ってくれてありがとう」
「ルーチェ……」
「シンディ様が苦しかったのだとしても、私が謝ることではないと思うわ。
だから、この立場を交換することはできないの」
「嫌よ!だって、アル兄様は私の運命の人なのよ!
お母様たちに言われたからじゃないわ!
自分でそう思ったから!」
「俺はシンディの運命の相手じゃない」
「っ!」
泣きそうな顔のシンディ様に本当は気づいているんじゃないのと聞きたい。
気づいていて、それでもあきらめたくないのでしょう、と。
でも、その前にアルフレッド様は終止符を打ってしまう。
「たとえ、シンディが俺の運命の相手だったとしても関係ない。
俺は、これが運命ではなかったとしてもルーチェを選ぶだろう」
「そんな……」
「俺はルーチェが好きなんだ。
シンディの運命の相手じゃなくて悪いな……」
泣き出してしまったシンディ様に罪悪感があるのか、
アルフレッド様の語尾は小さかった。
それでもちゃんと聞こえていたのか、シンディ様がぐいっと手で涙を拭いた。
「もういいわよ!アル兄様なんていらないわ!
ルーチェ様にあげるわよ!」
「あ、ありがとう?」
「……絶対に幸せにならなかったら許さないんだからね!」
「ええ、わかったわ」
真っ赤な顔したシンディ様はそれだけ言うと謁見室から出て行った。
それと同時にため息が聞こえる。
お父様とエッカルト様だった。
「エッカルト……」
「後でシンディとも話してもらえますか」
「ああ、ここまで守ってくれてありがとう」
「シンディは私が責任をもって育てます。
安心してください」
「ああ、これからもよろしく頼む」
もしかしたらシンディ様も連れて帰るのかもと思っていたけれど、
考えてみればシンディ様をアントシュの王女だとは言えないのだった。
連れて帰っても双子であることを公表すれば受け入れてもらえない。
そのくらいなら、ベルコヴァで過ごしていたほうが幸せかもしれない。
「とりあえず、シンディは納得したようだな」
「そうですね。アルフレッド様を幸せにしなかったら恨まれそうです」
「俺を?」
「シンディ様が大事なのはアルフレッド様ですから」
きっとシンディ様はアルフレッド様を幸せにしたかった。
方法は間違えていたけれど、その想いはわかる。
それはもしかしたら、私たちが双子だからなのかもしれない。
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