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53.旅立ち
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アルフレッド様と私の婚約が調ったとはいえ、
お父様はすぐに旅に出られるような体調ではなかった。
そのため、私の一学年の授業が終わるのを待って、
アントシュに戻ることになった。
学園で仲良くなったダイアナとアラベルに帰ることを伝えると、
二人とも泣き出してしまう。
「ど、どうしたの!?」
「だって……せっかくルーチェ様と仲良くなれましたのに」
「そうですわ~まだ二年あると思ってましたのよ」
「……ごめんなさい」
二人が私と過ごす二年間を楽しみにしてくれていたのだとわかり、
申し訳なく感じるけれど、どうしようもない。
どうしたら泣き止んでくれるか悩んでいたら、
二人は無理やり涙を止めるようににっこり笑った。
「では!残りの時間は一緒に楽しんでくださいますよね!」
「え、ええ」
「お茶会する約束、果たしてくださいね!」
「ええ、わかったわ」
二人も高位貴族として育てられている。
王族としての責任もわかっているから、これ以上のことは言わないでくれる。
本当に二人と仲良くなれてよかった。
そうでなかったら、ベルコヴァの貴族への印象は悪いままだったかもしれない。
夜会でも私のことを助けようと一生懸命だった。
国は離れてしまうけれど、ずっと友人でいてほしいと思う。
それからは残りの学園生活を惜しむように楽しみ、
宮に帰ってからはアルフレッド様との仲を深めていった。
私がアルフレッド様の宮にいることをお父様はあまりいい顔をしなかったけれど、
今さら違うベッドで寝ようとしても眠れる気がしない。
私のいないところでアルフレッド様がお父様たちから何か言われていたようだけど、
これだけはわがままを通させてもらった。
そして一学年の授業がすべて終わり、ベルコヴァを立つ日が来た。
アルフレッド様の宮で働いていた四十人の使用人たちは、
全員がアントシュへの移籍を願い出た。
それだけではなく、アントシュの戦いの時に派遣されていた騎士の半数近くが、
アルフレッド様の下につきたいと願い出たそうだ。
さすがにこれにはエッカルト様も苦笑いだったそうだけど、
結果的には全員の移籍が認められた。
出発前、ダイアナとアラベルと別れを惜しんでいると、
意外にもシンディ様が姿を見せた。
どうやらラウレンツ王子がシンディ様を引っ張って来たらしく、
シンディ様は嫌そうな顔をしている。
「ラウレンツ様、シンディ様、見送りに来てくれたの?」
「はい。せっかくお姉様が増えたのに、叔父様がルーチェ様を隠してしまうから、
あまり交流できなくて残念でした。
しかもアントシュに戻ってしまうなんて……本当に残念です」
「そうね、でもアントシュに戻っても、
ベルコヴァのことは忘れないし、ラウレンツ様のことは弟だと思っているわ」
「本当ですか!うれしいです。
あの、手紙を書いてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
やったと喜んでいるラウレンツ様を微笑ましく見ていると、
シンディ様と目があった。
「何か言いたいことでも?」
「そうね……一応はルーチェ様はお父様の養女だったわけだし、
……お姉様って呼んであげてもいいのよ」
「ふふふ。呼んでくれるのならうれしいわ」
「本当に?私のこと嫌いでしょう?」
素直にうれしかったのだけど、シンディ様はそうは思わなかったようだ。
「いいえ?嫌われているなとは思っていたけれど、
私は嫌いになれなかったわ」
「どうして?」
「アルフレッド様を好きだっていう気持ちはわかるから。
同じ気持ちを持っているからか、嫌いにはなれなかったの。
ああ、わかるなぁって思ってしまって」
「恋敵だったのに、ずいぶんとお人好しなのね。
そんなんで女王になって大丈夫なの?」
「わからないけれど、頑張ってみるわ」
「そう……せいぜい頑張んなさいよね、お姉様」
「ええ、ありがとう」
恥かしそうな顔のシンディ様をラウレンツ様がにこにこ笑って見ている。
ここにいる間は仲良くなれなかったけれど、
最後は笑ってお別れできそう。
「ルーチェ、準備ができた」
「はーい」
少し離れたところからアルフレッド様が私を呼ぶ。
二人と話すつもりはないみたい。
シンディ様が悲しがるかと思ったけれど、平気そうな顔をしている。
もう吹っ切れたということなのかもしれない。
「それじゃあ、またね」
「ええ」
「お気をつけて!」
軽く手を振ってからアルフレッド様のもとへと向かう。
「笑顔だったな。何を話していたんだ?」
「お姉様、と呼んでもらえました」
「へぇ。そうか……よかったな」
「はい」
アルフレッド様の手を借りて馬車に乗る。
ここに最初に来た時とは違った思いで城を眺める。
「あの時、本当はすごく不安でした。
なのに、アルフレッド様に抱き上げられて謁見室まで連れて行かれて、
緊張だとかそんなのが吹き飛んだのを思い出します」
「そうか。懐かしいな」
馬車がゆっくりと動き出す。
手を振ってくれる皆に手を振り返す。
その手が疲れても、ずっと振っていたかった。
また会える日まで、どうか元気で。
お父様はすぐに旅に出られるような体調ではなかった。
そのため、私の一学年の授業が終わるのを待って、
アントシュに戻ることになった。
学園で仲良くなったダイアナとアラベルに帰ることを伝えると、
二人とも泣き出してしまう。
「ど、どうしたの!?」
「だって……せっかくルーチェ様と仲良くなれましたのに」
「そうですわ~まだ二年あると思ってましたのよ」
「……ごめんなさい」
二人が私と過ごす二年間を楽しみにしてくれていたのだとわかり、
申し訳なく感じるけれど、どうしようもない。
どうしたら泣き止んでくれるか悩んでいたら、
二人は無理やり涙を止めるようににっこり笑った。
「では!残りの時間は一緒に楽しんでくださいますよね!」
「え、ええ」
「お茶会する約束、果たしてくださいね!」
「ええ、わかったわ」
二人も高位貴族として育てられている。
王族としての責任もわかっているから、これ以上のことは言わないでくれる。
本当に二人と仲良くなれてよかった。
そうでなかったら、ベルコヴァの貴族への印象は悪いままだったかもしれない。
夜会でも私のことを助けようと一生懸命だった。
国は離れてしまうけれど、ずっと友人でいてほしいと思う。
それからは残りの学園生活を惜しむように楽しみ、
宮に帰ってからはアルフレッド様との仲を深めていった。
私がアルフレッド様の宮にいることをお父様はあまりいい顔をしなかったけれど、
今さら違うベッドで寝ようとしても眠れる気がしない。
私のいないところでアルフレッド様がお父様たちから何か言われていたようだけど、
これだけはわがままを通させてもらった。
そして一学年の授業がすべて終わり、ベルコヴァを立つ日が来た。
アルフレッド様の宮で働いていた四十人の使用人たちは、
全員がアントシュへの移籍を願い出た。
それだけではなく、アントシュの戦いの時に派遣されていた騎士の半数近くが、
アルフレッド様の下につきたいと願い出たそうだ。
さすがにこれにはエッカルト様も苦笑いだったそうだけど、
結果的には全員の移籍が認められた。
出発前、ダイアナとアラベルと別れを惜しんでいると、
意外にもシンディ様が姿を見せた。
どうやらラウレンツ王子がシンディ様を引っ張って来たらしく、
シンディ様は嫌そうな顔をしている。
「ラウレンツ様、シンディ様、見送りに来てくれたの?」
「はい。せっかくお姉様が増えたのに、叔父様がルーチェ様を隠してしまうから、
あまり交流できなくて残念でした。
しかもアントシュに戻ってしまうなんて……本当に残念です」
「そうね、でもアントシュに戻っても、
ベルコヴァのことは忘れないし、ラウレンツ様のことは弟だと思っているわ」
「本当ですか!うれしいです。
あの、手紙を書いてもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
やったと喜んでいるラウレンツ様を微笑ましく見ていると、
シンディ様と目があった。
「何か言いたいことでも?」
「そうね……一応はルーチェ様はお父様の養女だったわけだし、
……お姉様って呼んであげてもいいのよ」
「ふふふ。呼んでくれるのならうれしいわ」
「本当に?私のこと嫌いでしょう?」
素直にうれしかったのだけど、シンディ様はそうは思わなかったようだ。
「いいえ?嫌われているなとは思っていたけれど、
私は嫌いになれなかったわ」
「どうして?」
「アルフレッド様を好きだっていう気持ちはわかるから。
同じ気持ちを持っているからか、嫌いにはなれなかったの。
ああ、わかるなぁって思ってしまって」
「恋敵だったのに、ずいぶんとお人好しなのね。
そんなんで女王になって大丈夫なの?」
「わからないけれど、頑張ってみるわ」
「そう……せいぜい頑張んなさいよね、お姉様」
「ええ、ありがとう」
恥かしそうな顔のシンディ様をラウレンツ様がにこにこ笑って見ている。
ここにいる間は仲良くなれなかったけれど、
最後は笑ってお別れできそう。
「ルーチェ、準備ができた」
「はーい」
少し離れたところからアルフレッド様が私を呼ぶ。
二人と話すつもりはないみたい。
シンディ様が悲しがるかと思ったけれど、平気そうな顔をしている。
もう吹っ切れたということなのかもしれない。
「それじゃあ、またね」
「ええ」
「お気をつけて!」
軽く手を振ってからアルフレッド様のもとへと向かう。
「笑顔だったな。何を話していたんだ?」
「お姉様、と呼んでもらえました」
「へぇ。そうか……よかったな」
「はい」
アルフレッド様の手を借りて馬車に乗る。
ここに最初に来た時とは違った思いで城を眺める。
「あの時、本当はすごく不安でした。
なのに、アルフレッド様に抱き上げられて謁見室まで連れて行かれて、
緊張だとかそんなのが吹き飛んだのを思い出します」
「そうか。懐かしいな」
馬車がゆっくりと動き出す。
手を振ってくれる皆に手を振り返す。
その手が疲れても、ずっと振っていたかった。
また会える日まで、どうか元気で。
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