その手をとって、反撃を

gacchi(がっち)

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30.対決

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「さて、ロドルフ王子とレベッカ嬢は退学されるということでよろしいですかな?」

「はっ、いや、それは」

「退学だなんてっ」

「だが、その条件は二人が言い出したのだろう?レベッカ嬢はバラチエ侯爵と、
 ロドルフ王子は陛下と退学について話をすればいいかな。
 私が訪ねていくと伝えておいてくれ」

「そんな……」

「嫌よ!退学だなんて!」

崩れ落ちたロドルフ様とは違い、レベッカ様はまだあきらめていなかった。
貴族であれば全員が通うこの学園を卒業できなければ、
侯爵令嬢だとしても嫁ぎ先が見つからないかもしれない。
そう簡単に受け入れられないのはわかるけれど。

だから、負けたほうが退学だなんて言い出さなければよかったのに。
最初の条件なら、二人とも退学する必要はなかった。
だけど、陛下まで認めてしまった条件をなかったことにはできない。

「こんな試験は無効だわ!」

「ほう、無効とはどういうことかな?」

レベッカ様は学園長につかみかかるようにして無効を訴えた。

「魔術の訓練を始めて一週間のナディアに負けるのはおかしいじゃない!」

その言葉に周囲にいた学生たちもざわめきだす。

「一週間だと?」
「ああ、そういえばのぞきに行った奴が言っていたな。ずっと魔力調整ばかりしていたと」
「そんな奴がまともに魔術を使えるのか?」
「やはりクラデル家の養女だから……」
「いや、シリウス様の弟子だからじゃないのか?」
「それって、ズルしたってこと?」

私の試験結果をあやしむ声が大きくなる。

人前で魔術を使ったことがない私をあやしむのも無理はない。
レベッカ様も負けを認めたら退学になってしまう。
否定したい気持ちはわからないでもないけれど。

「ふむ。レベッカ嬢はどうしたら負けを認めるというんだ?」

「今、ここでナディアの魔術を見せてもらわないと納得できません!」

「ここで?レベッカ嬢と魔術比べするとでもいうのか?」

「っ。私はそれでもかまいませんっ!」

魔術比べは同じ魔術を披露して、どちらが優れているか周りに問うものだ。
たしかにこれならばどちらが上かはっきりするけれど。

「では、挑まれたナディア嬢に指定する権利がある。
 どの魔術で比べるかい?」

「そうですね……魔術演習の教科書で一番最初に書かれている、灯りを」

「は?」

「灯りか……それはとてもいいね。念のため、学生たちは離れるように」

学園長の指示で学生たちは私とレベッカ様を囲むように離れる。
初期の魔術でも簡単なものを指定されたからか、レベッカ様は不機嫌さを隠さない。

「どうしてあんな簡単な魔術を……」

「ええ、簡単だわ。だからこそ、比べられるのよ」

「どういうことよ」

「勝負はどれだけ小さな火を灯し続けられるか、よ」

「小さく?明るくじゃないの?」

「それじゃあ、まぶしすぎて見ている人が大変でしょう。始めるわよ。
 私が見本をみせるわ。その火と同じくらいの大きさで続けて」

書かなくても発動できるが、あえて魔術式を書いて発動させる。
手のひらを上に向けて、小さな火を灯した。
指先ほどの灯りは揺らぐことなく周りを照らす。

「何よ、そんなしょぼい火!簡単じゃない!」

同じようにレベッカ様が火を灯すけれど、私の倍はある。
そして火がゆらいで、大きくなったり小さくなったりしている。

「私の火よりも大きいようだけど?」

「うるさいわね!今、小さくするわよ!」

そうは言うけれど、少しも小さくならない。
レベッカ様の顔が苦しそうに歪む。

レベッカ様も魔力量は多いほうだろう。
魔力量が多いものは比較的大きい魔術のほうが発動しやすい。
魔力量を少なく制限して使うというのはかなり集中しなければいけない。
同じ魔力量で魔術を使い続けるというのも技術がいる。

ずっと火がゆらいでいたレベッカ様は、
とうとう火が消えてしまった。

「あら、もう終わり?」

「まだよ!」

レベッカ様はまた火を灯そうとしたけれど、
学園長が終わりを告げた。

「魔術比べは終わりだ。
 皆もわかっただろう。ナディア嬢の魔術の正確さを。
 あとで自分ができるかどうかを試してみるといい。
 ナディア嬢との差を理解できるだろう」

「れ、レベッカ……大丈夫か?」

「なによ……なによ。あんなのたいしたことないじゃない」

ロドルフ様がレベッカ様をなぐさめようとしていたけれど、
怒りに震えているレベッカ様には聞こえていない。

「もっとちゃんとした魔術で戦いなさいよ!この卑怯者!」

「卑怯なのはどっちなのよ」

今までのことを思い出すと、レベッカ様には言われたくない。
令息たちに私を襲わせようとしたこと、忘れているのだろうか。

どうしても納得できないレベッカ様を見て、
学園長が教師たちを呼ぼうとしている。
無理やりにでもバラチエ侯爵家に帰そうとしているのか、
学園長室で説得しようとしているのか。
どちらにしても、もう私には関係ないと思い、ミリアと帰ろうとする。

「待ちなさいよ!」

振り向いた時には、レベッカ様は魔術式を書きあげ、
私に向かって火球を投げつけたところだった。

「危ない!」

誰かが叫んで、火球に気がついた令嬢たちが悲鳴をあげる。
火球はまっすぐに私とミリアへと向かってきていた。

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