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2章 次代へ
1.十数年後のルールニー王国にて
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「ねぇ、どうしてもダメ?」
「ダメよ。無理だわ。」
「少しくらい考えてくれてもいいのに。」
お腹の中の三人目が安定期に入って、
久しぶりにマーガレットとお茶をしていた。
さきほどからせがまれているのは、
息子のジークハルトとエリーゼ王女の婚約の申込みだ。
生まれる前にお願いされたこともあったが、その時も断っている。
なのに、再度こうしてお願いされるのは、エリーゼ王女が原因だ。
まだ7歳なのにもかかわらず、8歳のジークハルトと結婚したいと、
我がままを言って困らせているらしい。
さすがに陛下になったレオナルド様は、王女の我がままを許さなかったらしい。
その代わりに我がままを聞く羽目になった、マーガレットが困り果てていた。
「あのね、うちの子たちはコンコード公爵家だけじゃなく、
オーガスト公爵家も継がなきゃいけないのよ?」
「知ってるわ。だけど、ジョルノがオーガスト公爵家を継げばいいじゃない。」
「そんな簡単な話じゃないわ。
ジークハルトとジョルノ、魔力量がどこまで成長するかわからないのよ。
魔女並みの魔力が無いとオーガスト家は継げない。
もしジークハルトがオーガスト公爵家を継ぐことになったら、
…魔力の無いエリーゼ王女と結婚させるわけにはいかないのよ。
本人たちが結婚したいなら仕方ないけど、
少なくともジークハルトにその気はないわ。」
「その気がないのがわかってるから、我がまま言うんでしょうけどね。
そうね…魔力の問題があるのよね。」
「それに、無理に婚約させたら、逃げるかもしれないわよ。」
「逃げる?」
「隣国にも家があるんだもの。祖父母もいるし。
婚約から逃げて隣国に行く可能性があるわ。
ジークハルトは、申し訳ないけど愛国心薄いのよ。」
「逃げられたら困るわね…。」
「そういうことだから、あきらめてくれる?」
ため息をついて、少しぬるくなったお茶を飲む。
初恋をかなえたいエリーゼ王女の気持ちもわかるけど、
ジークハルトはエリーゼ王女が苦手なのだ。
婚約なんて言い出したら、隣国に行って帰ってこないだろう。
無理にでも婚約させる理由があれば、まだ説得できるかもしれないけど、
まったく理由がないのだから。あきらめてもらうしかない。
「オーガスト家って、よく知らないのよ。前公爵はもちろんわかるけど。
私がレガール国にいた頃は王政に関わってなかったから。」
「あぁ、そうね。おばあ様が貴方のおじい様に婚約破棄された事で、
ジョセフ大叔父様とひいおじい様が激怒して、王政から遠ざかったらしいわね。
でも、貴方のお父様が国王になる時には、一度王宮に行ってるはずよ。」
「お父様が国王になる時?お祝いで?」
「違うわ。レガール国で国王になるには、三大公爵家の当主の魔力が必要なのよ。」
「承認だけじゃなく?」
「そう。王宮の魔術具の管理者として国王を登録するのに、
公爵家の魔力がそろわないといけないって。
次の王太子が国王になる時には、もちろん必要になるわ。
今ならお父様が公爵だからいいけど、
もしお父様が倒れるようなことがあれば、私か兄様が行かなきゃ。」
「…知らなかったわ。」
「マーガレットが女王になる条件が、魔力が魔女並みの王配だった理由がそれよ。
公爵家の魔力を受け止める器が無いと無理だからって。
貴方のお父様は一人で受け止められなくて、正妃と二人で受け止めたそうよ。
歴代の国王や、今の国王は一人で受け止められた。
もし二人で受け止めた場合、
どちらかが亡くなったら国王を交代しなければいけなくなるわ。」
「私…何にも知らなかったのね。」
「魔力の話だから、話しにくかったんじゃないかしら。
まぁ、そういうわけだから、うちの子たちはあきらめてくれる?
オーガスト家をどちらが継ぐか決まらないと、婚約なんて無理だもの。」
「はぁぁぁ。…コンコード家よりもそっちが優先?」
「そうよ?あら、これも言ってなかった?
コンコード家はルールニー王族の家でもあるの。
普通の公爵家とは違うわ。
うちの子じゃなくて、王家が継ぐ可能性もあるのよ?
だから、エリーゼ王女が継ぐこともできる。」
「だから、オーガスト家が優先なのね…。」
「そう。オーガスト家は他に継げる人がいないから。
それに、一応はうちの子たちも王族なのよ?
王族同士の結婚は、それなりに理由が必要になるでしょうね。」
「そうよね…フランがいるとはいえ、王太子が決まったわけではないし…。
わかったわ。エリーゼはなんとか説得するわ。」
「ごめんね、そうしてくれる?」
「ダメよ。無理だわ。」
「少しくらい考えてくれてもいいのに。」
お腹の中の三人目が安定期に入って、
久しぶりにマーガレットとお茶をしていた。
さきほどからせがまれているのは、
息子のジークハルトとエリーゼ王女の婚約の申込みだ。
生まれる前にお願いされたこともあったが、その時も断っている。
なのに、再度こうしてお願いされるのは、エリーゼ王女が原因だ。
まだ7歳なのにもかかわらず、8歳のジークハルトと結婚したいと、
我がままを言って困らせているらしい。
さすがに陛下になったレオナルド様は、王女の我がままを許さなかったらしい。
その代わりに我がままを聞く羽目になった、マーガレットが困り果てていた。
「あのね、うちの子たちはコンコード公爵家だけじゃなく、
オーガスト公爵家も継がなきゃいけないのよ?」
「知ってるわ。だけど、ジョルノがオーガスト公爵家を継げばいいじゃない。」
「そんな簡単な話じゃないわ。
ジークハルトとジョルノ、魔力量がどこまで成長するかわからないのよ。
魔女並みの魔力が無いとオーガスト家は継げない。
もしジークハルトがオーガスト公爵家を継ぐことになったら、
…魔力の無いエリーゼ王女と結婚させるわけにはいかないのよ。
本人たちが結婚したいなら仕方ないけど、
少なくともジークハルトにその気はないわ。」
「その気がないのがわかってるから、我がまま言うんでしょうけどね。
そうね…魔力の問題があるのよね。」
「それに、無理に婚約させたら、逃げるかもしれないわよ。」
「逃げる?」
「隣国にも家があるんだもの。祖父母もいるし。
婚約から逃げて隣国に行く可能性があるわ。
ジークハルトは、申し訳ないけど愛国心薄いのよ。」
「逃げられたら困るわね…。」
「そういうことだから、あきらめてくれる?」
ため息をついて、少しぬるくなったお茶を飲む。
初恋をかなえたいエリーゼ王女の気持ちもわかるけど、
ジークハルトはエリーゼ王女が苦手なのだ。
婚約なんて言い出したら、隣国に行って帰ってこないだろう。
無理にでも婚約させる理由があれば、まだ説得できるかもしれないけど、
まったく理由がないのだから。あきらめてもらうしかない。
「オーガスト家って、よく知らないのよ。前公爵はもちろんわかるけど。
私がレガール国にいた頃は王政に関わってなかったから。」
「あぁ、そうね。おばあ様が貴方のおじい様に婚約破棄された事で、
ジョセフ大叔父様とひいおじい様が激怒して、王政から遠ざかったらしいわね。
でも、貴方のお父様が国王になる時には、一度王宮に行ってるはずよ。」
「お父様が国王になる時?お祝いで?」
「違うわ。レガール国で国王になるには、三大公爵家の当主の魔力が必要なのよ。」
「承認だけじゃなく?」
「そう。王宮の魔術具の管理者として国王を登録するのに、
公爵家の魔力がそろわないといけないって。
次の王太子が国王になる時には、もちろん必要になるわ。
今ならお父様が公爵だからいいけど、
もしお父様が倒れるようなことがあれば、私か兄様が行かなきゃ。」
「…知らなかったわ。」
「マーガレットが女王になる条件が、魔力が魔女並みの王配だった理由がそれよ。
公爵家の魔力を受け止める器が無いと無理だからって。
貴方のお父様は一人で受け止められなくて、正妃と二人で受け止めたそうよ。
歴代の国王や、今の国王は一人で受け止められた。
もし二人で受け止めた場合、
どちらかが亡くなったら国王を交代しなければいけなくなるわ。」
「私…何にも知らなかったのね。」
「魔力の話だから、話しにくかったんじゃないかしら。
まぁ、そういうわけだから、うちの子たちはあきらめてくれる?
オーガスト家をどちらが継ぐか決まらないと、婚約なんて無理だもの。」
「はぁぁぁ。…コンコード家よりもそっちが優先?」
「そうよ?あら、これも言ってなかった?
コンコード家はルールニー王族の家でもあるの。
普通の公爵家とは違うわ。
うちの子じゃなくて、王家が継ぐ可能性もあるのよ?
だから、エリーゼ王女が継ぐこともできる。」
「だから、オーガスト家が優先なのね…。」
「そう。オーガスト家は他に継げる人がいないから。
それに、一応はうちの子たちも王族なのよ?
王族同士の結婚は、それなりに理由が必要になるでしょうね。」
「そうよね…フランがいるとはいえ、王太子が決まったわけではないし…。
わかったわ。エリーゼはなんとか説得するわ。」
「ごめんね、そうしてくれる?」
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