5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)

文字の大きさ
41 / 46
2章 次代へ

24.王太子妃の生家

しおりを挟む
バイアール侯爵家についての調査結果が出たのは、婚約から10日後だった。
思ったよりも時間がかかったなと思ったら、
予想外なことを知らされることになった。



謁見室に呼ばれた俺とレミーアが会わせられたのは、
赤い髪に黒目の大柄な男性だった。
レガール国の三大公爵家のジョージア・バンガル公爵だ。

「ああ、レミーア、会ったことは無いが、俺のことは知ってるな?
 ジュリアの兄だ。」

「お母様の?」

「ああ、ジュリアがバンガル家の長女だと聞いていないのか?」

「大きくなったら話すと言われていたので、
 詳しいことは何も聞かされていないのです。」

「そうだったのか。
 ジュリアは魔術師学校時代に、
 留学で来ていたバイアール侯爵と結婚したいと言い出して。
 駆け落ちのような状態でルールニー王国に嫁いだんだ。
 その後、俺とは手紙でやり取りしていたんだがな…。
 俺たちの両親はなかなか認められなかったようで、
 最後まで会うことは無かったよ。」


「だから大きくなったら話す、だったのですね。
 ですが、お母様は2年前亡くなってしまいました。
 その後、すぐにお姉様もお嫁に行ってしまって…
 お義母様と義弟が家に入ったのです。
 そんな状況では、お母様の生家の話を聞くことはできませんでした。」

「ジュリアは美しかった。俺とは違って、金髪の緑目で小柄で。
 レミーアはジュリアに似たんだな。
 気が付かなくて悪かった。すぐに助けられなくて。
 ジュリアが亡くなった後から、ずっと虐げられていたのだろう?」

「お父様が…お母様が亡くなったことを認められなくて、
 私を見ると思い出すからと遠ざけられるようになって。
 お義母様からの仕打ちを言う機会すらありませんでした…。
 おそらくお父様は知らないと思います。」

「ああ、知らなかったようだ。」

公爵とレミーアの話に割って入ったのは父上だった。

「今回詳しく調査した結果、ジョージア殿の姪だと知ってね。
 ジョージア殿にも連絡したんだ。
 その上で侯爵も呼んで話を聞いたのだが…
 まったく気が付いていなかったそうだよ。
 再婚した妻にすべて任せて、家にはほとんど帰っていなかったそうだな。
 後妻も侯爵が家に帰ってこない辛さを、義娘にぶつけていたそうだ。
 それで、その結果をすべてジョージア殿にも報告したら…。」

「侯爵を許すわけにはいかない。
 駆け落ち同然で連れ去った妹との、大事な娘をこんな目に合わせるとは。
 もう侯爵家に籍を置いておく必要はない。
 レミーア、お前はこれからはバンガルを名乗りなさい。」

「え?」

「レミーア嬢はバンガル家の養女にするそうだ。」

「ええ?」

「ああ、だから今日ここにバンガル公爵がいらっしゃったわけですね。
 いろいろと納得できました。
 レミーア、これからのことを考えると断らない方が良いと思う。」

「これからのことですか?」

「うん、君は王妃になるだろう?
 だけど、王妃の生家に、そんな義母や義弟がいるのはまずい。
 そこをついてくるものも多いだろう。
 だけど、バンガル家の養女になるなら、身分のことを言えるものはいなくなる。
 レガール国の三大公爵家っていうのは、
 ルールニー王国で言うコンコード公爵家のようなものだ。
 王家に次ぐ立場の者なんだよ。
 しかもただの養女じゃない。当主の姪なら血筋的にも問題が無い。
 これで、レミーアを王太子妃にすることを抗議できる家は無くなる。

 …もしかして、それも考えて養女にと言ってくれたのでしょうか?」

「大事な姪だからな。憂いなく王妃になってもらいたい。
 想い合って、大事にされているそうだしな。
 ちゃんと幸せになってほしいんだよ。」

「…ありがとうございます、伯父様。」

「ああ。これからはお父様と呼んでくれると嬉しいかな。
 うちは息子だけでね。娘がいなくてさみしかったんだ。
 こんなに可愛らしい娘が出来て嬉しいよ。」

「はい。お父様。ありがとうございます。」

もうすでに書類は作ってあったようで、
養女になる手続きは署名するだけで終わった。
生家の問題も、バンガル家が後ろ盾になってくれることで問題が無くなった。
無くなるどころか、これ以上ない状態で結婚することができる。
バンガル公爵に連絡をしてくれた父上の思惑通りなのだろう。
本当に父上にはかなわない。
俺はいつか父上をこえるような人になれるだろうか。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました

冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。 一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。 もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。 ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。 しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。 エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。 そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。 「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。 エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。 ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。 ※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。