4 / 76
三、魔女の国アンバー女王視点
しおりを挟む
-鋼の女王-
わたくしは国民からそう呼ばれている。
大柄で勝ち気な強い女のイメージがあるからだろう。
-生まれながらの女王-
わたくしは国民からこうも呼ばれている。
恵まれた環境に生まれ、なんの悩みなく生きているイメージがあるからだろう。
それらは半分当たりで半分は間違いだ。
生まれながらに特権を持った者には、そうではない者にはわからない窮屈な義務や責任がある。
加えて、普通の母としての悩みもあった。
悩みの種の一つは、三女ローズウッドだ。
今日も、そのローズウッドを執務室によんでいる。
ローズウッドは、他の三人の娘とはずいぶん違う。
三人の娘は王家特有の金髪碧眼をしていたが、ローズウッドの髪と瞳は薄いピンク色をしている。
王家歴代の王女の中でも、それはローズウッドだけだった。
ローズウッドは魔力も、著しく乏しい。
すでに体格で負けている妹ダリアに、最近は魔力でも負けていると聞いていた。
それでもわたくしは、他の娘と同様にローズウッドを愛している。
だからこそ、毎朝執務室での歴史書の音読をかかさない。
歴史書の暗記は王女の義務の一つだった。
分厚い歴史書を一文字もたがわずに覚えるなんて、普通はできない。
けれど簡単な魔法を使えば、なんてことはなかった。
げんに四女のダリアでさえ、すでにできているのだから。
けれどそんな魔法でさえ、ローズウッドはいまだに使えない。
こんな王女に誰がついていくだろうか。
こんなことをしても、気休めでしかないのはわかっている。
けれど、じっとしてはいられなかった。
「それはひとえに代々の女王による魔法の加護のおかげなのだ」
眠たそうな目をしたローズウッドは、そこまで読むと『ふああああ』と大きな欠伸をしたのだ。
聞けば、昨夜は遅くまでチューちゃんとお喋りをしていたという。
チューちゃんとは、はつかねずみの姿をしたローズウッドの使い魔である。
なんて呑気なこと。
わたくしは、いらついた。
ーバシッー
鞭でローズウッドの左手を鞭でうつ。
「あ、痛い!」
ローズウッドは小さな声をあげると、うたれて赤く腫れている左手の甲に視線をはしらせていた。
「女王様。私にはこの本を暗唱するなんて無理です」
ローズウッドは、そう言うと閉じた歴史書を執務机の上に乱暴におく。
それからローズウッドは、わたくしへの不満を色々と口にし最後にこうつけ加えたのだ。
「わかりました。
私も、もっと努力をします。
だから、女王様、いえお母様も私をお姉様たちと比べて、余計な心配をしないで下さい。
私は私だから」
と。
ローズウッドがわたくしのことを、そんな風に思っていたのはショックだった。
「比べて憂慮しているわけでは、ありませんよ。
いつかわたくしの気持ちが、あなたに伝わる日がくるのを待っています」
目をふせて、両手をぎゅっと握っているローズウッドを静かな声でさとす。
そして、その日。
わたくしが犯した罪がわかるのですね。
ローズウッドが生まれてすぐに、わたくしはあの子にある魔法をかけた。
それはローズウッドの額に、黒い髑髏の形をした痣を見つけたからです。
それを知ったあなたは、わたくしを許してくれるのでしょうか。
それとも......。
わたくしは心の中で呟いた。
わたくしは国民からそう呼ばれている。
大柄で勝ち気な強い女のイメージがあるからだろう。
-生まれながらの女王-
わたくしは国民からこうも呼ばれている。
恵まれた環境に生まれ、なんの悩みなく生きているイメージがあるからだろう。
それらは半分当たりで半分は間違いだ。
生まれながらに特権を持った者には、そうではない者にはわからない窮屈な義務や責任がある。
加えて、普通の母としての悩みもあった。
悩みの種の一つは、三女ローズウッドだ。
今日も、そのローズウッドを執務室によんでいる。
ローズウッドは、他の三人の娘とはずいぶん違う。
三人の娘は王家特有の金髪碧眼をしていたが、ローズウッドの髪と瞳は薄いピンク色をしている。
王家歴代の王女の中でも、それはローズウッドだけだった。
ローズウッドは魔力も、著しく乏しい。
すでに体格で負けている妹ダリアに、最近は魔力でも負けていると聞いていた。
それでもわたくしは、他の娘と同様にローズウッドを愛している。
だからこそ、毎朝執務室での歴史書の音読をかかさない。
歴史書の暗記は王女の義務の一つだった。
分厚い歴史書を一文字もたがわずに覚えるなんて、普通はできない。
けれど簡単な魔法を使えば、なんてことはなかった。
げんに四女のダリアでさえ、すでにできているのだから。
けれどそんな魔法でさえ、ローズウッドはいまだに使えない。
こんな王女に誰がついていくだろうか。
こんなことをしても、気休めでしかないのはわかっている。
けれど、じっとしてはいられなかった。
「それはひとえに代々の女王による魔法の加護のおかげなのだ」
眠たそうな目をしたローズウッドは、そこまで読むと『ふああああ』と大きな欠伸をしたのだ。
聞けば、昨夜は遅くまでチューちゃんとお喋りをしていたという。
チューちゃんとは、はつかねずみの姿をしたローズウッドの使い魔である。
なんて呑気なこと。
わたくしは、いらついた。
ーバシッー
鞭でローズウッドの左手を鞭でうつ。
「あ、痛い!」
ローズウッドは小さな声をあげると、うたれて赤く腫れている左手の甲に視線をはしらせていた。
「女王様。私にはこの本を暗唱するなんて無理です」
ローズウッドは、そう言うと閉じた歴史書を執務机の上に乱暴におく。
それからローズウッドは、わたくしへの不満を色々と口にし最後にこうつけ加えたのだ。
「わかりました。
私も、もっと努力をします。
だから、女王様、いえお母様も私をお姉様たちと比べて、余計な心配をしないで下さい。
私は私だから」
と。
ローズウッドがわたくしのことを、そんな風に思っていたのはショックだった。
「比べて憂慮しているわけでは、ありませんよ。
いつかわたくしの気持ちが、あなたに伝わる日がくるのを待っています」
目をふせて、両手をぎゅっと握っているローズウッドを静かな声でさとす。
そして、その日。
わたくしが犯した罪がわかるのですね。
ローズウッドが生まれてすぐに、わたくしはあの子にある魔法をかけた。
それはローズウッドの額に、黒い髑髏の形をした痣を見つけたからです。
それを知ったあなたは、わたくしを許してくれるのでしょうか。
それとも......。
わたくしは心の中で呟いた。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる