ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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第二章

アモルとの出会い

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「はぁ、聖女って案外体力使うね」

わたしは隣を歩くボスに向かって呟いた。

聖女になったからには
頑張ろうとは思ったものの……。
毎朝、聖域を維持するための
魔力の奉納、会議、
厄災を祓うための祝福を授ける仕事があり
休む暇すらない。

疲れたよ、お菓子食べたい。

〈げっそりしているな……。
無理をしたらダメだぞ。クソ、あの教皇が
人質をとらなければヴァイオレットは
家族の元で暮らしていけたというのに……〉

「あはは、過ぎたことを言っても仕方ないよ。
わたしにはこの武器があるから大丈夫!!」

バンっとボスに見せたのは
お父様、お母様、双子の弟妹、
フロルちゃんからの手紙。

みんなわたしのことを心配してくれていた。
弟妹達からの『お姉さまに会いたい』という
言葉には思わず涙がこぼれそうになっちゃった。

「最近、お父様とお母様から手紙が来ないのが
心配だけど。カイルからも返信がないし……」

〈そういえばカイルからは
長いこと返事が来てないな〉

そうなんだよね。
腐れ縁とはいえ心配。

モヤモヤとしたものが胸に広がる。

それに……何か嫌な予感がする。
何か得体の知れないものが迫ってくるような。

「無事だといいけど……」

そう考えながら、教会の外に出ると
小さい何かがぶつかってきた。

「わっ!」

見ると金髪の三つ編みが特徴的な
小さな男の子が尻餅をついていた。
わたしってば!

「ご、ごめんね! 大丈夫??」

顔を上げた男の子の顔を見て息を呑む。

右目が漆黒、左目が紅水晶色のオッドアイ。
珍しい瞳だ。
白い柔肌にオッドアイが映えている。

男の子はわたしの顔を見つめたまま固まっている。

ん?

「お、おーい?」

男の子がハッとしたように立ち上がったので
わたしも手を貸す。

「ありがと、おねーさん。
僕も前をよく見てなかった。ごめんなさい」

まだあどけない声で謝る男の子。
可愛いと言いそうになってしまった。
5歳くらいだろうか。

「ふふふ。大丈夫だよ」
男の子に笑いかけると、彼もにっこりと
可愛らしい笑みを浮かべた。

ぎゃんかわ!!!

「おいっ!!」

振り返ると髭が生えた
男性がこっちに走ってきていた。

心なしか怒っているように見える。

「……え、わたし?」

「ちげーよ。そこの坊主だよ!
ウチの商品盗んだんだよっ!」

「えっ!?」

男の子はわたしの背中に隠れてしまう。

「ねぇ、君、ホントに盗んじゃったの?」

コクリと頷く男の子。
でも、こんなに小さい子が商品を盗むなんて……

「捕まえたぞっ!!」

声と共に男の子の首根っこが掴まれ宙に浮く。
男の子は怯えたような表情をしている。

「早く返せ!!」

「おじさん、何も乱暴にしなくても……」

「うるせぇ、こいつは盗人だぞ!
優しくなんてできるか! 
あと俺はおじさんじゃねぇ!これでも30だっ!」

「あ、はい。お兄さんですね……。

でも、こんなに小さい子が盗むなんて理由があるんじゃないですか?怒るのは理由を聞いてからでも
いいんじゃ?」

おじさんは……ゲフンゲフンお兄さんは
はぁっとため息をついた。

「わーったよ、
これじゃ大人が悪くなっちまうしな」

確かに道ゆく人の責めるような視線が
お兄さんに向いてるね。

「どうして、盗みなんかしたの?」

男の子の肩に手を置き目を合わせると、
彼は後ろ手に持っていた麻袋をわたしに見せた。

中身は……葉っぱ?
薬草かな?

「これで……お母さんの病気が
治るんじゃないかって思ったんだ……」

瞳を潤ませる男の子に胸が締め付けられる。

そっか、お母さんのためだったんだ。

癒しの魔法を使える人は少ない。
セレニテがいればどうにかなったんだろうけど
今はあいにくいないし……。

あっ、もしかしたら!

「そうだ!君、ウチの教会に来ない?
もしかしたら、お母さんの病気治せるかも!」

「えっ!ほんと!?」

男の子の瞳がキラキラと輝く。
それを見てわたしまで嬉しくなった。

「うん!でもね
盗みをするのはダメだよ。
ちゃんとお店の人に謝ろう?」

男の子はショボンとなって頷く。

「おじさん、ごめんなさい……」

お兄さんはめんどくさそうに薬草を受け取った。

「おう。もう二度とこんなことすんじゃねーぞ!
あと俺はお兄さんだっ!」

ガニ股で店に戻って行くお兄さんを見送り、
わたしは男の子に向き直った。

「わたしの名前はヴァイオレット・アゼリア。
君の名前はなんて言うの?」

「僕の名前は……アモル」

優しい笑顔を見せたアモルに
わたしは笑みを返した。
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