ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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第二章

アモルとの出会い②

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「ヴァイオレットおねーちゃん、これ、なーに?」

アモルが不思議そうに瓶の中身を見つめる。
中に入っているのは透明な液体……聖水だ。

神殿にある大きな聖杯には聖水が
永遠に湧き上がってくると教会に
来た時に説明を受けた。

そして、聖水を飲んだ者の怪我や病が治るとも。

だからその聖水を魔法で創り出した瓶に汲んだのだ。

勝手なことして、怒られるかもしれないけど
人の命には変えられない。
神様ごめんなさい!!

「これはね、聖水って言って
飲んだ人の病気や怪我を治してくれるんだよ」

にっこり笑うとアモルは嬉しそうに顔を綻ばせた。

「わぁ!! じゃあこれで
僕のお母さんの病気は治るの!?」

頷くとアモルはわたしに抱きついてきた。

「ありがとうっ おねーちゃん」

可愛いぃぃー!!
天使じゃんっ!

その時ギィィッと扉が開く音と共に光が差し込んだ。

「ヴァイオレット、そこで何をしているのだ」

アンガス教皇がわたし達を鋭く睨んでいる。

「あ、アンガス教皇……」

こんなすぐにバレるとは思ってなかった……。

アンガス教皇の視線がアモルの持つ瓶へと
注がれた。

「まさか、そいつ、聖杯の水を……??
よくやった、ヴァイオレット。
盗人を捕らえたのだな」

「えっ……」

「ち、違いますっ!!
わたしが、アモルを連れ込んだんです!
アモルのお母さんが病気だって聞いて……」

不安そうなアモルに思わず声を上げると
アンガス教皇の表情がこわばる。

「お前が自ら招き入れたと?
……一体何を考えているのだ!!
神殿には聖職者以外立ち入り禁止だと
説明したはずだろう!!」

「勝手に中へ入れたことは謝ります。
でもこの子の助けになればと思って……」

「貧民に同情など要らん。
そいつの母親が病気だとしても関係ない。
聖遺物が穢れたらどうしてくれる!!
さあ、今すぐ中身を返し、神殿から追い出せ!」

なんて酷いことを……!
聖遺物を渡すなんて、いけないことだって
わかってる。……だけど。

「嫌です」

「なんだと?」

「嫌ですって言ったんです!
聖女になったからには人のためになることをします。
アンガス教皇はアモルが
可哀想だと思わないんですか??
そんな言い方あんまりですよ!」

「この私に口答えをするとは……」

「お願いです!
この聖水は決して枯れることはないんでしょう?
聖水をみんなに分け与えればアモルみたいな子は
減ります。だから」

「黙れっっ!!!」

突然の大声にビクッとなる。

「アンガス教皇……?」

「……世界の理を覆すことなどできん」
それだけを言い残し、アンガス教皇は扉を閉めた。
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