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第二章
アンガスの過去
しおりを挟む▶︎アンガス◀︎
初めてヴァイオレットを見た時
その瞳が気に入らなかった。
自分はなんでもできると思っていそうな
真っ直ぐな瞳。何も知らない赤子のような
純粋さを秘めていた。
その瞳は、昔の私を彷彿とさせる。
死の運命に殺された私の妻。
何とかできると思っていながら私には
何もできなかった。
ルアーナは元々私と同じ聖職者であった。
神官同士、いつの間にか恋に落ち、
いつの間にか結婚をした。
そんなある日突然ルアーナは死んだ。
ルアーナはある時から怯えたように
ビクビクとする様子を見せるようになった。
「何があったんだ?様子がおかしいぞ」
「教皇様が……いいえ、何でもありません……」
「本当にどうしたんだ?
誰にも言わないから話してみなさい」
そう言ってもルアーナは真っ青な顔を横に振るだけ。
だから、わたしは独自に調査することにしたのだ。
先代の教皇は怪しい男だった。
悪事を犯すようなことはなく、誰に対しても
優しいが、その優しさに
狂気が含まれている気がした。
……現在の王太子殿下にも顔立ちが似ていたのが
気にかかるが、教皇は確か30歳前後だったので
さすがに同一人物ではないだろう。
教皇を尾行すると話し合いをする『水鏡の間』に
入っていった。
私はドアに耳を当てて聞き耳を立てる。
「死の運命を持つ人間の未来は変えられない
ことは君でも知っていることだろう?」
死の運命?
「ですが……教皇様、ルアーナは
とてもいい仕事をする娘です……
最近結婚したばかりですし……
何とかならないのですか?」
「しつこいなぁ
これは僕と彼女が定めた理だ。
それとも、君も死にたいの?」
「ヒッ……。お、お許しください
リュミエール様……!!」
どういうことだ。
ルアーナが死の運命を持つ……?
しかもリュミエール様って言ったか?
リュミエール様って創造神様だろう?
扉が開き、レイル教皇がニコリと笑っていた。
「やあ、アンガス。
君、さっきの話を聞いてたね?」
「……教皇様、妻が……ルアーナが死ぬって一体……」
弁解も忘れてただただレイル教皇を見つめる。
「ごめんね……
神様からのお告げなんだ。
これは絶対に覆すことができない。
でも心の準備をする時間は必要だと思うから
ルアーナには話しておいたよ。
君も、後悔のないようにルアーナとの
最後の休日を楽しんで」
「お告げって……」
リュミエール様からのお告げ?
そんな馬鹿なこと認めないぞ。
ルアーナを死なせたりなんかしない!
涙をゴシゴシと乱暴に擦り
キッと正面を見つめた。
だが、結局、ルアーナは旅立ってしまった。
ルアーナを好いていた1人の男によって。
殺してでもルアーナを手に入れたかった。
とふざけたことをのたまう。
未来を変えることなどできないのだと
その時悟った。
だから、私を真っ直ぐに見つめる
ヴァイオレットが嫌いだ。
努力すれば世界を未来を変えられると
訴える、その目が気に入らない。
どうせ、どう足掻いたって
運命は変えられない。
アモルという子供の母親は助からない。
どうにでもできない。
だが、ルアーナの未来を奪ったあの男に
死の運命を与えることはできるはずだ。
だからわたしは
ヴァイオレットを殺して闇の力を手に入れる。
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