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魔獣とヴァイオレット
しおりを挟むポタリと頬が濡れたのに気づき目覚めると、青い空と木々が目に入った。
あれ?クマに襲われたはずなのに
どこも怪我してない。
それに、知らない場所だし。
辺りを見回すとクマがヨダレを垂らしてわたしを見下ろしていた。周りはクマだらけだった。
〈目覚めたか〉
「きゃあーーーーーーーっ!!!!!」
わたしは恐怖から大声を上げた。
「食べられる!!!誰か助けて!!」
〈待て、少女よ〉
「いやぁぁぁっ!!」
頭の中に声が響き思わず声を上げる。
……あれ?襲ってこない??
わたしはクマを見た。
よく見るとほかのクマよりひときわ大きくて目に傷がある。ボスなのかな?
〈その魔力実にうまそうだな〉
なにコレ、頭の中に声が響いてくるんだけど!
しかも無駄にイケメンボイスゥゥ
「ま、ま、魔力ってまさかわたしを食べようとしてるんですか?!」
すると、ボスクマの耳がピクリと動いた。
〈お前、私の声が聞こえるのか?〉
「え?聞こえますけど……」
〈まさか、女神の生まれ変わりか〉
〈そんなはずはない。女神様は……〉
周りのクマたちから戸惑いの声が聞こえる。
一体なんなの?
それにこの光景、異常。
クマたちに囲まれているなんて。
クマは群れで行動なんてしないはず。
「あなたたち、何なの?クマは普通群れで行動したりしないわよね。」
〈お前、魔獣を知らないのか〉
ボスクマが言った。
「魔獣?」
ルイス先生に教えてもらったことは
魔法と世界のことだけだったし……。
もしかして、このクマは魔獣という存在なの?
〈魔獣とは文字通り魔力を持つ獣のことだ。安心しろ。人間を襲ったりしない。ただ魔力を食べるだけだ。〉
へぇーなるほどねー!
〈ところで、なぜお前はわたしの声が聞こえる〉
「なぜと言われても……。最初から聞こえていたし分からないよ」
〈わたしの声が聞こえるのは、リュミエール様とオプスキュリテ様だけだ。なぜお前が使えるのか謎だが……まぁいいだろう。少女よ、名はなんと言う〉
リュミエール様とオプスキュリテ様って確か
創造神だよね?
わたしとは何の関係もないと思うけどな。
そんなことを考えながらわたしは
「わたしの名前はヴァイオレットだよ」と
にっこり笑った。
〈ヴァイオレットよ、
わたしに名前を付けてくれないか〉
「名前?」
〈あぁ、魔獣は名前をつけてもらえることで自由になれるのだ。〉
ボスクマさん、今まで自由じゃなかったんだ……。
「いいよ!わたしが名前をつけてあげる。」
〈長、ずるいですぞ!我にも名を!!〉
〈そうですわ!私にも名前をつけて!!〉
「いいよー!」
承諾するとクマたちがわぁっと歓声をあげる。
〈だ、ダメだ!契約者は一体と定められているのだ!ヴァイオレットよ、早く名を〉
契約者?
名前をつける人みたいな感じかな?
でも一体だけなんて可哀想。
「絶対ダメなの?」
〈ダメだ〉
わたしはため息をついた。
「ごめんね、みんな。出会った人に名前をつけてもらって!良かったらフロルちゃんとか紹介するけど。」
〈……他の者には魔獣の声は聞こえないと思うが。〉
「ん?なんか言った?ボス」
〈いや、何もない。ボス?なんだ、それは〉
「あなたの名前だよ」
にっこり笑うとボスは嫌そうな顔をした。
〈ボス……もっと可愛らしい名前が良かったのだがな。〉
「いいじゃん、あなたにピッタリじゃない」
そう言って笑うと周りのクマたちも賛同した。
〈ボス……良い響きです!〉
〈いい名前ではありませんか!〉
〈あなたにピッタリのお名前です!〉
ボスは満更でもなさそうな表情になり
〈そうか……〉と呟いた。
チョロい……。
「今日からあなたはボス!これで自由よ」
すると、金色の光がボスの首にまとわりつき
金の鎖となった。
そして眩い光の中から
「!??」
ぬいぐるみサイズの子グマが現れた。
可愛い~!!じゃなくて!!
なんで!???
「ボス!?なんでそんな姿になってるの?!」
これではボスじゃなくてチビだ。
〈魔獣は名前をつけられることで小さくなることがあるのだ。わたしのような体の大きい魔獣は、人々に恐がられるからな。〉
「そうなんだ。」
これで、ボスともお別れか。
なんだか寂しいな。
「ボス、元気でね」
〈何を言っているのだ?これから一緒に
過ごすのだぞ〉
「え?」
どういうこと?
〈魔獣は契約者……名前をつけてもらった人と共に過ごすのだ。〉
「そうなの!?どうしよう。ウチにクマを連れてくるなんて言ってないしお父様許してくれるかな?」
捨て猫を拾ったみたいな状態だよね。
〈魔獣を家に置いておいて損は無いぞ。溢れ出た魔力を吸収することが出来る。〉
ボスが自分をセールスし始めた。
そんなこともできるんだね。
悩んでても仕方ない!
わたし、クマを飼います!!
「分かった、一緒に暮らそう!」
にっこり笑いかけ、ボスを抱き上げる。
〈よろしくな、ヴァイオレット〉
「こちらこそよろしくね」
わたしは笑みを浮かべ、これからの日々に
胸を躍らせたのだった。
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