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素晴らしき宝石魔術
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昔からそうだった。
妹は自分が可愛くて仕方がなかった。
わたしが注目されていれば、それを邪魔しようと自作自演の悲劇のヒロインを演じていた。わたしはそれを知っていた。
それを両親に伝えても、妹を信じられないのかと冷たく突き放されるだけ。
だから、わたしは何も言わなくなった。
ただ、耐えて……耐える毎日。
そんなにも、わたしが憎いの。全てを奪わないと気が済まないの。
いい加減うんざりしてきて……わたしは頭痛がした。もうあの家とは関係を断ち切りたい。あの家にいたら、わたしは不幸になる。
「落ち着いて、ファウスティナ」
ふと、エゼル様がわたしの手を握ってくれた。優しくて繊細なぬくもり。ひとつひとつの動作に気持ちが伝わってくる。
わたしの不安が取り除かれていく。
……あぁ、そっか。
エゼル様がお傍にいれば、わたしはこんなにも安心できるんだ。
「ありがとうございます」
「僕がエレインに厳重注意……いや、最後の警告をしてくる。これ以上のファウスティナの接近は公爵の名において厳罰に処するとね」
「……エゼル様」
その言葉を耳にして、わたしは嬉しくて泣きそうになった。
彼はわたしを真っ直ぐ見据え、味方をしてくれる。それに、これほど優しくしてもらったのは初めて。
だから、信じられた。
階段を降りて店の玄関へ。
エゼル様がカギを開けた途端、乱暴に入ってくるエレインの姿があった。エレインは、わたしを睨み、殺気さえ向ける。
「お姉様……正直申し上げますわ。貴女は帝国にいる資格がありません。だって、婚約だって破棄したし、我が家を飛び出しましたからね。
何もないモノは、浮浪者と何も変わらない。平民……いえ、犬以下の存在です。そんな存在がエル・ドラードをうろついていては、エゼル様の品位も疑われてしまいますわ」
「……っ」
それはそうかもしれない。でも……そんな言い方は酷い。わたしのことはともかく、エゼル様のことを悪く言わないで欲しい。
許せなくなって、わたしは一発頬を叩いてやろうと思った。けれど。
「ファウスティナ、君の手を汚す必要はない」
「……エゼル様」
彼は堂々とエレインの前に立ち、爽やかな笑みを送った。そして、こう言った。
「エレイン、これは警告だ。それ以上、お店に近づくと君は痛い目を見る」
「……エゼル様! なぜ、なぜお姉様ばかりを贔屓するのです! その女は黄金を生み出す不気味な魔女ですよ。聖女なんて尊い存在なんかではない……。黄金だって本物かどうか分からない。ファウスティナは怪物です。絶対に関わらない方がいいですよ。不幸になりますから」
必死に訴えかけるエレインだけれど、エゼル様は怒りさえ滲ませた口調でキッパリ言い放った。
「もういい、君の声は聞きたくない」
踵を返すエゼル様は、わたしの手を引いてくれる。それを見たエレインは激昂して、怒り狂った。
「ふ、ふざけないで!!
お姉様……もう許さない。あんたなんか刺し殺してやるッ!!」
包丁を取り出すエレインは、刃を向けてこちらに――え、ウソ。
恐ろしい形相でわたしの方へ向かってきて刺そうとする。けれど、ある場所でエレインの足が止まった。
直後、エレインの足元から稲妻が走った。バリバリと音を立てる雷。それは彼女の体中を巡っていく。
ぷすぷすと煙を上げ、エレインは倒れた。
「言ったろう、エレイン。それ以上、近づくなとな。いいかい、今後しつこくつきまとうようなら、監獄送りも辞さない。肝に銘じておいてくれ」
お店に戻り、扉が閉まる。
エレインはあの電撃で気絶していた。……そっか、これでもう彼女が近づくことはできないというわけね。
エゼル様の宝石魔術は素晴らしい。
妹は自分が可愛くて仕方がなかった。
わたしが注目されていれば、それを邪魔しようと自作自演の悲劇のヒロインを演じていた。わたしはそれを知っていた。
それを両親に伝えても、妹を信じられないのかと冷たく突き放されるだけ。
だから、わたしは何も言わなくなった。
ただ、耐えて……耐える毎日。
そんなにも、わたしが憎いの。全てを奪わないと気が済まないの。
いい加減うんざりしてきて……わたしは頭痛がした。もうあの家とは関係を断ち切りたい。あの家にいたら、わたしは不幸になる。
「落ち着いて、ファウスティナ」
ふと、エゼル様がわたしの手を握ってくれた。優しくて繊細なぬくもり。ひとつひとつの動作に気持ちが伝わってくる。
わたしの不安が取り除かれていく。
……あぁ、そっか。
エゼル様がお傍にいれば、わたしはこんなにも安心できるんだ。
「ありがとうございます」
「僕がエレインに厳重注意……いや、最後の警告をしてくる。これ以上のファウスティナの接近は公爵の名において厳罰に処するとね」
「……エゼル様」
その言葉を耳にして、わたしは嬉しくて泣きそうになった。
彼はわたしを真っ直ぐ見据え、味方をしてくれる。それに、これほど優しくしてもらったのは初めて。
だから、信じられた。
階段を降りて店の玄関へ。
エゼル様がカギを開けた途端、乱暴に入ってくるエレインの姿があった。エレインは、わたしを睨み、殺気さえ向ける。
「お姉様……正直申し上げますわ。貴女は帝国にいる資格がありません。だって、婚約だって破棄したし、我が家を飛び出しましたからね。
何もないモノは、浮浪者と何も変わらない。平民……いえ、犬以下の存在です。そんな存在がエル・ドラードをうろついていては、エゼル様の品位も疑われてしまいますわ」
「……っ」
それはそうかもしれない。でも……そんな言い方は酷い。わたしのことはともかく、エゼル様のことを悪く言わないで欲しい。
許せなくなって、わたしは一発頬を叩いてやろうと思った。けれど。
「ファウスティナ、君の手を汚す必要はない」
「……エゼル様」
彼は堂々とエレインの前に立ち、爽やかな笑みを送った。そして、こう言った。
「エレイン、これは警告だ。それ以上、お店に近づくと君は痛い目を見る」
「……エゼル様! なぜ、なぜお姉様ばかりを贔屓するのです! その女は黄金を生み出す不気味な魔女ですよ。聖女なんて尊い存在なんかではない……。黄金だって本物かどうか分からない。ファウスティナは怪物です。絶対に関わらない方がいいですよ。不幸になりますから」
必死に訴えかけるエレインだけれど、エゼル様は怒りさえ滲ませた口調でキッパリ言い放った。
「もういい、君の声は聞きたくない」
踵を返すエゼル様は、わたしの手を引いてくれる。それを見たエレインは激昂して、怒り狂った。
「ふ、ふざけないで!!
お姉様……もう許さない。あんたなんか刺し殺してやるッ!!」
包丁を取り出すエレインは、刃を向けてこちらに――え、ウソ。
恐ろしい形相でわたしの方へ向かってきて刺そうとする。けれど、ある場所でエレインの足が止まった。
直後、エレインの足元から稲妻が走った。バリバリと音を立てる雷。それは彼女の体中を巡っていく。
ぷすぷすと煙を上げ、エレインは倒れた。
「言ったろう、エレイン。それ以上、近づくなとな。いいかい、今後しつこくつきまとうようなら、監獄送りも辞さない。肝に銘じておいてくれ」
お店に戻り、扉が閉まる。
エレインはあの電撃で気絶していた。……そっか、これでもう彼女が近づくことはできないというわけね。
エゼル様の宝石魔術は素晴らしい。
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