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天音さんの女子力高めの持ち物
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ゆったりとした食事が進み、俺は蛇を完食。天音たちは魚を美味しく召し上がっていた。
腹も膨れてマッタリしていると、天音が例のスクールバッグを吟味していた。
「あ~、あったこれこれ」
「そういえば……天音のジャージがあったってことはスクールバッグも?」
「そそ。まさか、わたしのバッグが流れてくるとは思わなかったよ」
中身はガムや飴などのお菓子、水筒、裁縫セット、漫画と小説、ヘアゴム、香水、ハンドクリーム、リップクリーム、日焼け止め、ハンカチ、ポケットティッシュ、ウェットティッシュ、折りたたみ傘、筆記用具……と、まだあるようだ。
「ん、それはなんだ?」
「こ……これは生理用品……」
顔を真っ赤にして黙ってしまう天音さん。……いかん、女子のデリケートな話題だった。とても気まずいッッ。
「あー、悪い。それで最後か?」
「あと……下着も」
「…………な、なるほど」
にしても、凄いアイテムの数々だな。女子力高いモノが多いな。さすがアイドル。
けど、よく無事で残っていたものだ。あの夜の荒波に流されて、奇跡的にこの島に辿り着いたわけだな。
「それだけあれば困らないな」
「うん、手とか荒れそうになっていたからクリーム類は助かったわぁ」
「水筒は使えるぞ。お湯を保温しておけるし」
「中身の麦茶もまだ入っているから、飲めるよ」
「おぉ、久しぶりにまともなお茶が飲めるのか。そりゃいいな」
「あとで皆に分けてあげるね」
俺的には漫画とか小説が気になる。天音ってどんなジャンルが好きなんだろう。
「なあ、天音。その漫画は?」
「これは『君に届け』だよ~」
確か、かなり有名な少女漫画だったはず。なんとなく知っているが……まさか、天音がそういう恋愛漫画を読んでいるとはな。
「それ、まあまあ古いよな」
「まあね。けど王道で面白いよ、早坂くんも読んでみる?」
「その前に、小説の方も教えてくれよ」
「あ、これ? 小説は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だよ」
有名なSF小説じゃないか。
恋愛漫画から一変して、SFか。
どちらも未読。借りて読んでみるかね。
「ふぅん、天音はSFも読むんだな」
「SFってなんか独自の世界観がいいじゃん。時間を忘れて読んじゃうよ」
「あとで貸してくれよ」
「了解だよ」
天音の持ち物は把握できた。
他のバッグもまだ未知のアイテムがあるらしいが――明日にしよう。
* * *
夜は更けていく。
気づけば深夜零時前。
モバイルバッテリーのおかげでスマホの充電も『73%』と回復。
フル充電するのも天音や、これから合流する大伊たちに悪いのでここまでとした。
……明日に備えて寝よう。
『――トントン』
誰かに腕を突かれた。
誰だよ、俺はもう寝るんだ。
『――トントン』
仕方ないな……。
体を起こすと、そこには頬を赤くするリコがいた。
「どうした、リコ」
「ちょっと一緒に付き合って貰えないかな」
モジモジとしているところを見ると――あぁ、トイレみたいだな。
「って、俺が!? 天音とかにしてくれよ。俺はその……男だし」
「そ、それがね、みんな寝ちゃったから」
よく見ると俺とリコ以外は全員寝ていた。
天音の作ってくれた“丸太ベッド”のおかげで快眠できるようになったからな。
「ん~、仕方ないな。リコを一人で行かせるわけにもいかないしな」
「ありがとう、早坂くん」
涙目で頭を何度も下げるリコ。だが……俺で良いのだろうか。
いや、これは仕方ない。
リコを守ると思って付き合おう。
スマホのライトをつけ、洞窟を出た。
夏といえど、夜になれば寒気がする。風はやや冷たく、油断をすれば風邪を引きそうだ。
洞窟から結構離れて、茂みまで来た。
「その先なら安全だ。北上さんが落とし穴とか落石のトラップを仕掛けてくれているから、動物が接近してきても大丈夫だ」
「おぉ、いつの間にそんなものを!」
俺もビックリしたけどな。
こういう緊急時を想定して作ったのだとか。
「じゃ、俺はあっち向いているから」
「……耳も塞いでおいてね。恥ずかしいからっ」
「お、おう」
言われた通り、俺は両手で両耳を塞ぐ。
こうすれば自然の音さえも消える。
静かだ……。
あぁ、最近の疲れのせいか眠いぞ。疲労困憊かもしれない。たまには休息を取った方がいいかも。
人間、たまには休まないとな。
そうだ、明日は半日くらいはダラダラしてもいいかもな。
などと考えていると、茂みの奥からガサガサと音がした。……ん、もう用が済んだのかな。
「早坂くん、スマホで撮ったりしないでね!」
「そんなことするかって! 俺のことは透明人間だと思ってくれ」
「うぅ……分かった」
再び茂みの奥へ消えるリコ。
だけど、また直ぐに戻ってきた。早いな。
「……で、出ない」
「へ?」
「早坂くんが近くにいると思うと……意識しちゃって出ないのっ」
「俺のせいかよ。じゃあ、離れてようか?」
「そ、それは怖いから嫌。近くにいて」
どうしろっていうんだ!?
う~ん、これは難しい問題だな。
「なにか話をしながらにするか」
「そ、それ! 早坂くん、面白い話をして」
「分かった。う~ん……」
また茂みに消えていくリコ。俺はリコに聞こえるように面白い話を始めていくのだが……面白い話ねぇ。なにかあったかな。
今までぼっち人生だった俺には、武勇伝すらない。だけど、なにか語れるはずだ。
「そうだなぁ、俺には彼女もいなかったし……友達もいなかった」
『ちょ、それは反応に困る話題! 他のにして』
「一か月前、隣の席の女子が消しゴムを落としたんだ。それを拾ってあげたら微笑んでもらったことがある。あれって絶対、俺のこと好きだよな」
「チョロ! どんだけチョロいの、早坂くん! 相手は絶対そんなこと思っていないからね! 絶対!」
そうなのか……。
ちなみに、天音なんだけどね。
思えば、隣の席は……天音だったんだな。可愛い子がいるとは思ったんだ。でも俺は、どうしようもないほど陰の者。
話しかけるなんて勇気なかったし、名前を知ろうとも思わなかった。
それが今では――。
「リコこそ、そういう一目惚れとか経験ないのか?」
「う~ん……リコはないかなぁ。舞桜ちゃんとほっきーとワイワイする日々だったし、恋愛とかしている暇なかった」
「そういえば、三人とも仲良いよな」
「幼馴染だからね~」
「そうなのか。でも、リコは将棋部だっけ。なんで弓道部に入らなかった?」
「……それ聞く~?」
これは聞かない方がいい話題かな。
「無理に言わなくていいよ。人間、秘密のひとつやふたつあるものだし」
「いいよ、早坂くんになら教えてあげる」
「マジか」
「園芸部の艾ちゃん。もともと将棋部だったの」
「ああ、例の友達か」
「そ。艾ちゃんに誘われて将棋部へ体験入部したんだ。けど……ケンカしちゃった」
「なんでケンカ?」
「――あぁ、それはね、リコが強すぎちゃってさ。部長だった艾ちゃんをフルボッコしたの。そしたら、怒っちゃって……で、いつの間にかリコが部長してた。
だから辞められなくなっちゃって」
そんな経緯があったとはな。
それで艾ちゃんは園芸部に転入したわけだ。
それで弓道部ではなかったのか。
納得しているとリコが茂みから現れた。
「今度は済んだかい?」
「うん、すっきりした。ありがとね」
「いいさ、大切な仲間を守るのは俺の務めみたいなものだからね」
「頼りになるなぁ。うん、彼女になってあげるよ」
「え? リコ?」
「な、なんでもないっ。なんでもないからね」
さりげなく、凄いことを言われたような。
腹も膨れてマッタリしていると、天音が例のスクールバッグを吟味していた。
「あ~、あったこれこれ」
「そういえば……天音のジャージがあったってことはスクールバッグも?」
「そそ。まさか、わたしのバッグが流れてくるとは思わなかったよ」
中身はガムや飴などのお菓子、水筒、裁縫セット、漫画と小説、ヘアゴム、香水、ハンドクリーム、リップクリーム、日焼け止め、ハンカチ、ポケットティッシュ、ウェットティッシュ、折りたたみ傘、筆記用具……と、まだあるようだ。
「ん、それはなんだ?」
「こ……これは生理用品……」
顔を真っ赤にして黙ってしまう天音さん。……いかん、女子のデリケートな話題だった。とても気まずいッッ。
「あー、悪い。それで最後か?」
「あと……下着も」
「…………な、なるほど」
にしても、凄いアイテムの数々だな。女子力高いモノが多いな。さすがアイドル。
けど、よく無事で残っていたものだ。あの夜の荒波に流されて、奇跡的にこの島に辿り着いたわけだな。
「それだけあれば困らないな」
「うん、手とか荒れそうになっていたからクリーム類は助かったわぁ」
「水筒は使えるぞ。お湯を保温しておけるし」
「中身の麦茶もまだ入っているから、飲めるよ」
「おぉ、久しぶりにまともなお茶が飲めるのか。そりゃいいな」
「あとで皆に分けてあげるね」
俺的には漫画とか小説が気になる。天音ってどんなジャンルが好きなんだろう。
「なあ、天音。その漫画は?」
「これは『君に届け』だよ~」
確か、かなり有名な少女漫画だったはず。なんとなく知っているが……まさか、天音がそういう恋愛漫画を読んでいるとはな。
「それ、まあまあ古いよな」
「まあね。けど王道で面白いよ、早坂くんも読んでみる?」
「その前に、小説の方も教えてくれよ」
「あ、これ? 小説は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だよ」
有名なSF小説じゃないか。
恋愛漫画から一変して、SFか。
どちらも未読。借りて読んでみるかね。
「ふぅん、天音はSFも読むんだな」
「SFってなんか独自の世界観がいいじゃん。時間を忘れて読んじゃうよ」
「あとで貸してくれよ」
「了解だよ」
天音の持ち物は把握できた。
他のバッグもまだ未知のアイテムがあるらしいが――明日にしよう。
* * *
夜は更けていく。
気づけば深夜零時前。
モバイルバッテリーのおかげでスマホの充電も『73%』と回復。
フル充電するのも天音や、これから合流する大伊たちに悪いのでここまでとした。
……明日に備えて寝よう。
『――トントン』
誰かに腕を突かれた。
誰だよ、俺はもう寝るんだ。
『――トントン』
仕方ないな……。
体を起こすと、そこには頬を赤くするリコがいた。
「どうした、リコ」
「ちょっと一緒に付き合って貰えないかな」
モジモジとしているところを見ると――あぁ、トイレみたいだな。
「って、俺が!? 天音とかにしてくれよ。俺はその……男だし」
「そ、それがね、みんな寝ちゃったから」
よく見ると俺とリコ以外は全員寝ていた。
天音の作ってくれた“丸太ベッド”のおかげで快眠できるようになったからな。
「ん~、仕方ないな。リコを一人で行かせるわけにもいかないしな」
「ありがとう、早坂くん」
涙目で頭を何度も下げるリコ。だが……俺で良いのだろうか。
いや、これは仕方ない。
リコを守ると思って付き合おう。
スマホのライトをつけ、洞窟を出た。
夏といえど、夜になれば寒気がする。風はやや冷たく、油断をすれば風邪を引きそうだ。
洞窟から結構離れて、茂みまで来た。
「その先なら安全だ。北上さんが落とし穴とか落石のトラップを仕掛けてくれているから、動物が接近してきても大丈夫だ」
「おぉ、いつの間にそんなものを!」
俺もビックリしたけどな。
こういう緊急時を想定して作ったのだとか。
「じゃ、俺はあっち向いているから」
「……耳も塞いでおいてね。恥ずかしいからっ」
「お、おう」
言われた通り、俺は両手で両耳を塞ぐ。
こうすれば自然の音さえも消える。
静かだ……。
あぁ、最近の疲れのせいか眠いぞ。疲労困憊かもしれない。たまには休息を取った方がいいかも。
人間、たまには休まないとな。
そうだ、明日は半日くらいはダラダラしてもいいかもな。
などと考えていると、茂みの奥からガサガサと音がした。……ん、もう用が済んだのかな。
「早坂くん、スマホで撮ったりしないでね!」
「そんなことするかって! 俺のことは透明人間だと思ってくれ」
「うぅ……分かった」
再び茂みの奥へ消えるリコ。
だけど、また直ぐに戻ってきた。早いな。
「……で、出ない」
「へ?」
「早坂くんが近くにいると思うと……意識しちゃって出ないのっ」
「俺のせいかよ。じゃあ、離れてようか?」
「そ、それは怖いから嫌。近くにいて」
どうしろっていうんだ!?
う~ん、これは難しい問題だな。
「なにか話をしながらにするか」
「そ、それ! 早坂くん、面白い話をして」
「分かった。う~ん……」
また茂みに消えていくリコ。俺はリコに聞こえるように面白い話を始めていくのだが……面白い話ねぇ。なにかあったかな。
今までぼっち人生だった俺には、武勇伝すらない。だけど、なにか語れるはずだ。
「そうだなぁ、俺には彼女もいなかったし……友達もいなかった」
『ちょ、それは反応に困る話題! 他のにして』
「一か月前、隣の席の女子が消しゴムを落としたんだ。それを拾ってあげたら微笑んでもらったことがある。あれって絶対、俺のこと好きだよな」
「チョロ! どんだけチョロいの、早坂くん! 相手は絶対そんなこと思っていないからね! 絶対!」
そうなのか……。
ちなみに、天音なんだけどね。
思えば、隣の席は……天音だったんだな。可愛い子がいるとは思ったんだ。でも俺は、どうしようもないほど陰の者。
話しかけるなんて勇気なかったし、名前を知ろうとも思わなかった。
それが今では――。
「リコこそ、そういう一目惚れとか経験ないのか?」
「う~ん……リコはないかなぁ。舞桜ちゃんとほっきーとワイワイする日々だったし、恋愛とかしている暇なかった」
「そういえば、三人とも仲良いよな」
「幼馴染だからね~」
「そうなのか。でも、リコは将棋部だっけ。なんで弓道部に入らなかった?」
「……それ聞く~?」
これは聞かない方がいい話題かな。
「無理に言わなくていいよ。人間、秘密のひとつやふたつあるものだし」
「いいよ、早坂くんになら教えてあげる」
「マジか」
「園芸部の艾ちゃん。もともと将棋部だったの」
「ああ、例の友達か」
「そ。艾ちゃんに誘われて将棋部へ体験入部したんだ。けど……ケンカしちゃった」
「なんでケンカ?」
「――あぁ、それはね、リコが強すぎちゃってさ。部長だった艾ちゃんをフルボッコしたの。そしたら、怒っちゃって……で、いつの間にかリコが部長してた。
だから辞められなくなっちゃって」
そんな経緯があったとはな。
それで艾ちゃんは園芸部に転入したわけだ。
それで弓道部ではなかったのか。
納得しているとリコが茂みから現れた。
「今度は済んだかい?」
「うん、すっきりした。ありがとね」
「いいさ、大切な仲間を守るのは俺の務めみたいなものだからね」
「頼りになるなぁ。うん、彼女になってあげるよ」
「え? リコ?」
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