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秘密の場所にて
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沖縄県島尻郡久米島町――オーハ島。
2015年を最後に無人島となっている。現在も住んでいる人はいないらしい。
あれから船で沖縄へ。
天音が事前に用意してくれた船でオーハ島へ辿り着いた。あの鹿児島港以来、謎の男達に狙われることはなかった。
「こ、ここがオーハ島……とても綺麗な場所」
透明度抜群の澄み切った海を見渡す天音。
やはり、この辺りまで来ると海が恐ろしく綺麗だな。
ただ、危険な生物もいる。
「天音、ハブに気を付けろ」
「ハブ? あのヘビの?」
「そうだ。毒をもっている」
「茂みには近寄らないようにしておくんだ。と、言っても海にもウミヘビがいるし、どこへ行っても危険だけどな」
「うそ~…」
知らなかったらしい、天音は顔を青くした。というか、北上さん以外の女子も真っ青だった。今更、来たことを後悔している表情だ。
荷物を持ち、少し歩くと民家が見えてきた。
北上さんが指さし、こう言った。
「あそこが我々の拠点となる場所ですね」
ああ、あれか。
シーサーの乗った琉球瓦の民家。
いかにも沖縄風な家だ。
一応、電柱もあるから電気も通っているようだな。
へえ、最近まで誰か住んでいたのかな。
「えっ、あの平屋が? 誰か住んでいるんじゃないの」
リコが怪訝な顔をしながらも建物を吟味する。
「ええ、あれですよ、リコ。元々は“織田”という人の所有物でした」
「織田? 誰よ」
「さあ……中へ入れば分かるかと」
織田って、どこかで聞いた苗字だな。
いや、まさかな。
民家の玄関に向かい、俺は扉を開けようとしたのだが――勝手に開いた。
驚いて引くと、中から見覚えのある双子が現れた。
「月、星!?」
マジかよ。驚いた。
最近姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのか。
すでにこのオーハ島にいたとはな。
思考が追い付かず、立ち尽くしていると月が「おひさしぶりです、兄様」と、続いて星が「……お待ちしておりました」と静かに歓迎してくれた。
「お、おう。中へ入っても?」
「どうぞ。部屋はクーラーで冷やしてありますので快適です」
「やっぱり、電気が通っているんだ」
「もちろんです。ただし、自家発電ですけどね」
そういうことね。
どおりでソーラーパネルが設置されているわけだ。おまけに風力発電も。あらゆる手段を講じているようだな。
家の中へ入ってリビングへ。
さすがにこの人数だと、ちょっと狭いかな。
「普通の部屋ですね。なんだか無人島には思えません」
俺の背後で千年世がつぶやいた。
「そうだな。至って普通の一般家庭の内装だ。けど、これなら快適だわな」
座椅子に座り、さっそく北上さんが月に聞いた。
「滞りなくですか?」
「はい。姐さんの指示通りに」
北上さんを姐さんって……おいおい。
どうやら、北上さんは予め双子に指示を出していたようだな。この無人島というか、もはや有人島を整備するように。
「ねえ、どういうことなの?」
桃枝が真相を求めた。
俺も同じ気持ちだ。
「ええ、実は啓くんがこのオーハ島に目星をつけていたので、それで」
おいおい、あの時は俺が心の中で思っただけなんだがな。まあ、北上さんに言い当てられてしまったけどね。そうか、あの時点でこの移住計画は決まっていたんだな。
交通手段に天音、潜伏先のオーハ島には織田姉妹の力を借りて。
「でも、なんでこの家を織田姉妹が?」
「良い質問です、兄様」
月が柔らかい表情で微笑む。
それから星が答えた。
「織田家は、代々この無人島を受け継いできました」
「そうだったのか。ということは所有者なのか」
「その通りです。だから、この島なら海外の組織から狙われる心配はありません」
とんでもない事実が判明した。
まさか、オーハ島が織田姉妹の管理下にあったとはな。
それなら気軽に使えるわけだ。
「おーけー。となれば、財宝もじっくり現金化できるわけだ」
「はい。現在は海外オークションを通じておりますが、全てが上手くいくわけではありません。中にはブラックマーケットやダークネットを通じた闇売買にて対応しなくてはならなくて、なかなかリスクも高くなっています」
あの財宝の数々だ。
そう簡単に現金にできるわけがないな。
納得していると天音がぽつりとつぶやいた。
「まさか、そのせいでロシア人に勘付かれたんじゃ」
「それはありません。桃瀬さんにはVPNによる暗号化通信で取引を行ってもらっていますので」
詳しいな、月のヤツ。
なるほど、そこまでセキュリティ面に気を遣っているなら情報漏洩することは、ほぼないはずだ。100%とは言わないけど。
天才ハッカーの桃枝に限って、そんなヘマはしないだろうし。
見つめていると桃枝はテーブルを叩いた。
「ちょっと、私を疑っているの!?」
「違うって。俺はお前を信じてるよ」
「……ッ! そ、それならいいけど」
顔を赤くして怒りを収める桃枝。
とにかく、これでしばらく身を潜めることは出来る。この秘密基地で財宝を現金に換えてしまおう。
きっと、上手くいくはず。
この場所ならな。
しばらくて女性陣のほとんどは、お風呂へ行ってしまった。
この家には改造した大きな温泉があるらしい。織田姉妹の趣味だとか。あとで見に行ってみるかな。
リビングに残っているのは千年世だけ。
「良かったのか、千年世」
「い、いいんです。それよりも……早坂くん、少しオーハ島を見て回りませんか!?」
ふーむ、そうだな。
まずは島のことを知っていく方がいいだろう。万が一もあるかもしれないし。
2015年を最後に無人島となっている。現在も住んでいる人はいないらしい。
あれから船で沖縄へ。
天音が事前に用意してくれた船でオーハ島へ辿り着いた。あの鹿児島港以来、謎の男達に狙われることはなかった。
「こ、ここがオーハ島……とても綺麗な場所」
透明度抜群の澄み切った海を見渡す天音。
やはり、この辺りまで来ると海が恐ろしく綺麗だな。
ただ、危険な生物もいる。
「天音、ハブに気を付けろ」
「ハブ? あのヘビの?」
「そうだ。毒をもっている」
「茂みには近寄らないようにしておくんだ。と、言っても海にもウミヘビがいるし、どこへ行っても危険だけどな」
「うそ~…」
知らなかったらしい、天音は顔を青くした。というか、北上さん以外の女子も真っ青だった。今更、来たことを後悔している表情だ。
荷物を持ち、少し歩くと民家が見えてきた。
北上さんが指さし、こう言った。
「あそこが我々の拠点となる場所ですね」
ああ、あれか。
シーサーの乗った琉球瓦の民家。
いかにも沖縄風な家だ。
一応、電柱もあるから電気も通っているようだな。
へえ、最近まで誰か住んでいたのかな。
「えっ、あの平屋が? 誰か住んでいるんじゃないの」
リコが怪訝な顔をしながらも建物を吟味する。
「ええ、あれですよ、リコ。元々は“織田”という人の所有物でした」
「織田? 誰よ」
「さあ……中へ入れば分かるかと」
織田って、どこかで聞いた苗字だな。
いや、まさかな。
民家の玄関に向かい、俺は扉を開けようとしたのだが――勝手に開いた。
驚いて引くと、中から見覚えのある双子が現れた。
「月、星!?」
マジかよ。驚いた。
最近姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのか。
すでにこのオーハ島にいたとはな。
思考が追い付かず、立ち尽くしていると月が「おひさしぶりです、兄様」と、続いて星が「……お待ちしておりました」と静かに歓迎してくれた。
「お、おう。中へ入っても?」
「どうぞ。部屋はクーラーで冷やしてありますので快適です」
「やっぱり、電気が通っているんだ」
「もちろんです。ただし、自家発電ですけどね」
そういうことね。
どおりでソーラーパネルが設置されているわけだ。おまけに風力発電も。あらゆる手段を講じているようだな。
家の中へ入ってリビングへ。
さすがにこの人数だと、ちょっと狭いかな。
「普通の部屋ですね。なんだか無人島には思えません」
俺の背後で千年世がつぶやいた。
「そうだな。至って普通の一般家庭の内装だ。けど、これなら快適だわな」
座椅子に座り、さっそく北上さんが月に聞いた。
「滞りなくですか?」
「はい。姐さんの指示通りに」
北上さんを姐さんって……おいおい。
どうやら、北上さんは予め双子に指示を出していたようだな。この無人島というか、もはや有人島を整備するように。
「ねえ、どういうことなの?」
桃枝が真相を求めた。
俺も同じ気持ちだ。
「ええ、実は啓くんがこのオーハ島に目星をつけていたので、それで」
おいおい、あの時は俺が心の中で思っただけなんだがな。まあ、北上さんに言い当てられてしまったけどね。そうか、あの時点でこの移住計画は決まっていたんだな。
交通手段に天音、潜伏先のオーハ島には織田姉妹の力を借りて。
「でも、なんでこの家を織田姉妹が?」
「良い質問です、兄様」
月が柔らかい表情で微笑む。
それから星が答えた。
「織田家は、代々この無人島を受け継いできました」
「そうだったのか。ということは所有者なのか」
「その通りです。だから、この島なら海外の組織から狙われる心配はありません」
とんでもない事実が判明した。
まさか、オーハ島が織田姉妹の管理下にあったとはな。
それなら気軽に使えるわけだ。
「おーけー。となれば、財宝もじっくり現金化できるわけだ」
「はい。現在は海外オークションを通じておりますが、全てが上手くいくわけではありません。中にはブラックマーケットやダークネットを通じた闇売買にて対応しなくてはならなくて、なかなかリスクも高くなっています」
あの財宝の数々だ。
そう簡単に現金にできるわけがないな。
納得していると天音がぽつりとつぶやいた。
「まさか、そのせいでロシア人に勘付かれたんじゃ」
「それはありません。桃瀬さんにはVPNによる暗号化通信で取引を行ってもらっていますので」
詳しいな、月のヤツ。
なるほど、そこまでセキュリティ面に気を遣っているなら情報漏洩することは、ほぼないはずだ。100%とは言わないけど。
天才ハッカーの桃枝に限って、そんなヘマはしないだろうし。
見つめていると桃枝はテーブルを叩いた。
「ちょっと、私を疑っているの!?」
「違うって。俺はお前を信じてるよ」
「……ッ! そ、それならいいけど」
顔を赤くして怒りを収める桃枝。
とにかく、これでしばらく身を潜めることは出来る。この秘密基地で財宝を現金に換えてしまおう。
きっと、上手くいくはず。
この場所ならな。
しばらくて女性陣のほとんどは、お風呂へ行ってしまった。
この家には改造した大きな温泉があるらしい。織田姉妹の趣味だとか。あとで見に行ってみるかな。
リビングに残っているのは千年世だけ。
「良かったのか、千年世」
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