クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
127 / 287

秘密の場所にて

しおりを挟む
 沖縄県島尻郡久米島町――オーハ島。
 2015年を最後に無人島となっている。現在も住んでいる人はいないらしい。

 あれから船で沖縄へ。
 天音が事前に用意してくれた船でオーハ島へ辿り着いた。あの鹿児島港以来、謎の男達に狙われることはなかった。

「こ、ここがオーハ島……とても綺麗な場所」

 透明度抜群の澄み切った海を見渡す天音。
 やはり、この辺りまで来ると海が恐ろしく綺麗だな。
 ただ、危険な生物もいる。

「天音、ハブに気を付けろ」
「ハブ? あのヘビの?」
「そうだ。毒をもっている」
「茂みには近寄らないようにしておくんだ。と、言っても海にもウミヘビがいるし、どこへ行っても危険だけどな」
「うそ~…」

 知らなかったらしい、天音は顔を青くした。というか、北上さん以外の女子も真っ青だった。今更、来たことを後悔している表情だ。

 荷物を持ち、少し歩くと民家が見えてきた。
 北上さんが指さし、こう言った。

「あそこが我々の拠点となる場所ですね」

 ああ、あれか。
 シーサーの乗った琉球瓦の民家。
 いかにも沖縄風な家だ。
 一応、電柱もあるから電気も通っているようだな。
 へえ、最近まで誰か住んでいたのかな。

「えっ、あの平屋が? 誰か住んでいるんじゃないの」

 リコが怪訝な顔をしながらも建物を吟味する。

「ええ、あれですよ、リコ。元々は“織田”という人の所有物でした」
「織田? 誰よ」
「さあ……中へ入れば分かるかと」

 織田って、どこかで聞いた苗字だな。
 いや、まさかな。

 民家の玄関に向かい、俺は扉を開けようとしたのだが――勝手に開いた。
 驚いて引くと、中から見覚えのある双子が現れた。


ルナヒカリ!?」


 マジかよ。驚いた。
 最近姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのか。
 すでにこのオーハ島にいたとはな。

 思考が追い付かず、立ち尽くしていると月が「おひさしぶりです、兄様」と、続いて星が「……お待ちしておりました」と静かに歓迎してくれた。

「お、おう。中へ入っても?」
「どうぞ。部屋はクーラーで冷やしてありますので快適です」
「やっぱり、電気が通っているんだ」
「もちろんです。ただし、自家発電ですけどね」

 そういうことね。
 どおりでソーラーパネルが設置されているわけだ。おまけに風力発電も。あらゆる手段を講じているようだな。

 家の中へ入ってリビングへ。

 さすがにこの人数だと、ちょっと狭いかな。

「普通の部屋ですね。なんだか無人島には思えません」

 俺の背後で千年世がつぶやいた。

「そうだな。至って普通の一般家庭の内装だ。けど、これなら快適だわな」

 座椅子に座り、さっそく北上さんが月に聞いた。

「滞りなくですか?」
「はい。姐さんの指示通りに」

 北上さんを姐さんって……おいおい。
 どうやら、北上さんは予め双子に指示を出していたようだな。この無人島というか、もはや有人島を整備するように。

「ねえ、どういうことなの?」

 桃枝が真相を求めた。
 俺も同じ気持ちだ。

「ええ、実は啓くんがこのオーハ島に目星をつけていたので、それで」

 おいおい、あの時は俺が心の中で思っただけなんだがな。まあ、北上さんに言い当てられてしまったけどね。そうか、あの時点でこの移住計画は決まっていたんだな。

 交通手段に天音、潜伏先のオーハ島には織田姉妹の力を借りて。

「でも、なんでこの家を織田姉妹が?」
「良い質問です、兄様」

 月が柔らかい表情で微笑む。
 それから星が答えた。

「織田家は、代々この無人島を受け継いできました」
「そうだったのか。ということは所有者なのか」
「その通りです。だから、この島なら海外の組織から狙われる心配はありません」

 とんでもない事実が判明した。
 まさか、オーハ島が織田姉妹の管理下にあったとはな。
 それなら気軽に使えるわけだ。

「おーけー。となれば、財宝もじっくり現金化できるわけだ」
「はい。現在は海外オークションを通じておりますが、全てが上手くいくわけではありません。中にはブラックマーケットやダークネットを通じた闇売買にて対応しなくてはならなくて、なかなかリスクも高くなっています」

 あの財宝の数々だ。
 そう簡単に現金にできるわけがないな。
 納得していると天音がぽつりとつぶやいた。

「まさか、そのせいでロシア人に勘付かれたんじゃ」
「それはありません。桃瀬さんにはVPNによる暗号化通信で取引を行ってもらっていますので」

 詳しいな、月のヤツ。
 なるほど、そこまでセキュリティ面に気を遣っているなら情報漏洩することは、ほぼないはずだ。100%とは言わないけど。

 天才ハッカーの桃枝に限って、そんなヘマはしないだろうし。
 見つめていると桃枝はテーブルを叩いた。

「ちょっと、私を疑っているの!?」
「違うって。俺はお前を信じてるよ」
「……ッ! そ、それならいいけど」

 顔を赤くして怒りを収める桃枝。
 とにかく、これでしばらく身を潜めることは出来る。この秘密基地で財宝を現金に換えてしまおう。
 きっと、上手くいくはず。
 この場所ならな。

 しばらくて女性陣のほとんどは、お風呂へ行ってしまった。

 この家には改造した大きな温泉があるらしい。織田姉妹の趣味だとか。あとで見に行ってみるかな。
 リビングに残っているのは千年世だけ。

「良かったのか、千年世」
「い、いいんです。それよりも……早坂くん、少しオーハ島を見て回りませんか!?」

 ふーむ、そうだな。
 まずは島のことを知っていく方がいいだろう。万が一もあるかもしれないし。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...