クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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おとり作戦

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 炎は激しさを増し、熱が肌を焦がすようだった。
 熱い……。体も息さえも。

 燃えさかる林の中を突き進むと、あの男が銃を向けてきた。木々に身を隠し、嵐が去るのを待った。くそっ、何百発も撃ってきやがって!

 いったい、いくつの予備マガジンを持っているんだ。こんなぶっ放してくるとか!

「啓くん、無線連絡をして状況を把握してください」
「分かった。こっちの状況も天音たちに知らせる」

 身を隠しつつも俺は無線連絡を開始。
 直ぐに天音の反応があった。

『ど、どうしたの……早坂くん!』
「こっちはホワイトウォーターのボスらしき男と交戦中。そっちはどうだ?」
『ボ、ボスらしきって、やっぱり組織が相手なのね』
「ああ、ヤツ等は俺たちの命と財宝を狙っている」
『りょ、了解。こっちは無事だよ。窓が防弾だし、壁も分厚くできてるから』

 そうだったのか。月と星が家を防弾仕様に改良してあったんだな。それで家は無事なんだ。それを聞けただけでも安心した。

「なるほど。それで敵はいそうか?」
『うん、家の周囲にひとりいるっぽい。リコが対応してくれてる』

 まずいな、向こうに敵がいるのか。
 早くこっちを何とかしないと……!

「分かった。出来る限り身を潜めて戦ってくれ」
『がんばるよ……。早坂くんもがんばってね』

 家の状況は分かったが、敵が既に侵入していたか。だが、天音やリコが奮闘してくれているようだ。向こうは任せるしかない。
 それよりも、ホワイトウォーターのボスらしき男を倒さねば。

「北上さん、家は大丈夫だ。ただ、早くケリをつける必要がある」
「そのようですね。こうなったら、方法はひとつ。出来ればこの作戦は使いたくなかったのですが……」
「言ってくれ」

おとり作戦です。どちらかがあの男をひきつけるんです。その隙にもうひとりが攻撃ですね」

「その手があったか。なら、ここは俺が囮になる。北上さんがヤツを仕留めてくれ!」
「し、しかし……」
「いいんだ。俺よりも北上さんの方が身体能力は高い。だから頼む」
「……分かりました。では、わたしは隠れますので」

 忍者のように音もなく立ち去り、隠れる北上さん。あとは俺が囮になるだけ。
 けど、闇雲に出ても撃ち殺されるだけだ。ここは先ほど入手したスモークグレネードを使う。

 俺は三個をバラバラに投げた。
 向こうは反撃してくるが、スモークグレネードと分かるや攻撃を止めた。

「そんな煙で何ができる!」

 ようやく声を出したか。
 チャンスだ。

「視界を遮るくらいには使えるさ。ところで、あんたは本当にホワイトウォーターのボスか?」
「いいだろう。その度胸に免じて小僧、貴様には特別に教えてやる……。私の名はブルース。ホワイトウォーターのボスさ」

 隠し通すかと思いきや、ボスの男はそう名乗った。そうか、コイツこそが……!
 その時、M203から発射されたらしきグレネードが飛んできた。

 俺は直ぐに爆発を回避、ケガを負うことはなかった。

 ブルースは更に銃撃。俺も対抗するようにハンドガンを撃ち続けた。交差する弾丸は、体ギリギリを掠めていく。

 ……あぶねえ。あと数センチで心臓を撃ち抜かれていた。運が良かった。

「名前を教えてくれてありがとよ! それより、さっさと出て行ってくれ! それで命は取らないでやらんこともない」

「フ……フハハハ!」

「なにがおかしい!」
「日本人の学生ごときが、この戦闘のプロである私を本気で倒せると?」

 突然目の前に姿を現すブルース。
 拳を振り上げ、俺の頬に捻じ込んできた。死ぬほど強い衝撃に吹き飛ばされ、俺は大木に激突した。

「……ぐあッ!!!」

 背中を打ち、息が出来なくなった。


 …………、……、…………。


 なんとか酸素を肺に取り込み、俺は事なきを得た。…………な、なんて……馬鹿力だ。

「小僧、ひとつ……いや、二つ聞かせろ」
「……っ」

「まず、貴様の名だ。お前は『早坂 啓』で間違いないな?」


 こ、こいつ俺の名前を知っていたのか……!


「それがどうした」
「やはり、宝島の学生か。お前達の情報は“タチカワ”から聞いていたのさ」
「そうか……学年主任から……」
「ああ、あの男の情報は役に立った。数百億する財宝の在り処さえも教えてくれた。……ま、それはいいとしてモーニング・グローリーはどこだ?」

 ギロッとした眼で俺を睨むブルース。
 俺もどこへ行ったか分からない。
 だけど、きっとチャンスを伺っているはずだ。
 だからその時まで俺は時間を稼がないと!

「知らねえよ、タコスケ」
「そんなに痛い目に遭いたいか、小僧」

 今度は蹴りを入れてこようとするブルースだが、俺はその前に催涙弾を発射した。

「くらえええええええ!!」
「ぐあああああああああ、目があああああああ!!」

 これで隙だらけだ!!
 最大のチャンスが訪れ、その瞬間に頭上から北上さんが降ってきた。

 って、木の上から!?

 マジか……!
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