異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

晴樹

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100話(最終話) 帰還

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僕はゲートの目の前で立ち止まった。あと一歩右足を前に出せばゲートに入るであろうというタイミングでだ。
「どうした、結城よ」
後ろをついてきていたブランが立ち止まった僕に、不思議そうな顔をして語りかけてくる。
少し時間をくれ。
僕は、再び八雲に問いかけることにした。帰る前に後悔の残らないように。
「八雲、最後にいいか」
「なんだい、最後だから何でも答えてやるぞ」
「そっか、ありがとう」
僕は、振り向き八雲の顔を見た。
そして、こう尋ねた。
「八雲が帰りたくない理由は分かった。だから、最後の問いかけで選んでほしい。その答えを僕は聞きたい」
「……わかった。言ってくれ。嘘偽りなく答えるよ」
「なら……」
僕は大きく深呼吸をして、間を作った。

「八雲は、僕のいない世界といる世界どっちの世界で生きたい?」

それは簡単な質問だった。
魔法が使える世界と魔法が使えない世界のどっちがいい、みたいな二択。
だけど、この質問はどう答えるかで、元の世界に戻るのかそれとも残るのか、選択する二択になる。
そのことに気づいたのだろう、八雲は黙ったままだ。
「な、なんだよ、その質問は……」
八雲は苦笑いを浮かべている。
どう答えが返ってくるか、僕は静かに待つ。
「その質問は、選んだ方に進まなくちゃいけないのか?」
「うん、選んだ答え次第だよ」
「そうか……」
八雲は俯いた。そのまま動かなくなる。考えているのだろう。
その時間は長く感じた。静かに誰も言葉を発しずに八雲の答えを待っているのだ。
そんな時だった。八雲の奥、異世界の図書館で小さな爆発音がしたのは。
もう時間がないことを意味している。

「選べ、八雲!」
僕は叫んだ。それと同時に左手を八雲の方に差し出した。
図書館の方では建物が崩れる音が聞こえてくる。
この空間もいつまであるかわからない不完全なものだ。
「急げ、結城よ!」
ゲートの前ではブランが急かしてくる。
分かっている。そんなこと。僕も今すぐにでも飛び込みたいんだ。
でも、ここで答えを聞かなければ、僕は一生の友達を失うことになってしまう。

「八雲!!」
僕は八雲の目を見る。
八雲は俯いていた顔を上げてこちらを見ている。
「……」
八雲は涙を流しながらこちらに向かってこう言った。

「決まっているだろう! 君のいない世界に価値などない!!」

そう、彼は言ったのだ。
この答えを待っていた。
「来い、八雲!」
その掛け声を同時に八雲が走り出した。
向かってきた八雲の手を取り、もう片方の手でブランを掴み僕はゲートに飛び込んだ。
白い世界に落ちていく。
そこが元の世界なのか、それとも天国行きなのか、行った先が答えだ……

白い世界が終わりを迎えるとき、僕たちはある見慣れた場所に落とされる。
匂いから世界が違うことが分かる。
見慣れた灰色の道が暗い月明かりと道の街灯の明かりに照らされている。
電柱に住宅が立ち並ぶ光景は、元の世界の夜を意味していた。
「なぁ、八雲」
「なんだ、結城」
「戻ってきたな」
「あぁ、そのようだな」

人の姿は僕ら以外にはなかった。
でも、この道には見覚えがあった。
僕の通学路なのだ。それも……

「ここはどこじゃ?」
ブランはあたりを見渡している。見覚えがない光景に違いない。
不思議そうに辺りを興味深そうに眺めている。

そんなことを僕は気にせずに、立ち上がって見覚えのある道を駆け出した。
「おい、どうしたのじゃ結城よ」
ブランは僕の行動に戸惑っている。
「まぁ、ついていこうじゃないか」
八雲は冷静に答えた。彼には分っているのかもしれない。
僕は駆け出して少ししたらある一軒家の前に立ち止まる。
家は普通の二階建ての家。しかし、その家は僕にとっては特別なものだ。
そう、僕の生まれ育った家だ。
なぜか僕は、家のチャイムを押した。
まるで他人化のような対応。家を出て帰らなかった期間があったせいだろう。
「はーい」
そう言って、僕の家の中から声が聞こえてくる。
そして玄関のドアが開いていく。
「どちら様~?」
ドアが開き人の姿が現れた。僕の妹だった。
「えっ」
妹は僕の姿を視界にとらえると、口を大きく開けていた。
「幽霊じゃないぞ」
「お、お兄ちゃん!?」
そして飛び込んできたのだ。
「お兄ちゃん!!!!」
衝撃と重み、そして妹という存在を抱きしめた。
「ただいま」
僕は帰ってきた。元の世界に……
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