最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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76 スライムの正体

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「ウワワワ、冷たいよっ」
(おお、スマンスマン(棒))
「心が籠ってないっ!」
騒ぐスライムを洗ってやる。
できる使用人が海綿かいめんも用意してくれていたので、ゴシゴシとスライムをこすってやる。
どのくらいのあいだ泥まみれになっていたのかは分からないが、泥は水と共に、すぐに流れていった。

(え、なんだ!?)
すっかり綺麗になったスライムを見て、スーは驚きの声を上げる。

「サッパリしたぁ」
スライムは喜んでいる。

「やっぱりな」
グリファスは分かっていたのか、それでも渋い顔をしている。

「これは……。初めて見ました」
「こんなことが……」
小さなスライムの水浴びを、楽しそうに見ていたクライブとハロルドは、綺麗になったスライムを見て、呆然としている。

汚れたスライムは、スライムの分類の中で、一番多いグリーンスライムでも、次に多いブルースライムでもなかった。
スライムは無色透明のベビースライムとして生まれてきて、最初に取り込んだ食べた物によって、変化する。
スーは水辺の苔を食べたからブルースライムになったのだが、目の前のスライムは何を食べたのか、見当がつかない。

(坊主……。なんでなんだ?)
「?」
スライムは黄色。それも山吹色やまぶきいろと言われる濃い黄色だったのだ。
当のスライムは、不思議そうにスーを見ている。

「まあ、みかんみたい。みかんちゃんだわ」
クライブ達と一緒に水浴びを見ていたティナが、嬉しそうな声を上げる。

キィィィン。
みかんと名前をつけられたスライムから、何かが弾かれた。

(何だ!)
盥の中から聞こえた音に、スーは海綿を持った触手ごと、とっさに離れる。

「抱っこ。盥から出して」
みかんは触手を出せてはいないが、それでも身体の両脇を伸ばして、スーへと抱っこを強請ねだる。
だが、何が起こったのか混乱しているスーは、みかんの望みを叶えてはやらない。
盥から少し離れた場所から動かない。みかんを見ているだけだ。

(おい、グリファス。お前、坊主が何者か分かっているんだろう?)
「ああ……。我も初めてだが、そいつは神獣だ。たぶんゴールデンスライム」
(神獣!? こんなチビこい坊主が!)
「だからかぁ、やっぱり俺のステータス能力が落ちたわけじゃなかったんだわっ。そりゃあ神獣なら、ステータス見れないよなぁ。そうか神獣かぁ……つて、おい、神獣!! 神獣だとっ、ありえないしっ!」
サンドイッチを食べるのがひと段落したのか、ちょうちょも話に入ってきたが、みかんが神獣だと知らされ、目が飛び出しそうになっている。

「神獣だなんて、信じられない……。ですが、なんと素晴らしいことでしょう!」
「神獣なのですか? ザイバガイト王国我が国に神獣が、また現れたのですか……」
他の魔獣達の言葉は通じてはいないが、グリファスは人族の言葉で話しているので、クライブとハロルドにもみかんが神獣だということは伝わった。
素直に喜ぶハロルドとは対照的に、クライブは何か考え込んでしまった。

「神獣なのね。そうよね、神獣はペットにはなれないもの。だから弾いちゃったのね」
(え?)
ティナがポツリと呟いた言葉は、人族よりも聴力の優れている魔獣達には聞こえた。

「ティナ、それはどういうことだ?」
どこかぼんやりとしているティナに、グリファスが問いかける。

「全てをペットにできるけど、神獣だけは駄目だって言われていたの……。あらっ、私どうしたのかしら?」
ティナは意識が戻ったのか、ハッとしたようにパチパチとまばたきを繰り返している。

「そうかぁ、ティナの天恵ギフトでも神獣は無理なのか。って、そんなにペット増やすなよ。スーが煩いぞ」
「おい、ティナはギフト持ちなのか?」
ちょうちょの言葉に、グリファスはティナがギフトを持っていることを知る。

いくらグリファスが神獣だとはいえ、ステータスを見ることはできない。
ティナのことを不思議だとは思っていたが、まさかギフト持ちだったとは……。
グリファスは妙に納得してしまう。

ティナがペットにしようとするのは無意識のようだ。
方法は簡単で、名前を付けるだけ。それでいいのかと思うが、それがギフトだと言われれば、納得せざるを得ない。
現にちょうちょはそれでペットになったと言っていた。

今回ギフトが発動したのは、みかんがまだ誰とも契約をしていないフリーの状態だったからだ。
グリファスの時は『鷲さん』と名付けたが、既にクライブに加護を与えていたから契約済と判定されたのだろう。カーバンクルの時は、従魔の首輪があった。
だからペットには出来ないと、最初からギフトは発動しなかった。だから弾かれることもなかったのだ。
今回のことがなかったら、グリファスはティナのギフトに気づくことはなかった。

ギフトは強力だ。
このままでいくと、ティナが気に入って名前を付けると、全てがティナのペットになってしまう。
その上ペット達はご主人様に従順な上に、ご主人様思いだ。
最強テイマーの上を行く存在になるだろう。
早急に正式なステータス検査を受けさせるべきだ。

「ねぇ、早く出して」
(こんなおチビが神獣ねぇ)
「失礼だぞっ、もう汚れてないのに。その持ち方止めろっ!」
またも触手でみかんの首根っこを摘まみ上げたスーに、みかんがもがきながらクレームを入れている。

クライブとハロルドは、神獣が現れたことを報告するために席を立とうとしてグリファスに止められた。

「すまないが、少しの間、新たな神獣のことは黙っていてほしい」
「報告しないのは、どうしてなのですか?」
「え、なぜなのですか?」
クライブとハロルドは、これ程大事なことを口留めされ、理解できない。
神獣が現れたのだ、国にとっては吉兆でしかないのに。

「少しの間でいい。心苦しいだろうが、協力してくれ」
グリファスはこの国では最高位にいる。そんなグリファスからの言葉に、どんなに理不尽だと感じても断れることは出来ない。
クライブとハロルドは、頷いて了承する。

驚きの出来事に、お茶会は中止となるかと思ったが、グリファスから『お茶ぐらい飲んでいけ』の一言で、そのまま続行となった。
グリファスに文句を言う者はいないし、ちょうちょがまだ食べたいと言い張ったのだ。

「こんな美味しいの初めて食べたっ!」
今まで井戸の底で土しか食べる物のなかったみかんは大喜びだ。

(おい、あんまり食べるとデブるぞ)
「いいんだよ。ステルスを使って、腹が減ってるんだ」
自分の身体よりも大きそうなサンドイッチに噛り付いているちょうちょにスーが注意するが、聞いちゃいない。

「今日は、いつもの可愛い服を着てはいないのだな」
グリファスの言葉にスーとちょうちょは固まった。

(このジジイ、要らんことを言いやがって!)
「何を言い出すんだぁ、ティナに気づかれたじゃないかっ」
焦る二匹にグリファスはニヤニヤ顔だ。
絶対分かって言ってやがる。

「どこかで脱いできちゃったのね。クライブ殿下が喜ぶから着せていたけど、やっぱり窮屈だったわよね。ごめんね、もう無理に着せないわ」
(ご主人様……)
「ティナ……」
ご主人様はペットに服を着せない派だった!

とがめられるどころか、謝られてしまい、自分のご主人様の心の広さに感動する二匹なのだった。


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