最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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29 入学試験・三次試験前日①

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ティナが連れて行かれたのは、森の随分と奥まった場所だった。
道など無く、人が通れるようにはなっていない場所へと連れて行かれたので、けっこう大変だった。

「ここは?」
広く開けたそこには、多くの妖精達が飛び交っている。

「ここは俺達の集落なんだ。ここには妖精族の族長や長老もいる。皆に紹介するよ」
ちょうちょはティナへと説明しているが、もちろんティナには通じていない。

「わぁ、ティナとデブスライムが来たよー」
「いらっしゃーい。ティナとデブスライムは、俺達を蛇から助けてくれたんだ」
「まってたよぉ。ティナとデブスライムに、たぁくさんの果物を用意したよ」
先ほどまで一緒にいた妖精達が、ティナとスーを歓待してくれる。
他の妖精達も話を聞いているのか、ティナ達を排除しようとはしないし逃げもしない。

(デブデブと煩いわっ。何度言ったら分かるんだ。まる飲みするぞっ)
スーの苦情は妖精達には聞こえていないようだ。
ティナの周りを嬉しそうに飛び回っている。

「まあ、あの時のキラキラさん達ね、ここがお家なの?」
妖精はパッと見た目は羽の生えた小さな人族だ。そのうえ子どものような可愛らしい外見をしている。そんな妖精に囲まれて、ティナは嬉しそうだ。

「あなたがティナさんか。私はこの集落で長老と呼ばれている。仲間たちを助けてくれてありがとう。本当ならば族長が挨拶するべきなのだが、妖精喰いが出たと聞いて、森を調べに行っておる」
一体の妖精が前に出てくると、ティナへと頭を下げる。
長老だと言っているが、見た目は他の妖精と同じで可愛らしい子どもにしか見えない。

「まあ、挨拶をしてくれるの? 嬉しいわ、こちらこそよろしくね」
ティナに長老の言葉は通じていない。
ただ挨拶をしてもらったのだと思い、自分も頭を下げる。

「色々と聞きたかったのだが、言葉が通じないとは……」
ティナには自分達の姿が見えているのだから、言葉も通じるかもしれないと思っていたが、まるで通じていない。長老は残念がっている。

戻って来たキラキラ達から『妖精喰い』が出たという話を聞き、集落はパニックにおちいりかけた。
報告をしてきたキラキラ達の話では、妖精喰いは人族とその従魔に駆除されたというが、興奮して各々が話しをするので、要領を得ない。
妖精喰いが見えるのは、この集落の中では族長と長老しかいない。族長は慌てて他にも妖精喰いがいないのか調べるために集落を飛び出していった。もし他にも妖精喰いがいたら、集落の存続に関わる重大事だ。

(ご主人様には妖精喰いが見えていたが、俺には姿を見るどころか、気配すら感じることはできなかった。目の前で妖精が一匹喰われたが、ご主人様は妖精喰いの存在を知らないから “蛇” と呼んでいた。魔獣かどうかも分かってはいなかったと思う)
「おお、スライムが話しをするとは」
(いまさらそこをツッコムのかよ)
ティナの足元にいたスーが話したことに驚く長老に対し、スーはガックリと肩を落とす(肩は無いが)

(迷いの森に入ってすぐの場所だったから、妖精喰いも俺達と同じ入り口から入って来たのだろう。学園の試験のために入り口が開放されるのを待っていたのかもな。ご主人様の様子では一匹だけだったし、俺が食ったから安心していいと思う)
「喰った……。儂が昔に見た妖精喰いは、人族ぐらいの大きさがあったが、スライム殿が食べることができたというのなら、今回の妖精喰いは、それほど大きくはなかったのか」
「いや、デカかったよ。ティナよりも大きかったかも」
「なんと……」
ティナの頭の周りを飛んでいたちょうちょが話に入って来る。

「妖精喰いを始末していただいて、ありがたいことじゃ。儂と族長以外の妖精達に妖精喰いは見えない。このまま妖精喰いに集落を襲われていたら、我々は全滅していただろう。あらためて礼を言わせてもらいたい、この集落全ての妖精達の命の恩人だ、ありがとう」
長老は深々と頭を下げる。

(いや、俺は妖精達を守ったわけじゃない。妖精喰いがご主人様に向かって来たから処分しただけだ)
「そうだぜ、俺達を守ってくれたのはティナだ」
スーは礼を辞退するし、ちょうちょも恩人はスーではなくティナだと言う。

「ティナさんにも礼を尽くそう。それにスライム殿が妖精喰いを始末してくれたのは事実。我らの恩人に変わりない。この集落にいる妖精達は、あなた方に対して忠義を尽くすことを約束する」
(いや、そんな大層なことを言われてもなぁ)
再度頭を下げる長老を見てスーは面食らう。スーにすれば、ご主人様に仇成すヤツを喰ったにすぎないのだから。

「それにしても、なんと稀有けうなスライムなんじゃ。それにご主人様とは? もしやスライム殿はティナさんの従魔なのか? それにしては従属の契約が結ばれていないようだが」
(そんなことが分かるのか?)
「そうだぜ、俺達妖精は相手のステータスを見ることができるって前に言っただろう。俺達はそこまで詳しく見ることはできないけど、長老は凄いんだ!」
驚くスーの横でちょうちょが胸を張る。

(そういえば、ちょうちょはご主人様に魔力が無いと言っていたな……。ならばなぜご主人様には妖精喰いが見えたのだろう?)
「な、なんと!」
不思議がり頭を捻るスーを見ていた長老が、驚きに声を上げる。

「どうしたんですか長老?」
「いや、申し訳ない。スライム殿のステータスに少しおかしな所があって……」
(俺のステータス?)
「ステータスを他人には見られたくなどないでしょう。スライム殿のステータスを勝手に見てしまって申し訳ない。儂が見たスライム殿のステータスは誰にも言わないから安心してくだされ。儂も見なかったことにしますから」
(いや、それはかまわないが、それよりもステータスっていうのは、どんなことが分かるんだ? 俺のステータスを教えてほしい)
「デブスライムのステータスを俺も知りたーい」
(お前は煩い、あっちに行ってろ)
スーは小さな触手を出すと、ちょうちょをシッツッと追いやろうとする。ちょうちょは知らん顔している。
スーの問いに長老は一つ頷く。

「儂が見ることのできるステータスは、大まかな本人の資質とレベル、ジョブぐらいじゃな。人族の使う魔道具アーティファクトを使えば、特性や能力などの細かい所まで分かるようじゃが」
(資質?)
「本質というか、生まれ持ったものじゃ。スライム殿でいうと、種族名スライム、分類はブルー、年齢は12歳とうことじゃ」
(おお、そうだった。俺はブルースライムだった)
レベルアップして、色々なことができるようになってきたから、自分がブルースライムだということを忘れそうになっていた。

スライム種の中ではグリーンスライムが一番多く、次に多いのがブルースライムだ。スライムは生まれた時、最初に食べた物により分類が別れる。スーは水辺に生まれ、すぐに食べたのが水草だったというだけだ。ブルースライムだからといって、水に強いというわけではないし、分類が違ったからと言ってスライムはスライムであって、最弱に変わりない。

「ん? んんん?」
(どうした)
長老の言葉に、なぜかちょうちょが不思議そうに頭を捻っている。

「いやだって、お前12歳って、おかしいだろう」
(なにがおかしいんだよ。ベビースライムの時にご主人様に拾われて、それからご主人様と12年間、楽しく一緒に過ごしてきたんだ)
「いやおかしいって。だってスライムの寿命って三年ぐらいだって聞いたことがあるぞ」
(え、そうなのか?)
「儂もそう聞きましたが……」
(いやいやいや、まってくれ。俺はまだ生きているし、ビチピチで若い)
スーは知らなかったが、スライムの寿命はほぼ三年といわれている。
魔獣とはいえ知能も低いし能力も食べる以外は無い。そんなスライムは、そこいらの獣どころか虫並の寿命しか持ってはいない。

(い、いや寿命が長いって、いいことじゃないか。そうだよなっ)
「そ、そうですな。素晴らしいことですな」
「もしかして、種族はスライムだけど、変異種じゃないのか? ほら、ネオスライムとか、グレートスライムとか」
(そんなスライム聞いたことねーよっ)
ちょうちょにツッコミを入れるが、自分が変異種だとは思わない。

レベルアップしたことにより、能力が飛躍的に伸び、知能も高くなった。スライムとしては、あり得ない存在になってしまった。
そう思っていたが、そうじゃなかった。
レベルアップ以前から自分は他のスライムとは違っていたのかもしれない。寿命なんて、延ばそうと思っても延ばせるものじゃない。
気づいていなかっただけで、自分はブルースライムではなかったのか?

だが長老は、俺のステータスは、種族名スライム、分類はブルーと言っていた。
どうなっているんだ?
スーは頭を捻るが、すぐに思い直す。
まあ、いいさ。
これからも俺は変わることなくご主人様と一緒に暮らしていく。
寿命が長いなら、それだけご主人様と一緒にいられる。いいことじゃないか。
だから自分は平凡なブルースライムでいいんだ。
そう結論付けるスーなのだった。
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