20 / 80
第20話
しおりを挟む第20話 アマギの旗の下に
朝。
新しい太陽が、アマギの丘を照らしていた。
旗は高く掲げられ、風に翻っている。
白地に金と黒の二重円――“模倣”と“創造”を象徴する印。
それは、かつて神に支配されていた世界が
ついに“人の手”で新しい秩序を築くという証だった。
「……いい風ね」
エリスが旗の下で呟いた。
彼女の瞳には、光を反射するように新しい世界が映っている。
隣に立つ蓮が微笑んだ。
「この旗が、俺たちの願いの象徴になる。
――神のためじゃなく、“人のため”の空を掲げる旗だ」
「そうね」
エリスは頷いた。
「でも、この旗はただの象徴じゃない。
“人は、神を模倣せずとも創れる”という証明よ」
リィナが後ろから近づいてくる。
「まったく、説教くさいセリフだな」
彼女は笑いながら、木の箱を運んできた。
「何それ?」
「祝賀会の準備。村の連中が“建国の日”だって騒いでる」
蓮が驚いたように眉を上げた。
「建国、か。
たしかに、今のこの瞬間が“人類史の第一歩”だな」
「だったら、飲まなきゃな!」
リィナが笑いながら酒瓶を掲げた。
「神様抜きの初めての乾杯だ!」
⸻
その夜、アマギの広場は焚き火の光に包まれていた。
子どもたちが走り回り、音楽が鳴り、笑い声が響く。
新しい文明の息吹が、確かにそこにあった。
蓮は火のそばに座り、ふと遠くを見つめた。
そこには、闇の中にうっすらと光る大地の線――
世界が“再構築”され、拡大していく兆候があった。
エリスが気づき、彼の隣に座る。
「また……動いてるのね」
「ああ。
人間が“想う”ことで、世界が少しずつ形を変えてる。
それが、創造者たちの連鎖反応だ」
「創造者たち……?」
蓮は頷く。
「俺たち以外にも、この力に目覚めた者がいる。
遠い南方や西の大陸で、“夢を形にする人間”たちが生まれ始めているんだ」
エリスの表情がわずかに引き締まる。
「それって……良いことなの?」
「希望でもあり、危険でもある。
“創る”力は、心の在り方で形を変える。
もし誰かが恐怖や支配のために使えば……
神を超えた“人の暴君”が生まれるかもしれない」
リィナが焚き火の向こうから声をかけた。
「つまり、また一悶着あるってことか。
ま、退屈しなくていいな」
蓮は笑う。
「お前、そういうとこだけは本当に変わらないな」
「そっちこそ。
昔は最弱スキル持ちだったのに、
今じゃ世界のバランス握ってんだからな。出世したもんだ」
リィナの言葉に、エリスも微笑んだ。
「でも、私たちはまだ道の途中よ。
世界が完全に“人の手”で動くには、
この力を“共有”しなきゃいけない」
「共有……?」
蓮が聞き返す。
「そう。
創造者だけじゃなく、すべての人が“想う力”を得られるように。
それが、私たちの次の目的――“創造連盟(ジェネシス・リンク)”を作ること」
リィナが目を丸くした。
「創造連盟……また大きく出たな」
「夢は大きいほうがいいでしょ?」
エリスが笑う。
「私たちは、もう神の代わりじゃない。
世界の未来を“分け合う”時代を作るの」
蓮は少し考え、そして頷いた。
「いいな、それ。
“創造を分かち合う”――それが本当の自由だ」
⸻
夜更け。
宴が静まり、焚き火の炎だけが残った。
星が広がり、風が流れる。
エリスは空を見上げながら、ぽつりと呟いた。
「蓮……私、時々思うの。
あなたが“模倣者”として生まれたのは、
この時代のためだったんじゃないかって」
「かもな」
蓮が笑う。
「でも、もう俺は“模倣者”じゃない。
お前たちと同じ――“創る人間”だ」
彼は空を見上げる。
夜空の星々は、神々の記録ではなく、
人間の祈りが生み出した光で輝いていた。
「これが、俺たちの世界か……」
蓮はゆっくりと息を吐いた。
「神が支配した夜は終わった。
――これからは、人が空を照らす番だ」
エリスが彼の手を取る。
「ええ、私たちの時代の夜明けよ」
リィナが遠くから叫ぶ。
「おーい、イチャイチャしてんじゃねー! 働けー!」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
夜風が旗を揺らし、
その白布が月光を受けて柔らかく光る。
“アマギの旗”――それは、神に背いた模倣者の遺志であり、
人が自らの手で創った初めての希望だった。
⸻
そして――その夜、南方の大地。
赤い砂の上に、ひとりの男が立っていた。
その瞳は、かつての蓮と同じ金黒。
だが、その表情には“怒り”と“憎しみ”が宿っている。
「創造者……? 笑わせるな。
人間が神に代わるだと?
ならば俺は――“破壊者(デストロイヤー)”として、お前たちを試す」
男の背後で、砂が渦を巻く。
新しい時代の“対”となる存在――破壊の胎動。
その名は、カイレン。
かつて消えたはずの“灰蓮”が、新しい意思を持って蘇った。
夜明けの光が、再び世界を照らす。
だが、その光の影に、次なる闇が蠢いていた――。
0
あなたにおすすめの小説
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる