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第31話
しおりを挟む第31話 想界への扉
――アマギ本部、創造連盟中央塔。
大陸全土から選ばれた創造者たちが集まり、
会議ホールは光の網で満たされていた。
壁面には無数の記録映像が浮かび、
その中心に、エリスの姿があった。
「これが……“想界”の映像です」
エリスが手をかざすと、
空間に“形を持たない世界”が映し出される。
青と金の光が絡まり、雲のような意識体が蠢いていた。
そこには物質も時間も存在せず、
ただ“意志”と“想い”だけが存在している。
「第四階層――想界(イマジナリア)。
これは現実と夢の中間にある、意識の海です。
すべての人間の心が、根源的に繋がる場所」
会場が静まり返る。
リィナが腕を組み、口を開いた。
「つまり、全人類の“夢と記憶”が混ざってるってことか?」
「そう。
ここに潜れば、誰もが他者の記憶や感情に触れられる。
でも、制御を失えば――“自己”を失う危険もあるわ」
ゼオルが眉をひそめる。
「人が他人と心を混ぜるなど、神の領域だぞ」
「ええ。
だからこそ、私たちは慎重に“扉”を開く準備をする必要がある」
⸻
それから数日後。
創造連盟の上層区画――実験施設「ルクス・ノード」。
ここで、想界への接続実験が始まった。
巨大な円環装置が稼働し、光が空間を満たしていく。
中心に立つエリスの姿は、まるで光そのもののようだった。
「想界接続装置・試験起動――開始します!」
技師たちの声が飛び交う。
計器が振動し、空気が揺れる。
そして、エリスの体から金と紫の光が伸び、
空間の中央に“扉のような渦”が形成された。
その向こうには、色も形もない“意識の世界”。
それは無限の可能性を秘めた混沌だった。
「……ここが、“想界”」
エリスが一歩踏み出そうとした時――
警報が鳴った。
「警告! エネルギー値が上昇! 想界側から干渉波が!」
渦の奥から、声がした。
無数の声が重なり、やがて一つにまとまる。
――『創造者エリス……ようこそ、“想界”へ。』
その声は、人間でも神でもない。
まるで“世界そのもの”が語りかけてくるようだった。
「……誰?」
――『我々は“想念”。
あなたたちが生み、忘れた全ての想いの集合。
あなたの創造は、我々の夢の延長に過ぎない。』
エリスの表情が硬くなる。
「あなたたちは、人の無意識……。
でも、どうして今になって声を上げたの?」
――『お前たちが“扉”を開いたからだ。
今、夢と現実が一つになる。
お前たちはそれを“創造”と呼ぶが、
我々にとっては――“帰還”だ。』
リィナが制御室のマイクに叫ぶ。
「エリス! 戻れ! 向こうは敵意を持ってる!」
だが、エリスは動かなかった。
彼女の瞳は、静かに光っていた。
「……違う。これは恐れじゃない。
“呼ばれている”――そんな感じがする」
ゼオルの声が通信越しに響く。
「理屈ではないな……“意識の共鳴”か?」
「ううん、もっと深い。
まるで、私の中の“蓮”と“ルゼア”が反応してる……」
扉の向こうで光が波打つ。
そこから、白い手が伸びた。
人の形をしているが、肉体ではない。
“意識そのもの”が形を取っている。
――『来い、創造の継承者。
お前が創った“世界”の記憶を、見せてやろう。』
その声に導かれるように、エリスは一歩踏み出した。
⸻
視界が一瞬で変わる。
そこは――無数の世界が重なり合う空間だった。
過去の地球、異世界、神々の領域、人の夢。
全てが層となって螺旋を描き、中心へと収束している。
「これが……“想界の中枢”……」
――『ここに全ての創造の“始まり”がある。
お前の創った世界も、この流れの一部に過ぎぬ。』
「でも、私は現実を守るために創ってきた。
夢と混ざれば、現実は壊れる!」
――『現実はもともと“夢の形”だ。
お前たちが信じた瞬間に、夢は現実になる。
ならば、現実を守るとは何を意味する?』
その問いに、エリスは息を詰めた。
確かに――現実と夢の境界は、
自分たちが“信じること”でしか保たれていない。
「……つまり、“信じる現実”を創り続けること。
それこそが、私の創造の意味」
――『ならば、証明してみせよ。
想界における“人の意志”の力を。』
光が激しく揺れ、世界が形を変える。
巨大な空間が開き、
そこには“創造の塔”がそびえ立っていた。
塔の頂には、蓮とルゼアの二つの光が並んでいる。
それは、希望と恐怖――創造の両極。
エリスは拳を握り、前を見据えた。
「いいわ、見せてあげる。
私たち人間が“夢を現実に変える”力を――!」
光の翼が広がる。
想界の空が割れ、
“新たな創造時代”への扉が、今、開かれた。
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