スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第56話

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第56話 創造の子ら

 ――共鳴暦二十一年。

 世界は穏やかな繁栄の中にあった。
 祈りは完全に人の生活に溶け込み、争いも病もほとんど消えた。
 誰もが互いの想いを理解し、共に創る。

 だが、平穏の裏で、ゆっくりと――進化が始まっていた。



 アマギ医療総合研究院。

 白い部屋の中、赤ん坊の泣き声が響いた。
 その瞬間、周囲の空間がふっと光を放つ。
 母親の祈りと喜びが、文字通り“形”になって花びらのように舞った。

 医師は震える声で報告する。
「またです……。
 新生児から“自発共鳴波”が発生しました。
 外部刺激なしで……祈りを“出力”している!」

 ミラは静かに目を細める。
「やっぱり――始まったのね。
 “創造の子ら”の誕生が。」



 その報告を受け、共鳴塔にいたリュシスは深く息を吸い込んだ。

「……子どもたちが、生まれながらに“祈り”を使える。」

 ノアが端末を操作しながら頷く。
「しかも彼らの祈りは、従来の“共鳴波”と違う。
 祈りの周波数と創造素の流れが完全に一致してる。
 つまり、想い=創造なんだ。」

 リュシスは天井を見上げ、呟いた。
「“祈り”と“創造”が分離していたのは、
 人が“恐れ”を持っていたから。
 でも、この子たちは――もう、恐れていないんだ。」



 数か月後。

 アマギ北部・共鳴学園。
 子どもたちの笑い声が響く。

 校庭の中央で、一人の少女が手を広げた。
 すると、何もない空間に淡い光の花が咲く。

「ミリア、それすごい!」
「えへへ、だって“楽しい”って思ったら、勝手に出てきたんだもん。」

 リュシスとミラは遠くからその様子を見つめていた。

「……もう、彼らにとって“祈る”という行為は意識的じゃない。
 呼吸のように、自然に世界と繋がっている。」

 ミラは頷く。
「まるで、ハルが最初に願った“世界と一体の祈り”ね。」



 だが、その進化は一方で危うさも孕んでいた。

 リュシスは研究棟で子どもたちの共鳴値を観測しながら、
 小さく呟いた。

「……祈りと創造が完全に融合すると、“自己”の境界が薄くなる。
 個の意識が溶け合うほど、存在は強くも脆くもなる。」

 ノアがデータを見ながら頷く。
「確かに、彼らはすごい。
 でも同時に、“一人”という感覚が希薄だ。
 まるで常に、誰かの夢の中で生きているみたいだ。」

 リュシスは静かに目を閉じる。
「人類は“祈りを超える者”に進化したけど……
 それは、同時に“個の危機”の始まりでもあるのかもしれない。」



 夜。

 共鳴塔の上。
 リュシスは風に吹かれながら、ひとり空を見上げていた。
 そこには五つの星が瞬いている。
 ハル、エコー、リュミナ、ネオ――そして、淡く生まれた新星。

「……あの光も、彼らの祈りなのか。」

 ミラが隣に立ち、微笑んだ。
「そうね。
 “創造の子ら”の祈りが、宇宙へ届いてるのかもしれない。」

 リュシスは静かに呟く。
「先生……人類はどこまで行くんでしょう。」

 ミラは少し考えてから、ゆっくりと答えた。
「祈りを持つ限り、止まらない。
 でも、“祈る理由”を忘れた時――
 また、誰かが思い出させるの。
 ハルがそうしたように、あなたがそうしたように。」



 その夜、夢の中でリュシスは声を聞いた。

『……リュシス。
 君たちは、ついに“創造の子”を得たね。
 でも忘れないで。
 彼らは祈りを“使う”んじゃない。
 祈りに“生かされている”。』

 ハルの声だった。
 リュシスは微笑む。

「……ええ。あなたの願い、ちゃんと受け継がれています。」

『なら、これからは君たちの祈りだ。
 この世界を、どんな形にでも創れる。
 ――でも、願いは必ず“誰か”のために。』

 声が消え、世界が柔らかな光に包まれた。



 朝。

 アマギの空に、無数の光が舞い上がっていた。
 それは“創造の子ら”が放つ、純粋な祈りの粒子。
 大地は優しく脈動し、
 人々はその光に手を伸ばした。

 リュシスは塔の上で、微笑みながら呟く。
「これが……“祈りの未来”か。」

 ミラが隣で頷く。
「ええ。そして、彼らがこれからの“創造の証”。」

 空に光の帯が走り、
 その先で新しい星が生まれた。

 それはまるで――
 人類自身が、祈りの宇宙になったかのようだった。

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