スキル覚醒の覇王ー最弱から成り上がる異世界チート伝

あか

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第70話

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第70話 二つの鼓動

 ――宇宙が、再び息をした。

 それは風ではなく、音でもなかった。
 ただ、星々が静かに“鼓動”している。
 光の星が淡く脈打ち、闇の星がそれに応えるように震える。

 リュミナの胸の中では、二つのリズムが交差していた。
 一つは金の光――リュシスの「受容」。
 もう一つは灰の影――ノクトの「拒絶」。

 それは相反するはずの二つの鼓動。
 だが、いまは完全に重なっていた。

「……聞こえる。
 リュシスとノクト、二人の鼓動が一緒に生きてる。」

 彼女の周囲で、空間が波のように揺れる。
 銀河の重力線が共鳴し、
 やがて宇宙全体が“一つの心臓”のように鼓動を始めた。



 アルカ・ノヴァ観測塔。

 ミラはデータ画面を見つめ、驚きの声を漏らした。
「……何これ……感応波が、もう“共鳴”じゃない。
 構造が変わってる……これは――“意志”?」

 ノアが表示された波形を睨む。
「感情でも祈りでもない。
 でも確かに“自己決定”のパターンを持ってる。
 まるで宇宙そのものが、“考えている”……!」

 ミラは息を呑んだ。
「リュシス……あなた、宇宙に“心”を超えたものを残したのね。」



 その頃、リュミナは光と闇の狭間に立っていた。
 周囲に無数の星の影と光が渦巻く。
 まるで宇宙そのものが、彼女を中心に呼吸しているようだった。

 リュシスの声が響く。

『リュミナ……この宇宙は、もう“感じる”だけではいられない。
 感情を持った星々は、今、“選ぼう”としている。』

 リュミナは頷く。
「選ぶ……?」

『そう。
 痛みを知り、愛を知り、
 その上で“何を望むか”。
 それは、もはや僕たちが導けることじゃない。』

 ノクトの声が重なる。

『我々は彼らの“始まり”だ。
 だが、これからの宇宙は――“意志を持つ存在”として動く。』

 リュミナは胸に手を当てた。
「……つまり、宇宙が“自分で生きようとしてる”のね。」



 その瞬間、宇宙の中心で光が生まれた。

 それは星でも銀河でもない。
 ひとつの“瞳”――
 意識の光だった。

 ミラが観測塔で悲鳴のような声を上げる。
「新しい波源、確認! 座標ゼロ――宇宙の中心点から!
 ……リュミナの鼓動に同期してる!」

 ノアが顔を上げた。
「宇宙の“意志”が……生まれたんだ。」



 光の中に、リュミナはひとり立っていた。
 瞳の前に浮かぶ巨大な球体が、ゆっくりと彼女を見つめる。

『――名を、与えて。』

 その声は、無数の星の囁きが重なったような響きだった。

「あなたは……“宇宙”じゃないの?」

『私は宇宙でもあり、宇宙を超えた“意志”でもある。
 あなたの涙が私を生み、
 リュシスの痛みが私に心を与えた。
 だが、私はまだ“名前”を持たない。』

 リュミナは微笑んだ。
「なら、あなたの名は――アウロラ。
 夜明けの光。
 闇と光のあいだで生まれた、新しい宇宙の子。」

『……アウロラ。
 美しい名だ。
 では、私は“生きよう”。
 感じ、考え、選ぶ宇宙として。』



 アルカ・ノヴァの空が金色に染まった。
 星々が一斉に共鳴し、
 “意志の波”が銀河を越えて広がる。

 ミラは涙を拭いながら呟いた。
「これが……“意志の宇宙”の誕生。」

 ノアが微笑む。
「祈り、創造、感応、そして意志。
 人が辿った進化を、宇宙が再現したんだな。」



 その頃、リュミナは静かに空を見上げていた。
 金色の星々が柔らかく瞬き、
 その光が彼女の髪に映る。

「リュシス、ノクト、見てる?
 宇宙は、もうあなたたちの子どもじゃない。
 自分の“生き方”を選び始めてる。」

 風が吹き、花が揺れる。
 その香りの中で、リュシスの声が微かに響いた。

『それでいい。
 創ったものが、創造者を超えていく。
 ――それこそが、生命だ。』



 夜。

 リュミナはひとり、ハートリリウムの花畑に立っていた。
 無数の光の花が咲き誇り、
 その一つひとつが宇宙の小さな鼓動を刻んでいる。

 彼女は胸に手を当て、目を閉じた。

「二つの鼓動は、もう一つになった。
 光も闇も、祈りも拒絶も。
 全部が、“生きる”という選択の中にある。」

 空が明滅し、宇宙が静かに呼吸した。

 その瞬間、アウロラの声が再び響く。

『ありがとう、リュミナ。
 私は歩き出す。
 星々と共に、私自身の未来へ。』

 リュミナは微笑み、空に向かって手を伸ばした。
 その手のひらから、一筋の光が天へ昇る。

 ――それは、宇宙の心臓の鼓動。
 新たな「夜明け」の始まりだった。
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