悪役令嬢の名誉を挽回いたします!

みすずメイリン

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第12話、初めての領地争い

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 レオンハルトに家まで送ってもらった後、レオンハルトは再びお父様にひざまづき、「どうか、私めのご無礼をお許しください、リヒテンベルク伯爵」と謝っていた。
 レオンハルトは引き続き「リリアンナ様は、エルフの聖域をリヒテンベルク伯爵の領地をしたいものだと考えておりますが、ロザリント公爵も同じことを考えております。遠くからしか見ておりませんからこれは私の予測なのですが、リリアンナ様は自らエルフ族の青年との信頼関係を結んでいるようでした。エルフ族は我々人間に警戒心を抱いております。私がいえる立場ではございませんが、リヒテンベルク伯爵様、動けるうちに動いてください。そして、リリアンナ様の行いを褒めていただきたいと思っています。それでは、大変なご無礼を失礼いたしました」とお父様に告げて馬に乗って去っていった。
 お父様はものすごく怖い顔をしていたけれど、冷静で淡々と私に事情を聞き始めた。
 「お、お父様……」
「さて、ロザリント公爵家にどう喧嘩を売ったのかね?」
 私は涙を流しながら「私はそんなことをしておりませんっ!」と自己弁護をした。
 お父様は頭を抱えて「じゃあ何故、お前がエルフ族と関わっているんだ? ロザリント公爵家が領地としようとしているが、我々はロザリント公爵家より身分が低い伯爵家なんだぞ。我々がエルフの聖域をリヒテンベルク伯爵家の領地にできるわけなかろう」と悔しそうにいった。
 それでも私はお父様への自己弁護はやめなかった。
「私はルイーゼと違って、エルフ族のヴァルデマールさんから信頼関係を築いています。それにエルフ族の意思を尊重したいと思い、エルフの聖域を我がリヒテンベルク伯爵家の領地として守りたいのです。それにそのことについてはヴァルデマールさんが証人としていますし、ハインリヒ王子にも間に入ってもらおうかと思っています」
 お父様は私の自己弁護を呆れたように聞いていた。そしてお父様は小さな声で悲しげに「またルイーゼ・ツー・ロザリント公爵令嬢に陥れられなければ良いが……」と嘆いていた。
 私は負けじと「それならば、ハインリヒ王子に決めてもらえばよろしいのではないのでしょうか? ハインリヒ王子なら公平に判断してくださると思いますし」とお父様に自己主張したけれども、お父様はすっかり気を落としてしまった。

 夕方になり使用人たちが作った夜ご飯も食べて、夜ご飯を食べ終わった後は自室に行って自室にあるお風呂に、今日来ていたディアンドルを脱いで入った。
 まずはシャワーを浴びて身をキレイにしてそれから、湯船に浸かってヴァルデマールさんのことを考えていた。
 まず証人として人間嫌いのヴァルデマールさんを王宮に呼び出すのは酷いと思うんだけれど、そうしなければルイーゼにエルフの聖域を取られてしまう。
 正直、エルフたちの意見が尊重されるならば、エルフの聖域の領地化はルイーゼに譲っても良いと思っている。けれど、私にはルイーゼがエルフたちの意見を尊重しているとは正直、思えない。
 明日またディアンドルに着替えて、ヴァルデマールさんに会いに行ってルイーゼのエルフの聖域の話をしようかと思い立った。

 お風呂から上がった私は、使用人に今日着ていたディアンドルを洗うように指示をして、明日はミント色のディアンドルを着ることに決めた。
 そしてバスローブからパジャマに着替えて、私はベッドの中に入り目を閉じてエルフの聖域がエルフの意思を尊重して守られますように。そしてヴァルデマールさんの人間不信が克服できますようにと祈りながら、目を閉じた。



 翌日の朝、なんだか胸騒ぎがして起きてしまった。
 学校なんかに行かずにヴァルデマールさんのいるところへ行こうかと思ったけれども、これ以上リヒテンベルク家の名誉を傷つけることはできまいと我慢をして、学校に行くことにした。

 グリュックシュロス高等学園に着くと、さっそくリラもフレイヤもいない状態でルイーゼが私に話しかけてきた。
 「おはよう、リリアンナ。勇者のジークフリートから聞いたんだけど、あなた、最近エルフ族の人と話しているって聞いたわ。私も最近、エルフの聖域を自分のところの領地にしようとして、エルフ族の人たちが住みやすいようにしたいなぁと思っているの」だとルイーゼは笑顔でエルフ族やエルフの文化に興味があるような素ぶりをしていたけれど、ルイーゼの目は笑っていなかったし輝いてもいなかった。
 そして直感的に私はルイーゼがやろうとしていることに気づいた。あのレオンハルトがいっていた話は本当で、ルイーゼは私に宣戦布告を遠回しに突きつけているのだと思いつつ、私はなるべくスルーすることをその場では気をつけることにした。
 私はルイーゼに「や、やめといた方が良いんじゃない? エルフは気難しい人達ばかりだし、人間不信のエルフだっているし、それに人間とエルフのハーフ、つまりハーフエルフと呼ばれている人達も迫害されているし、簡単に解決できる問題じゃないよ」と少し弱気になっていってみた。
 それでもルイーゼは食い下がらずに「大丈夫よっ! エルフ族の人達だってわかってくれるわよ。それにハーフエルフの迫害については、私が領地化した後に取り組めれば良い話だし」とエルフの聖域をもうロザリント公爵家が領地化した前提で話を進めていた。
 そして、リラとフレイヤが校舎の中へ入ってくると、ルイーゼは私に別れの挨拶をして、いつもの三人で仲良く教室の中に入った。
 ジークフリートも遅刻ギリギリで校舎の中に入ってきたけれども、私はジークフリートに問いただしたいことがあって急いでいるジークフリートに声をかけた。
 「ねえ、ジークフリート」
「なんだよ、リリアンナ嬢。俺いま急いでんだよ」
「急いでいるところ悪いんだけど、ルイーゼに私がエルフの人と話していたことをいったでしょ?」
「あぁ。聞かれたから答えただけだよ。それが何か問題でもあるのか?」とジークフリートは不思議そうにしていたけれど、ジークフリートは平民なのでわかりっこないかと思い、ジークフリートを責めるのをやめた。
 「まぁ、一応。でも多分、大丈夫だよ」とだけ伝えた。本当は大丈夫かどうかわからないけれど。
 ジークフリートへの質問をやめて私も急いで自分の教室の中に入った。

 朝礼が始まって午前の授業も始まり、お昼休みも過ぎて午後の授業も終わりやっと終礼も終わった。
 これだけの説明だとまるで時間が早く過ぎ去ったように思えるけど、実際はそんなことはなかった。
 だって、私はヴァルデマールさんのこととルイーゼのエルフの聖域の領地化で不安で不安で仕方なかったからだ。
だから、時間の進みがかなり遅く感じてしまった。
 終礼後、私は急いで校舎に出て走って家に帰って、ミント色のディアンドルに着替えて、早くヴァルデマールさんのところへとお父様とお母様の怒号を聞き捨てながら、走って向かった。

 王宮の庭の向こう側の川のほとりに見覚えのあるエルフの男性がいた。
 ヴァルデマールさんだっ! と思い、私は急いで彼の元へ駆け寄った。そして、大声でヴァルデマールさんに話しかけた。
 「ヴァルデマールさんっ!」
「どうした? リリアンナ。声が大きいぞ」
「実は、私を親友か友達だと思わせて裏切った公爵令嬢が、エルフの聖域を私物化しようと企んでいます」とヴァルデマールさんに伝えたら、ヴァルデマールさんは「またか、人間。愚かな生き物よ。しかもリリアンナを裏切った人間が神聖なるエルフ族が住んでいる場所を領地化したいとな。それはそれで、その人間のご尊顔を拝見したいものだな」と鼻で笑った。
 その時だった。ルイーゼは騎士たちを連れて、ヴァルデマールさんと私の目の前にあらわれた。
 ルイーゼとその騎士たちの中に紛れ込んでいたレオンハルトは私のディアンドルを着ている姿をみて驚き、ルイーゼは「リリアンナ、よくも貴族らしくもない格好をできたものね」と私を叱るようにいっていたけれど、彼女の瞳の奥は嘲笑に塗れていた。
 ヴァルデマールさんは明らかに機嫌がわるくなり「人間風情が我々の聖域を私物化できるかと思っていたら、大間違いだぞっ!」と大声で張り上げたようにいうと、ヴァルデマールさんはどこからか魔法で弓矢を持ち出し、騎士かルイーゼに攻撃しようとしたけれども、ルイーゼは「まずは落ち着いて話を聞いてください。エルフ族の人」と少し大きめな声でいった。
 ルイーゼは、エルフの聖地のロザリント公爵家の領地化を「エルフ族のため」や「人間とエルフとハーフエルフの共存のため」という大義名分を散々重ねていたけれど、ヴァルデマールさんは、意外な条件を出してきた。
 ヴァルデマールさんは「貴様の領地としてではなく、リリアンナの領地としてなら、問題はない」というとルイーゼは、落ち着きながらも少し憤りを見せながら「いいえ、エルフの聖域は我々ロザリント公爵家の領地になることがよろしいかと存じます」と主張をしたら、その場にいた騎士のレオンハルトが「それならば、ハインリヒ王子の判断に委ねましょう。ルイーゼ様。そしてエルフ族の方。今すぐ王宮へ行こうではありませんか」というと、ヴァルデマールさんはかなり嫌がりつつも「つまり、王子様に認められれば良いんだな」といって、ルイーゼとレオンハルトを含めた騎士たちと私は、ハインリヒ王子へいる王宮へと向かった。

 幸運ながらハインリヒ王子は王宮にいたので、ルイーゼと私のエルフの聖域による領地化の争いの経緯についてスムーズにレオンハルトがしてくれた。
 そしてヴァルデマールさんは、私の証人としてついてきてくれた。
 ハインリヒ王子は私のディアンドル姿を見て驚きつつも、真摯にヴァルデマールさんの意見を傾聴しようとした。
 ヴァルデマールさんは、ハインリヒ王子の聡明な出立に若干驚きつつも自分の意見をいった。
 「あの日、ホタルの光の中にいた人間のリリアンナさんと知り合って以来、もしまたエルフの聖域は人間の領地となれば、是非ともリリアンナさんの領地にしていただきたいと思っています。それにリリアンナさんはまだ15歳の貴族の令嬢ですが、私は以前の人間が領地化したエルフの聖域のことを話しており、私はリリアンナさんのエルフやハーフエルフへの尊重をする善性を信じております」
 それを聞いたハインリヒ王子は申し訳なさそうに「以前の貴族の者が行ったあなた方エルフ族への暴虐な振る舞いに申し訳ないと王族としても申し上げたい。ですのであなたの意見を尊重し、エルフの聖域を領地にするのはリリアンナ・フォン・リヒテンベルク伯爵令嬢に任せたいと思っています」といった。私はものすごく嬉しかったのだけれど、問題はルイーゼだった。
 ルイーゼは大きな声で「何故ですか?! ハインリヒ王子! それはリヒテンベルク伯爵令嬢と親しみから来る贔屓じゃございませんこと?! それに私めの方が貴族としての地位は高いですよね?!」と主張したけれど、ハインリヒ王子は「そう受け取られても仕方がないと思っている。だが、公的な場として私は私なりにエルフ族の意見を傾聴し尊重して、『信頼』という材料で判断をしたまでだ」と言い返した。
 ルイーゼは悔しそうに「そうでございますか。『信頼関係』が大事なのであれば、それは地位は関係はございませんものね」といってルイーゼは王宮から出て行き、その跡をレオンハルトが追った。

 数人の騎士たちは残っていたけれども、その場に残ったのはヴァルデマールさんと私とハインリヒ王子だった。
 ハインリヒ王子は「よくやったな、リリアンナ。ディアンドルも似合っているじゃないか」と褒めてくれた。
 ヴァルデマールさんは、そんなハインリヒ王子を少し睨んで「ハインリヒ王子、私めの意見を尊重してくださり、ありがとうございます。この恩は一生忘れません」と頭を下げた。
 「こちらこそ、以前の貴族があなた方の聖域をめちゃくちゃにしてしまい、申し訳なかった。それにリリアンナなら大丈夫ですよ」と私は、ハインリヒ王子からお墨付きをもらった。
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