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第二部 第2章
383.対立の真相
しおりを挟む枢機卿猊下とエンプティが関わりがあるのは事実で、それはテオ様とクレオ大司教も突き止めていましたわ。ですが、枢機卿猊下はエンプティをお子様の行方を探す為に、情報屋のような形で利用し、エンプティもまた、その見返りとして、教会を拠点としていた、と……。
ノアとフロちゃんの誘拐に関しては、枢機卿猊下が指示し、ぺーちゃんの誘拐と、ドニーズさんを暗殺しようとしていたのは別の誰か……。
ぺーちゃんはノアと一緒に誘拐されていたから、エンプティが関わっているのは確かですけれど、黒幕が枢機卿猊下でないなら、第三者がちょっかいをかけてきている事になりますわ。
しかも、教皇の誘拐と聖女の父親の暗殺未遂。
すっごくきな臭くなってきましたわ。
「枢機卿猊下、フロちゃんが聖女だと知っているのは、猊下とルネさんの他にいますの?」
「いえ。私はルネにしか話していません。ルネも他に漏らす事はないでしょうし」
わたくしの問いに、枢機卿猊下はルネさんを見る。ルネさんも頷いて、「誰にも話していません」と断言した。
「……ですが、馬車や御者はエンプティの者たちに用意させましたので、何か勘づいている可能性はあります。彼らは情報収集に長け、特異魔法を使用出来る者も多く居ますから……」
枢機卿猊下はそう言って、神妙な表情で手の中にある石を握り締める。
特異魔法はある意味個人のスキルに近いですものね。どんな能力があるのか、よくわかっておりませんから、盗聴のようなスキルだったり、透視だったり、そのような魔法を使える者がいるとしたら、フロちゃんが聖女だという事がエンプティ側に知られたかもしれないという事ですわ……。
隣にいるテオ様の様子をうかがうと、眉間にシワを寄せて考え込んでいた。
「……そういえば、ルネさんは身のこなしが訓練を積んだ方のようにお見受けいたしますが、エンプティに所属されている、というわけではございませんのよね?」
「私はディオネ家の親戚筋である、家の生まれです。武人を多く輩出してきた家系ですので、女性であっても訓練は積みますし、ディオネ家を守り戦う役割もありますので」
ウィーヌス様の部下として働きだしてからは、変装が得意な事もあり、諜報活動が主でしたが……、と申し訳なさそうにわたくしを見るので、どうしたのか伺いましたの。
すると、偽の前妻様に変装していたのは自分だと言うではありませんの!
「あの、テオ様に一切興味なさそうな目をしていた、前妻様を演じていたのは、ルネさんでしたの!?」
「あはは……、見た目は上手く変装出来たと思っていたのですが、やはり夫人にはバレていましたよね……」
さすがに、この麗しいテオ様に、全く熱のこもっていない視線を向ける人は、稀ですもの。
まぁ、ルネさんだと考えると、確かにテオ様に熱のこもった視線は向けませんわよね。愛する人が他にいますものね。
引きつったような表情で、力なく笑うルネさんに、あれは何のパフォーマンスでしたの? と問えば、詳しい説明もされず、前妻様のふりをするよう、エンプティ側から依頼があったのだとか。
「そうした依頼は、エンプティ側からよくありますの?」
「ありません。犯罪に加担する事は、ウィーヌス様からも禁じられておりましたから。あの依頼も、公子様の件で協力してもらう代わりに受けたのであって、彼らに協力する事はあれが初めてでした」
初めて……、もしかして、枢機卿猊下はルネさんをエンプティに近づけたくなかったのかしら。
「ディバイン公爵夫人、ルネはただ、私とポレットを守っていてくれただけで、犯罪集団とは関わっていません」
嘘は吐いていないようですわね。妖精たちも何も言いませんし、彼らの目は澄んでいますもの。
「腑に落ちない点がもう一つあるのですが、伺ってもよろしくて?」
「何でしょう?」
「ポレットさんとお子さんを救い出そうとしていたのにもかかわらず、あなたが教皇派を陥れ、枢機卿としての地位を盤石にしようとしていたのはどうしてですの? わたくしには、あなたが権力に溺れるような方には見えませんが」
幼いぺーちゃんの政敵として対立していた事は、どうも腑に落ちませんのよね。
「私が教会のトップでなければ、エンプティとの取引が出来なかったからです」
「それでも、幼い教皇を失脚させようとするなんて、違和感がありますわ」
自分の子供と同じくらいの年の子供に、そんな仕打ちをするような方には見えませんわ。
「……奴らは犯罪集団です。人を殺める事に何の抵抗もない。もし、教皇の存在が世間に知れ渡ってしまえば、簡単に殺されてしまう。だから、その前に失脚させ追い出してしまえば、命は助かります」
ぺーちゃんの命を救う為に、対立したのですわね。
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~ お知らせ ~
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皆様の応援のお陰で、ここまで続ける事が出来ております。
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誠に勝手ながら、新章の書き溜めの為に、『5/1~5/4』まで、更新をお休みさせていただきます。
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より楽しい【継母の心得】をお届けできるよう、精進して参ります。
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