継母の心得

トール

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第二部 第2章

384.思い込みは目を曇らせる 〜 ぺーちゃん視点/イザベル視点 〜

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ぺーちゃん視点


枢機卿は、前世で私に毒を盛ったはずなのに、私を助けようとしていた……? 冷たい目をして、話しかけてもいつも無視するような、あの枢機卿が?

だけど、私が死んだ時を思い出してみると、枢機卿はそばにいなかった。てっきり枢機卿の手の者が毒を盛ったのだと思い込んでいたが、もしかして、私の勘違いだったのだろうか?

クレオの顔を見上げると、クレオは眉尻を下げて私を見たのだ。

爺ちゃんには枢機卿に殺されたんだって説明していたから、戸惑っているのだろう。

「フェリクスや、聞いていた話と違うようですなぁ」
「ぁう……」

お母さんの時も、私の思い込みで大変な事になったからか、クレオは呆れ顔だ。でも、でも、前世ではお母さんも枢機卿も、怖かったんだ! 本当だからな!

「ぅきょ、っちぇ、ちゃー!」
「今世はちょっと違うと言いたいのですかな? しかしそうなると、前世の枢機卿も、もしかしたらわざとフェリクスを遠ざけていたのかもしれませぬぞ。毒を盛った所も見てはおらぬのでしょう?」
「にゃ……」
「フェリクスや、もちろん前世の事ですから、本当のところはわかりませぬがな、思い込みは人の目を曇らす最たるものですぞ。間違いやもしれぬと気付いたのであれば、遅くはない。その人の人となりをしっかり見極めるのです」
「ぅりぇお……」

クレオはそう言って、よしよしと頭を撫でてくれるのだ。その温かく優しい、しわしわの手が、私は一番好きだ。

「にゃ!」
「ほほっ、フェリクスは良い子ですなぁ」
「ぁーい」

その様子を、じっと枢機卿が見ていた事に、私は気付いていなかった。



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イザベル視点


「──けれど、枢機卿猊下のお父様がはなぜ、猊下に何も言わずに、生まれたばかりのお子様を勝手に連れて行くような真似をされたのでしょうか」

猊下は性別に関して全く疑っていないようでしたし、ポレットさんの出産の事で実家を頼っていたという事は、親子関係は悪くなかったように思えますのよね。

「その、言い方は悪いかもしれませんが、お父様はそのような事を勝手にされる方でしたの?」

わたくしの問いに枢機卿猊下は、首を横に振ると言ったのだ。

「確かに私とポレットの結婚は反対され、口論こそありましたが、父は優しい人でした。筋肉の付きにくい体質の私は、家族から浮いてはいましたが、両親は気を使ってくれていたのです。特に父は、一族から敬遠される私を家から追い出す事もなく、守ってくれていました」

話を聞けば聞くほど、息子の子供を勝手に養子に出し、さらに性別も嘘を吐くような人ではなさそうなのですけれど。

「ですから、娘……いえ、子供を勝手に連れ出し養子に、という事も信じられませんでしたし、まさか性別も……」

枢機卿猊下は考え込むように俯いてしまった。

「もしかしたら、お父様には何か理由があったのかもしれませんわ」
「それが、母にも理由を尋ねた事はあるのですが、母自体も寝耳に水だと驚いていて……それから暫くして、父は何も語ることなく、亡くなりました」

自分の妻にも何も語らずじまい、でしたのね……。そうですわ、

「……あの、猊下のお父様の親友は、確かポレットさんのお父様ですわよね」
「そうですが、それがなに……っ、そういえば、ナイトレイ子爵とは話をしていなかった……」

もしかしたら、親友には何か話しているかもしれませんわね。だって、その親友も、養子に出された子供からすれば、れっきとしたおじい様なのですもの。

その後、とりあえず皇宮に戻ったわたくしたちだったが、数日後、教会へと呼び出されたのだ。
ぺーちゃんを連れて来て欲しい、との伝言付きで───



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いつも【継母の心得】をお読みいただきありがとうございます。

お待たせいたしました!
本日より、毎日更新再開いたしますので、何卒宜しくお願いいたします。

もう少しだけ、枢機卿編が続き、その後はいよいよ新章突入です!
楽しんでいただけますと幸いです。

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