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第二部 第3章
400.憂鬱なパーティー
しおりを挟む「他国の外交官を招いてのパーティーだから、絶対シモンズ伯爵とオリヴァー君は色々質問や勧誘があると思うわ」
秘密の会合の後、皇帝ご夫妻は晩餐にも参加してくださり、二日後に控えたパーティーについて話してくれた。
「勧誘ですか……」
お父様は戸惑って、テオ様をチラチラと見るので、さすがの氷の大公も、いつもより雰囲気が優しい気がする。
「後は、縁談かしら」
オリヴァーはまだ婚約者が決まっておりませんものね。と弟を見ると皇后様が、
「イザベル様、以前にも言ったと思うけど、あなたのお父様もかなりの優良物件なのよ。後妻に、と娘をあてがう家はかなり多いと思うわ」
お父様はその言葉を聞いて、眉尻を下げる。
「こんなうだつの上がらない男の後妻だなんて、候補にあげられた娘さんがかわいそうだよね。それに、私の妻は一人だけだから。イザベルもオリヴァーもそんな顔をして見ないでもらえるかな?」
お父様はお母様一筋だから、再婚する気はないようですけれど、皇后様が仰るように、縁談話は多そうですわね。
「今からパーティーに出席するのが億劫です……」
「まぁっ、オリヴァーったらそんな事言って」
弟がわたくしにだけ聞こえるように、コソッと囁く。
「だって僕は、パーティーなんてお姉様みたいに慣れていないんですよ」
「わたくしだってパーティーは慣れておりませんわよ!?」
そんな、人をパリピみたいに言われましても……。わたくし、一年前はドレスすら用意出来ないからお断りしていましたもの。
「それよりオリヴァー、あなたパーティーの準備は出来ていますの?」
「問題ありません」
「服もお父様とあなたの分、きちんと新調しましたの?」
毛玉の取りすぎで、変なテカリが出ている服で行くのだけは止めなさいね。
「もちろんです。でないと、皇室主催のパーティーに出席出来ませんから」
わたくしも初めて皇室主催のパーティーに出席する際に、ドレスを一着仕立ててもらおうとしていたら、ウォルトからダメ出しされましたのよね。「ディバイン公爵夫人ともあろう方が、一着だけしか仕立てないのは言語道断です」って。
でもパーティー用のドレスなんてそんなに作っても使わないじゃない。勿体無いわ、って思っていたのだけれど、公爵家の夫人って、想像以上にパーティーにお呼ばれしますの。しかも同じドレスはダメだと言われて、結構な数を作りましたのよ。
色やら形やら、流行のデザインやら、色々決めていくのがそれはもう、大変でしたわ……。
「お姉様は今回出席しないのでしたよね」
「ええ。貴族社会では、妊婦はあまり人前に出てはダメなのですって」
「パーティーはストレスか溜まる場所ですから、出席を控えるのは正解だと思いますよ」
今でも、「元貧乏人の成金が」と嘲笑する輩もいますし。と溜め息を吐くオリヴァーは、それなりに苦労しているらしい。
「わたくしも、何故かよく絡まれますのよね……」
以前も嫌味を言ってきた相手がいて、テオ様が撃退しましたのよ。などと話していると、
「そうか! お義兄様のそばにいれば、面倒な事もなさそうです」
と言い出した弟に、ハハ……と乾いた笑いが出てしまいましたわ。
「でも、お姉様がいないと、お義兄様の周りに女性が集まってきそうですね」
「あら、大丈夫ですわよ。氷の大公であるテオ様に近づける女性など、皇后様しかおりませんもの。皆遠巻きで眺めるだけですわ」
何より、テオ様が吐き気をもよおすほどの女性嫌いですのよね……。
「お姉様、余裕ですね。さすがディバイン公爵夫人です」
弟の言葉なオホホッと笑いながら、浮気の心配などない旦那様に嫁げて幸せですわ。と、幸せを実感していたのだった。
「イザベル様、安心して。アタシたちテオ様ファンクラブが絶対に近づけさせないから!」
皇后様……、さすがファンクラブ会長ですわ。
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