継母の心得

トール

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第二部 第3章

401.お兄様の心得

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「おかぁさま、きょお、アスでんか、おとまりね!」
「そうね。夕方からおじい様もオリヴァーも、テオ様も皇城でパーティーですし、帰ってくるのは深夜でしょうから、ノアとぺーちゃんとイーニアス殿下とわたくしの四人ですわね」

そう、パーティーの当日、皇帝陛下と皇后様からイーニアス殿下を預かってほしいとお願いされ、お泊まりする事になったのだ。もちろん内密で、イーニアス殿下ご自身が転移で来られる予定なのだ。

「きょお、みーんなで、いっちょ、ねんねしゅる!」
「そうね。皆で一緒にねんねしましょう」

アス殿下が泊まりに来る事が相当楽しみらしいノアは、朝から何度もこの話をしている。ワクワクが止まらないようだ。

「ノア、私はまだここにいるぞ。ベルを独り占め……いや、子供たちで独占する話など、私の前でするべきではない」
「おとぅさま、いって、らっちゃい」
「!?」

あらあら、二人共喧嘩しないの。

「テオ様、そろそろ支度をしませんと、ね?」
「ベル……」

テオ様は渋々リビングを出て行ったが、何故かお父様とオリヴァーはぺーちゃんと楽しそうに遊んでいるではないか。
ぺーちゃんの楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてくる。

「ちょっと、お父様にオリヴァー? テオ様は支度に向かいましたのに、二人は何をしておりますの! もう15時ですのよ!?」
「イザベル、閣下は公爵家だから支度も大変だと思うけどね、ウチは貧乏伯爵家だよ? 支度なんてあっという間に終わるじゃないか」
「そうですよ。お姉様」

しっかり貧乏が染み付いておりますわ!

「旦那様、坊ちゃま、シモンズ伯爵家はもう貧乏ではありませんよ。それどころか、帝国一、二を争うお金持ちです」

サリーの冷静なツッコミに、二人とも首を傾げているけれど、その後ろで公爵家のメイドたちが「お手伝いいたします!」と腕まくりしていますわよ。あ、取り囲まれましたわ。

「にゃ……?」
「ちょ、何ですか!?」
「え、何だい!?」

あっという間に公爵家の使用人たちが連れて行ってしまった。

「じ、ちゃ……にゃい……」
「あらあら、ぺーちゃん泣かないで。わたくしとノアと一緒に折り紙しましょう?」

お父様とオリヴァーが連れ去られ……ゴホンッ、支度をしに行ったので、置き去りにされたぺーちゃんがぐずりだしましたの。

お膝の上に乗せて、さっきまで頑張って折っていた紙を、ぺーちゃんの手に渡してあげると、ノアがそばに来てにっこり笑うのだ。

「わたち、ぺーちゃんに、あかいとりさん、おってあげりゅのよ」
「にょあ……っ、ぁーい!」

片手を上げてお返事をした後、涙で濡れたおめめを擦ってから、折り紙を折り始めるぺーちゃんは、どうやらご機嫌が直ったようだ。

「ふふっ、ノアは優しいお兄様ですわね」
「はい! おにぃさまね、おとーとに、やさちぃ、しないといけないの」
「まぁ、それはもしかして、イーニアス殿下から教えてもらったのかしら?」
「しょうよ! おにぃさまの、こりょりょ……こっこりょ……? え、よ!」

こりょ? ああ、心得の事ですわね。

「お兄様の心得を教えてもらいましたのね」
「はい!」
「それは良い事を教えてもらえましわね」

ノアは本当に、イーニアス殿下の事が大好きですのね。それに、イーニアス殿下はいつも手本になるようにノアに接してくださるから、ノアの素敵なお兄様ですわ。今日お越しになったら、改めてお礼を言わなくてはいけませんわね。

「おかぁさま、あかいとりさん、ちゅくりゅの、いっちょ、ちてください」
「もちろんですわ。ノア」

立派なあかいとりさんを折って、ぺーちゃんとイーニアス殿下に見せてあげましょうね。

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