継母の心得

トール

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第二部 第3章

424.無言の圧 〜 ネロウディアス皇帝視点 〜

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ネロウディアス皇帝視点


「ふおぉぉぉ!! 地下迷宮はこのようになっているのか!! 思ったよりも広いのだな! あー、あー、声が響くのだ! ぬ!? これがソロモンの言っていた『ヒカリゴケ』か!!」
「ちちうえ、はなれないでください」
「ネロおじさま、あぶないのよ」
「うるさい」
「う、うむ。すまぬのだ」

地下迷宮など来たことがないからな。ワクワクするのだぞ。しかし、皇城の朕の執務室の棚の裏に、隠し扉があるとは、ロマンなのだ。
ただ、地下迷宮に降りる階段に手すりが無かったり、壁によく見ると虫が這っていたりしたのが、朕としてはかなり嫌だったのだ。
手すりがない階段を下るのも怖い。だから壁に手をやってバランスを取っていると虫がいる。驚いて叫ぶと……公爵が無表情の上、無言の圧をかけてきて怖かったのだ。

しかし、階段下に広がる地下迷宮は思ったよりずっと広い! ソロモンが話してくれた『ヒカリゴケ』想像より明るいのだな!

「ネロおじさま、たのちーって、いりょんなとこ、いくの。めっ、よ。あぶないの」
「う、うむ。ノアよ、すまぬな。つい……」

公爵よ、だから無言の圧力はやめるのだ。

「……うぬ? ここは行き止まりなのだぞ?」

暫く妖精の案内通りに歩くと、どう見ても行き止まりの場所に出る。どういう事だろうか。

「きらきらのいち、まりょくこめりゅのよ」
「うむ。ちちうえ、このいしに、まりょくをこめると、てんいできるのです」
「なんと!! 転移で焔神殿まで行くのか!」

子供たちが教えてくれた事に、ふと思う。朕の少ない魔力でも、転移出来るのか、と。

「イーニアス、朕が魔力を込めてみても良いだろうか?」
「はい」

朕の可愛いイーニアスが、ニコニコと頷いてくれたその時、朕の後ろを通って、公爵が石に手をあてたではないか!

「公爵! 朕が……っ」

なんという事だろうか。その瞬間、朕たちは別の場所へと転移していたのだ。

「公爵っ、ズルいのだぞ!? 朕が魔力を込めようとしていたのに!」
「? 誰も魔力を込めようとしないから、私がやったまでだが」
「うぬーっ、この……っ、せっかちさんめ!」

何を言っているのかわからない、という引いた顔をしないでほしいのだ。

「ちちうえ、あれが、たまねぎのしんでんです」

イーニアスが嬉しそうに、朕の手を引き、玉ねぎの屋根を指差した。イーニアスの小さな手が、以前よりも成長している気がして、ちょっと泣きそうになる。

「珍しい造りなのだ……。屋根の玉ねぎもそうだが、外国の建築だろうか。このような建物、朕は初めて見たのだ」
「がいこくには、みたこともないたてものが、たくさん、あるのでしょうか」
「うむ。きっと色んな建築物があるのだ」

朕の話にほっぺたを紅潮させて目を輝かす息子は、何よりも尊い。

『アカ、しってるー!』
『アオも、がいこく、みたー!!』

おおっ、妖精たちは外国に行った事があるらしい。

「アカもアオも、がいこくに、いったことがあるのか。わたしも、いつかいきたいものだ」

愛息子に強請られたなら、朕が叶えてやらねばならぬ!

『てんいで、いっしゅん!』
『おてがるー!!』

それは朕には無理なのだ! 

妖精は人間のロマンを理解せぬ生き物であるらしい。

入口で屋根を見ながら話していたのだが、公爵がまたしても無言で圧をかけてくるので、神殿内に入る事にする。

進まねば、公爵に事故に見せかけて殺されてしまうのではないだろうか……。

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