223 / 369
第二部 第3章
438.空へ 〜 ネロウディアス視点 〜
しおりを挟むネロウディアス視点
ノアと公爵が水と風の神殿へ行った後、炎の鳥がご機嫌に、
『よし、わしの背に乗せてやろう!』
と、朕とイーニアスに向かって言い出した。かと思えば、突然、巨大化したではないか!
「ぎゃあああぁぁぁぁ!! きょ、巨大化したのだぁ!」
「とりさんが、おおきくなった!」
『ドラゴンなみー!』
朕のイーニアスと、妖精(声だけしか聞こえぬ)が嬉しそうに声を上げると、炎の鳥も気を良くしたのか、カッカッカ、と笑いながら近づいてくる。
『お前たち、わしの背に乗るのだ。これから、復活した神殿の全貌を見せてやろう!』
近い、近い! 顔が近いのだ!!
『早く乗れ! 大空に飛び立つぞ!』
「え、ここは、部屋の中なのだ……窓もないのだぞ?」
「ちちうえ、とりさんのせなかに、のりましょう!」
「い、イーニアス?」
そもそも、巨大化した鳥は庶民の家よりも大きい。こんな高い所に、どうやって登るというのだ?
戸惑っていると、転移で鳥の背に乗ったイーニアスが手を伸ばしてくれたのだ。
朕のイーニアス、優しい子! でも、朕が手を引っ張るとイーニアスが落ちてしまうのだぞ。
結局、妖精が朕を浮かせて、イーニアスが引っ張りあげてくれたのだ。
『よしっ、では飛ぶぞ!』
「だから、部屋の中なのだぞー!?」
部屋の中でそのような巨体の翼を広げれば、神殿が壊れてしまうのだ!!
「うかんだ!」
『おちるー!』
イーニアス!? どうしてそんなに余裕なのだ……っ、そして妖精よ、落ちてはおらぬか!? 大丈夫か!?
部屋は思ったよりも広いのか、魔法で拡張したのかわからぬが、神殿は壊れておらぬようだ……しかし!
「て、天井にぶつかるのだー!!」
あまりの恐怖に、イーニアスに覆い被さって叫んでいると……
「ひかって、すりぬけた……。ちちうえ、ピカッとして、てんじょうを、すりぬけました」
「へ? す、すり抜けた!?」
愛息子の声に、薄目で見てみるが、何やら眩しくて、よく見えぬのだ……
『ゆくぞー!!』
「のん!?」
ばさぁっと鳥が羽ばたいた音が耳に届き、身体が潰されるのではないか、という重さがのしかかってきた! と思った瞬間、
朕の頭上に青が拡がったのだ。
「わぁ!!」
『あおいそらー!』
「おおっ、ぃ、ぎゃあああぁぁぁぁ!!」
高いぃぃ!! 顔に風が……っ、ぶふ、ぶ……っ
「わたあめのなかだ!」
『アカ、わたあめだいすきー!』
「あまくない!」
『このわたあめ、たべられないー!?』
いつの間にか、強風は感じなくなっており、イーニアスは妖精とはしゃいでいるが、朕にはちょっと……
「たか、たかすぎる……っ」
目が回るのだ~。
『下を見てみよ! イーニアスが魔力を補充する前は、地下に沈んでいた神殿が、地上に出て来ているぞ!!』
おおっ、朕に考慮して、低く飛んでくれて……高いぃ!!
『クーポル!』
「うむ! クーポルだ」
くーぽ……、あ、あれは……っ
「ヒエェ! し、神殿!? そもそもここはどこなのだ!? 森の上!?」
『カッカッカ! 西の神殿があるのは、グランニッシュ帝国の帝都から、遠く離れた西の森の中! 以前はその地下に埋まっておった。イーニアスよ、神殿を復活させてくれた事、改めて礼を言う』
「これで、せかいは、ほろびませんか?」
『神殿は後四つある。世界を安定させる為には、小僧が東の神殿の管理者になり、他三つの管理者も見つけ、魔力を注ぐ事しかない』
「ノアなら、かならずかんりしゃに、なります!」
早く降ろしてほしいのだー!! たす、助けてーっ、レーテ~!!
7,266
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。