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第二部 第3章
439.ただいま
「おかぁさま……!」
晩御飯を食べ終え、ぺーちゃんをそろそろお風呂に入れないと……、と考えている時だ。ノアとテオ様が突然目の前に現れたではないか!
「ノア……っ」
わたくしと目が合った瞬間、ノアが泣きながら腕の中に飛び込んで来たのだ。
「おかぁさま、わたち、ちれん、できた!! ちゅよいこっ」
まくし立てるように、言いたい事だけ言って、ノアはわたくしに抱きついている。もちろんわたくしも強く抱き締め、話はよくわかっていないながらも、相槌をうつ。
きっと、とても大変で、楽しい冒険をしましたのね。だってこの子の顔が、神殿に行く前と比べて、とても逞しいですもの。何かを乗り越えた目をしておりますわ。
「すごいですわ! とっても頑張ったのね!!」
「しょうよ! わたち、おみじゅ、ちた、いった!」
ん?
「ブクブク、くるちぃって、なってね、おも……おもぉこみ? なのよ。しょれで、どりゃごんさんあって、ちれんよって!」
ドラゴン!? いえ、それよりブクブク、苦しいって……っ
「ノア、怪我はありませんのよね!? 危険な目に遭いましたの!?」
「おさかなさん、のった!」
どういう事ですの!?
「ベル、ノアに怪我はないから安心しろ。それと、私もいるんだが」
「あっ、テオ様、お帰りなさいませ。大切な旦那様を忘れてはおりませんわ。テオ様もノアも無事に戻ってきてくれて、嬉しいです」
ついついノアにばかり目がいってしまっていたが、もちろんテオ様がいる事もわかっている。
テオ様はそんなわたくしを、呆れたような目で見てきたが、フッと息を吐くと、わたくしとノアを抱き締めてくれたのだ。
「ノアは、目から汗が出るらしい」
「おとぅさま、しょれ、おかぁさまに、おしゃべり、めっ」
まぁっ、目から汗って、つまり……涙が出たけど汗だと言い張る、漢のプライドですのね。
「その汗は、ノアが頑張った証拠ですわね」
「しょう! わたち、なきむし、ない! ちゅよいこ!!」
あらあら、必死で訴えておりますわね。
そんな姿が愛おしい事この上ないのだ。
「そうよ。ノアはとっても強くて、とっても優しい子ね」
「おかぁさま、わたち、かんりちゃ、なったのよ」
ふんすと鼻で息を吐き、胸を張る我が子に何度も頷く。
「ええ、ええ。ノアなら絶対、管理者になれるとわかっていましたわ」
「ちってた?」
「フフッ、そうね、知っていたというよりは、ノアを信じておりましたのよ」
「ちんじてた……。うふふ、おかぁさま、わたち、おやくしょく、まもったのよ」
お約束? 管理者になって、皆を守るっていう、あの約束の事かしら?
「ノア、その話は食事をして、お風呂に入った後するといい。先に疲れを癒すんだ」
そういえば、ノアもテオ様も今帰宅しましたものね。すぐシェフに美味しい食事を用意してもらわなくてはなりませんわ。お風呂は……
「そういえばね、ノア。ぺーちゃんが置いていかれたって、寂しがっておりましたのよ。だから、お風呂は一緒に入ってあげたらどうかしら?」
「ぺーちゃん、さびち?」
「ノアがいない間、ずっと泣いていましたのよ」
今はぺーちゃんのお部屋で、食後の胃をお休みしている所で、メイドはお風呂の準備をしている頃だろう。
「ぺーちゃん、どこ?」
「シェフが食事を用意してくれている間に、ぺーちゃんの所に行きましょうか」
「はい!」
テオ様もお疲れでしょうに、わたくしたちに付き合って、ぺーちゃんのお部屋までついて来てくださいましたのよ。
「にょあ!」
「ぺーちゃん、だだいま、かえりまちた」
「にょあ~!!」
ノアの姿を見つけたぺーちゃんは、よちよちと駆けてきて、ノアに抱きついていた。ノアもまんざらでもないのか、お兄ちゃん風をふかし、「よちよち」と、頭を撫でているのだ。
本当の兄弟のようですわね。
ほっこりとした一幕に、ノアとテオ様が帰ってきた安堵感も重なって、何だかわたくしの目からも汗が出てきてしまいましたのよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『───まさか、管理者があのように幼い子とは……』
『かぜとみずのちゅんでんは、とくべちゅ、でこざんちゅから、おぼっちゅんの、ふたんにならないといいの、でござんちゅが……』
『巨大魚を呼び、湖に光を照らす、恐ろしいほどの魔力を持つ子です。負担はありませんよ。ですが……歴代の管理者で一番幼いですからね……』
『あっちゅが、フォローちゅる、でござんちゅよ』
『ええ。私も、出来るだけの事はしましょう』
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