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第二部 第3章
451.狙われたイザベル5 〜 イザベル視点/テオバルド視点 〜
しおりを挟むウィニー男爵領地は、一年のほとんどが雪という豪雪地帯である。
しかし、グランニッシュ帝国内のほとんどは雪はもちろん降るが、比較的穏やかな気候なのだ。ディバイン公爵領やシモンズ伯爵領も北に位置するので、豪雪地帯といえばそうなのだが、ウィニー男爵領ほどの永久凍土ではない。
実際、ウィニー男爵領地に隣接する他領は、積もった雪は春に溶け、また秋から冬にかけて積もる。
ほぼ同じ場所にあるというのに、なぜこうも違いが出るのか。不思議でならない。
「一度現地に行って調査する必要があるのではないかしら……」
「奥様!? それは、旦那様がお許しにはなりませんっ」
ミランダがぎょっとして声を上げる。
テオ様は確かにお許しにはならないかもしれませんが、気になるのよね……。
ピンポイントで永久凍土になる理由が。
宿を庶民街に取っているという事で、そちらへ向かったケヴィンさんたちには、事のあらましをテオ様へ伝えた後に連絡を取る事にしたから、お仕事が終わる夜に妖精通信するつもりでいる。
『アカさんじょー! ベルおやつー!』
『アオかえったー!! ノア、いっしょ、おやつー!!』
あら、騒がしい妖精たちが帰ってきましたわ。
『ちょっと! アカ、アオ!! ボク怒ってるんだからねっ』
『せいよーせー、なにあった?』
『せいよーせー、どーした??』
『どうしたじゃないよ!? 何で感覚を切ってるのさ!? どこに行ってたの! 心配したんだからねっ』
初見ですわ。妖精同士は繋がっていると前に言っていたけれど、一方的に切る事もできますのね。
『しんぱいない! だいじょーぶ!』
『アオ、ゆーしゅー!!』
『そういうことじゃないよ! ずるいっ、アカとアオだけで出掛けて!! ボクも誘ってよー!』
『せいよーせー、わがままだめ!』
『アオたち、おしごと、せいよーせー、あぶない、だめ!!』
『何で!? ノア、ノアー! アカとアオ、「めっ」してよ!!』
アカとアオがお仕事??
「残念ながら、ノアははしゃぎ疲れて、ぺーちゃんと一緒に眠っておりますわよ」
『「めっ」してくれるって言ったのにー!』
あらあら、正妖精が泣いてしまいましたわ……。
『せいよーせー、なかない。アカ、おやつあげる!』
『せいよーせー、アオも、おやつあげる!!』
『いいの……?』
『あげる!』
『しかたない!!』
『ぐす……っ、ありがと……』
まぁ、仲直りも早いですわ。さすが妖精。
「奥様、危険な真似はお止めいただくよう、お願いいたします」
「ミランダ、大丈夫ですわ。もし行くとしても事前にきちんと調べて、テオ様にも相談して行きますもの」
「奥様、行くのは決定事項なのですか……、ノア様をお屋敷にお一人になさるつもりなのでしょうか」
そ、それを言われますと、行けなくなりますわ!
「どうしたら良いのかしら……」
「奥様、そういった場合は、調査団を組み、送り込んではいかがでしょうか」
調査団!? 何だか大事になってきましたわ……。
『ボクだって役に立つのに……。妖精王なのに……』
「! 正妖精っ、あなた、何か仕事をしたいのですわね!?」
『え!? う、うん! ボク、役に立つよ!!』
「では、わたくしの調査に協力してくださいまし!」
『わかったよ! ボクに任せてっ』
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テオバルド視点
ベルの様子を見て来いといって、一度帰した正妖精から連絡が途絶えた。
どういう事だ。まさか妖精でも対処の出来ないような事が起きたのか……っ
「ウォルト、やはり私は領地に帰る」
「旦那様、妖精様からは連絡が無いのですか?」
「ああ……、何かあったのかもしれん」
「……旦那様、確か陛下にも連絡が出来る妖精様が付いていましたよね。奥様の妖精様と連絡を取ってもらいましょう」
そんな悠長な事はしていられない。
「旦那様、もし何かあったと仮定いたしましょう。ですがそれは、姿の見えない妖精すらも連絡を絶ってしまうという事なのです。そのような所に、奥様をお救いできる可能性の高い旦那様を、何の準備も無しに送り出す事はできません」
ウォルトの言葉に、私は何度愚かな行動をしてしまっているのかと反省する。
妻の事となると、私はこんなにも冷静ではいられなくなるのだな。
ベル、どうか無事でいてくれ……っ
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