継母の心得

トール

文字の大きさ
199 / 333
第二部 第3章

450.狙われたイザベル4 〜 イザベル視点/テオバルド視点 〜



奇跡を起こす女神!?

「とんでもないっ、わたくし、奇跡なども起こせませんし、女神でもございませんわよ!?」

おかしな噂が広まっていますわ! もしかして、庶民街の女神像が原因ですの!?

「しかし、新素材や新型馬車、あのおもちゃの宝箱も、全てあなた様が考案なさったのですよね!?」

どうしてそれを!?

ミランダと護衛を見れば、首を横に振られた。
わかりません、という意味ではなく、そんなもの、派手に動いているからバレバレですよ。という呆れた意味のものだった。

「新素材は弟が開発したものですわ!」

偶々わたくしが木の板を見つけて、オリヴァーが色々実験をしてくれていますもの。そこは譲れませんわ。

「それに、新型馬車は技術者の方々が考えて、試作を繰り返し出来たものですし、おもちゃの宝箱は現場のスタッフや開発チームが頑張ってくれておりますわ」
「ですが、お知恵を出されたのはディバイン公爵夫人ではありませんか」

確かに提案はいたしましたが、それも前世の知識ですもの!

「雪崩などをどうにかしろと言われましても、わたくしどうにもできませんし……」
「いえ、ディバイン公爵夫人に雪崩をどうにかしてほしいなど、そのような無理難題は申しません!」

え?

「では……?」
「恥ずかしながら、ウィニー男爵領には薪や食料の蓄えがなく、このままいけばこの氷の季節(冬)に大量の凍死者、餓死者が出るでしょう」

凍死に、餓死……っ

「ですが、ニール様が皇帝陛下に現状を伝えているはずです。韜晦トウカイ皇帝と名高い、ネロウディアス皇帝であれば、お助けいただけるのではないかと思っております」
「そうですわよね」

だから、わたくしに助けを求めるというのが、よくわかりませんわ。

「しかし、ウィニー男爵領は一年のほとんどが雪と氷に包まれた不毛な大地です。また同じような災害も起きるでしょう。その都度、国にお世話にというのは、たとえ韜晦トウカイ皇帝であろうと、予算を割くことが難しくなると思うのです」

災害時の臨時予算は、レーテ様でしたら蓄えているでしょうけれど……ウィニー男爵領だけではありませんものね。現にディバイン公爵領でも、他領よりは少ないとはいえ、雨季に土砂災害や川の氾濫もありますもの。

「もちろん、我々も何とか、食料や燃料の確保をする為に、他領との交易を盛んにしようと考えましたが、我が領地にお金にできる物も、それに代わる物もなく……っ、そもそも植物は育ちにくく、育ったとしても、特産品として外部に出す余裕もありません。狩猟もまた同様で、とにかく民に余裕がないのです……」

これは、深刻ですわ……っ

「つまり、わたくしはウィニー男爵領の町興しをしたらよろしいのですね」
「お、お知恵を、お貸しいただけるのですか!?」
「死者が出るような危機的状況ですもの。わたくしも何かできるのであれば、と思っておりますわ」

わたくしに何が出来るかはわかりませんが……。そう言えば、二人はおいおいと泣き出し、「ありがとうございます」と何度もお礼を言われたのだ。


テオ様に、何て報告すればいいのかしら……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



テオバルド視点


『テオっ、大変、大変だー!! ベルを訪ねて、怪しい男が二人やって来たんだよ!!』
「何だと!?」

皇帝を皇后にまかせ、自身の執務室に戻った途端、突然現れた正妖精の言葉に席を立つ。ウォルトの肩が大きく揺れたが、そんな事に構っていられない今の私は、冷静さを失っていたのだろう。

「皇后はまだ皇帝の執務室にいるか!?」
「旦那様!? どうなさったのですか!?」

皇后の元へ行かねばならないと、執務室を飛び出すと、ウォルトは慌てて私を止める。

「離せ! ベルが……っ、すぐに領地に戻らねば!」
「落ち着いてくださいっ、奥様に何があったのですか!?」
「怪しい男が二人、ベルを訪ねて来ているんだ!!」
「奥様が、その男たちに拉致されたのですか!?」
『されてないよ! 何か応接室で、ミランダと護衛の騎士と一緒に話を聞いてるってチロが言ってる!』

話をしているだと……?

「応接室で話をしているらしい……」
「それは、お客様がいらっしゃったという事でしょうか……」
『そう! でも、ベルは手紙の返事をしていないのに勝手に押しかけて来て、ベルに土下座してるって! 怪しいよねっ』

ウォルトの言葉と正妖精の話に、徐々に冷静になっていく。

「正妖精……、その男たちは、どんな用件でベルに会いに来たのかわかるだろうか」
『うん! 何か、自分の所の領地が危機的状況で、奇跡を起こす女神様だって噂の、ベルを訪ねて来たって』

つまり、相談……。てっきり例の馬鹿貴族が動いたのかと思ったが、早とちりか。

「旦那様、奥様はどういった状況なのでしょうか?」

心配するウォルトに、溜め息と共に出た言葉は、自分でも驚くほどマヌケだった。

「……客の相談を受けているらしい……」
感想 12,000

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート ☆書籍化 2026/2/27コミックス3巻、ノベル8巻同時刊行予定☆ ノベル8巻刊行前に8巻に掲載される番外編を削除予定です。何卒よろしくお願いいたします】

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。