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第二部 第3章
477.巡り巡って
しおりを挟む「私は、半年前にディバイン公爵夫人に助けていただきました。あの時、公爵夫人がいなければ、どうなっていたかわかりません。だから、こちらの皆様が困っていると聞いて、居ても立ってもいられず、私にできる事があるなら、と」
「アタシらで、お役に立てる事があるなら、ってんで、アパートの住人全員に声をかけて、こちらにお邪魔したんですよ!」
コーラさんとデリラさんが……っ、この支援センターを作るきっかけを、わたくしにくれた人たちが、支援センターのピンチに来てくださったのね。
二人の言葉を聞いて、胸が熱くなる。
「オーナー!」
「え?」
今度はおもちゃの宝箱のスタッフが、支援センターから出てくるではないか。
「あなたたちまで!?」
「もちろんです!」
「ここ数ヶ月、帝都支店のスタッフが交代で、休みの日にここに来て、改装してますよ!」
おもちゃの宝箱のスタッフまで、楽しそうに語るのだが、それって、休みなく働いているんじゃ!? と動揺してしまう。顔に出ていたのか、
「きちんと休んでますから、大丈夫です!」
「改装も楽しいですから、逆にストレス解消になっていますよ」
と、カラカラと笑われてしまった。
「それよりオーナー、外観はこんなですが、中は綺麗になってますので、見ていってください!」
「公子様がたも、騎士様や侍女さんたちも、お入りください」
おもちゃの宝箱のスタッフと、コーラさん、デリラさんに案内され、恐る恐るお化け屋敷の中へと足を踏み入れると……
「わぁっ、おしょとと、ちがうのよ!」
「にゃ!」
お化け屋敷の外観とは全く異なり、清潔感のある白い漆喰の壁で囲まれた、掃除の行き届いた広い玄関ホールに、開放感ある吹き抜けの天井、センスの良いおしゃれなインテリアが出迎えてくれる。
奥に進むと一階は、ひと続きの大きな部屋で、柔らかい絨毯が敷かれ、子供たちが喜びそうなテディやおもちゃ、小さな遊具などがあるキッズルームと、赤ちゃんが遊べるベビールーム、親がひと息付けるカフェスペースなどがあり、飲み物はドリンクバーから好きなものをカップに注いで飲める、フリードリンクスタイルになっていた。
カップはもちろん新素材で作られた割れないものだった。
もう完成しているのか、10人ほどの子供たちが楽しそうに遊んでおり、そばでは親が幸せそうにそれを眺めている。
「ぼーりゅぷーる! ぺーちゃん、あっち、ぼーりゅぷーりゅ、あるのよ!!」
「にゃ! ぺぇちゃ、ぁちょっぎゅ!」
「おかぁさま、ぺーちゃんと、いっちょ、あしょんでいい?」
ワクワクした顔で、ノアとぺーちゃんから見上げられると、頷く事しかできませんわ!
「皆様、子供たちを遊ばせても大丈夫かしら?」
「もちろんです!」
「内装は完成しているので、問題ありません」
「支援センターのスタッフも巡回していますし、安全対策も万全ですよ」
まぁっ、なんて頼もしいのかしら。カミラとマディソンに目配せし、ノアとぺーちゃんをお願いする。二人は頷くと、手を繋いでボールプールへ向かった。もちろんノアたちの護衛も一緒に行ってもらう。
「わたくしは、皆様が頑張った内装を見学させていただきたいですわ」
「はい!」
「ぜひ!!」
皆が張り切って案内してくれる。半年の間に、彼らがどれだけ頑張ったのか、広い屋敷の中を見ているとよくわかる。
わたくし、人に恵まれましたわ。
「ディバイン公爵夫人が、子育ての支援センターを提案してくださったお陰で、私たち親は、本当に助かっています!」
「子供たちもここに来れて、楽しそうに遊んでくれますし、私たちの息抜きにもなるんです」
「そうそう。センターの人たちの知識も豊富で、相談にものってくださるし」
「外観は怖いけどね」
「ハハッ、案外そのギャップで人気が出るかもよ」
冗談を言い合う皆を見て、わたくしは感動しておりましたのよ。
お化け屋敷みたいな家しか、この規模の大きさのものがなかったとはいえ、調査もせずここに開設する許可を出したのはわたくしですわ。皆がいなければ、大変な事になるところでした。
本当に、人とのご縁は、大事にしなくてはなりませんわね。こうして、巡り巡って花開いていくのですもの。
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