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第二部 第3章
482.友達に会えない寂しさ
しおりを挟む中央諸国首脳会議は、隣接する国々だけでなく、中央海嶺を挟んだ向こう隣の国々もやって来る、かなり大規模な会議だ。この期間中、皇城、皇宮には皇族を守る為、近衛騎士だけでなく、他の騎士たちも増員される。帝都ももちろん、一般騎士たちが巡回を強化し、物々しい警戒態勢を取っている。
「ベル、君と子供たちは会議が終わるまで、外出するのは止めてもらいたい」
とはテオ様の言葉で、わたくしとノアとぺーちゃんは、ディバイン公爵家の本邸から出る事ができないでいた。
こんな事、以前にもありましたわよね……
「おかぁさま……わたち、アスでんか、あいたいの……」
魔法の修行の為に、ほぼ毎日顔を見せていたイーニアス殿下が来なくなってから二日、悲しそうに目を伏せるノアに、公爵家の皆が、「なんて可哀想なノア様……っ」と一緒に悲しんでいる。
「てんい、めっ、かちら?」
「そうね……、イーニアス殿下は護衛を増員されていらっしゃるから、ノアもイーニアス殿下も、どちらも転移をしたら大騒ぎになってしまいますわね」
「しょうなのね……」
ああっ、また悲しい顔をしておりますわ!
「にょあ、あちゅ、にゃい?」
「しょうよ、ぺーちゃん。アスでんか、あしょぶの、めって……」
「ぁう……っ、ぺぇちゃ、にょあ、あちゅ、ぃっちょ、ぃー、にょ」
「わたちも、ぺーちゃんと、アスでんかと、いっちょ、あしょびたいの」
あらあら、ノアだけでなく、ぺーちゃんまで肩を落としていますわ。使用人たちの目も、二人を何とか慰めて、と言わんばかりにわたくしに向けられておりますわね。
「二人とも、後一週間ほどの辛抱ですわ。それまでは……」
「奥様、シモンズ伯爵が、オリヴァー様とご一緒にご到着なされました」
それまでは、お母様とたくさん遊んで過ごしましょう、と言う予定が、遮られてしまう。
「お父様とオリヴァーが来ましたのね!」
子供祭の後、エンツォお父様が転移で帰ると聞いたノアが、大号泣してしまい、それを見たぺーちゃんまで泣き出してしまったのはいい思い出だ。
今回の来訪は、会議の議題に上る、新素材の生みの親である、お父様とオリヴァーに何かあったらマズイと、首脳会議が終わるまでの間は……、とテオ様が呼び寄せたのだ。
あの時からあまり時は経っておりませんけれど、良いタイミングで来てくれましたわ。
「おじぃさま! おじさま!」
「じっちゃ?」
メイドの来訪の連絡を聞いて、ノアが一目散に駆けていく。それを必死で追うカミラと、ぺーちゃん、その後ろをマディソンがしっかりついて行く。
あら、わたくし置いてけぼりですわ!
「───閣下から、イザベルが無茶をしないように注視していてほしい、と頼まれたからね。最近、妊娠しているというのに、随分お転婆に過ごしていたと聞いたよ」
「ぅ……」
「イザベルのお腹には、かけがえのない命が宿っているんだよ。自分一人の身体ではないのだから、気を付けないといけないよ」
お父様とオリヴァー、そしてフロちゃんとドニーズさんを大歓迎し、中に招き入れた途端、お父様の優しげな口調がより罪悪感を刺激する説教が始まり、わたくしは小さくなっていた。
「おかぁさま、おじぃさま、めって、されてりゅの?」
「かぁちゃ、めぇ?」
「お姉様は、猪突猛進の加減を知らない性格だから……。さ、二人は向こうで遊んでいようね。しばらく続くと思うからね」
オリヴァーはそう言って、わたくしの天使たちを連れて行ってしまったのだ。
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