継母の心得

トール

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第二部 第5章

542.今自分に出来る事

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「そういえば、初代の双子王はどちらも、同じ特異魔法の使い手だったそうだ」
「まぁ、そうでしたの。同じ特異魔法……」

特異魔法の使い手だという事は、エリス王女やロギオン国王の話を聞いて、予想はついていた。だからそんなに驚きは無いのだけれど……、わたくしが驚きなのは、ロギオン国初代王が執着した女性が、デルベ夫人の生家である、ウェッジウッド伯爵家に嫁いだという事ですわ。

「エリス王女は警戒心を無くす魔法で、ロギオン国王は存在感を無くす魔法を使用できるのでしたわよね?」
「その通りだ」

いずれも、人の思考に作用する魔法である。という事は、初代双子王も人の思考に作用する魔法の可能性が高い。

エリス王女の特異魔法は魅了の劣化版だと本人は仰っていたけれど、双子王はもしかして、魅了魔法を使用できたのかしら?

「であれば、恋焦がれた女性と一緒になっていそうなものですけれど」

他国とはいえ、ウェッジウッド伯爵家はディバイン公爵家門。名門貴族ですもの。その婚約者となると、確かに他国の王であっても手出しはできませんわよ。
もし、魅了魔法なんてかけようものなら、グランニッシュ帝国とロギオン国は険悪な関係になっておりますわ。

「ディバイン公爵夫人?」
「あ、いえ。独り言ですの。それよりエリス王女、ロギオン国初代の双子王のお兄様ですが、本当に失恋したショックで病気になりましたの?」

失恋で激痩せした人や、逆に激太りした人、さらには心の病にかかってしまった人は前世でも多くいた。ロギオン初代兄王も、そんな一人だったのだろうか。

「そう伝え聞いている。初代王が女性に宛てた手紙や、日記なども残っているが……写しをあなたにお渡ししたほうが良いだろうか?」
「写しをいただけるのであれば、是非、と言いたいところですが、それは国の重要文化財だとかではありませんの?」

他国の貴族に渡してもいいものなのか、不安になる。

「構わない。手紙や日記は公開されているものだ。写しも多く出回っている」

それはそれで、初代がかわいそうな気もしますわ。


エリス王女に写しを頼んだ後、わたくしはお父様に用意した客室を訪ねたが、やはり帰ってきてはいなかった。

「お姉様、お父様は大丈夫なのでしょうか……いくら閣下でも、お父様に連絡が取れない今、心配でたまりません……」

オリヴァーも心配しているようで、父の部屋の前でバッタリ遭ったのだ。

「わたくしも心配ですけれど、現状、わたくしたちにはどうする事も出来ない問題ですわ……」
「お姉様、そんな冷たい言い方……っ」

お父様が暴力的な、あのロギオン国王に捕まったかもしれないんですよ!? と感情的になるオリヴァーに、わたくしは冷静を装って言ったのだ。

「だからね、オリヴァー。わたくしたちの出来る事をするの」
「は……? お姉様、何を言って……」
「わたくしは、今ロギオン国の歴史から調べておりますわ」

わたくしの話に、オリヴァーはポカンとしたと思ったら、ハッとして訪ねてきたのだ。

「あの、ロギオン国の歴史と、お父様の危機は、どう関係があるのですか?」
「それは調べてみないとわかりませんわ!」
「はい?」
「わたくし、ロギオン国の問題は、建国時からの歴史と関係あるのではないか、と思っていますの」
「それは、お姉様の勘でしょうか」

若干呆れたようにわたくしを見るオリヴァーに、「そうですわ」
と頷きましたのよ。

「ですからオリヴァー、協力してくださいまし!」
「はぁ!?」

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