継母の心得

トール

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第二部 第5章

552.動き出すロギオン国王

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「───イザベル・ドーラ・ディバインと、フェリクス教皇を連れてこい」

ロギオン国王は、監視者に変装したルネにそう命令すると、椅子に座ってふんぞり返ったまま、天井を見上げた。
グランニッシュ帝国の皇城は、天井にまで金をかけているらしい。などと思いながら自嘲気味に笑う。

「国王、しかしながらここはグランニッシュ帝国の皇城ですが、よろしいのでしょうか」
「かまわん。ここの皇帝は、自分の妃をさらわれた事すら気付かない愚鈍よ。まさか皇城に捕らえた者を連れ込むとは、想像もできんだろうよ」
「⋯⋯」
「その他の者は、シモンズ伯爵を捕らえてある場所に連れて行け」
「かしこまりました」



ーーーーーーーーーーーーーーー



「───という事なのですが⋯⋯」

ロギオン国王の元からから帰ってきたルネさんは、ぺーちゃんとわたくしを見た後、テオ様と皇后様に伺いを立てている。

まさかぺーちゃんを連れて来いというなんて!

「何をされるかわからない場所へ、ぺーちゃんをやるなどと、まさか言いませんわよね!?」

テオ様と皇后様に問うが、二人は黙ったまま何かを考えている。

「あの、私もさすがに赤ん坊には変装出来ませんので⋯⋯」

ルネさん、それはわかっておりますわよ!? それに、甥っ子を危ない目に遭わせたくありませんものね。涙目になってわたくしに無言の嘆願をしておりますわ。

「ベル、安心しろ。ぺーをロギオン国王の前に連れて行く事はしない」

テオ様の言葉に、わたくしとルネさんは安堵の息を吐く。

「ねぇルネ、イザベル様に変装する事はできるかしら?」
「それは可能ですが、監視者の男はどうしますか? 監視者がいなければ不自然では⋯⋯」
「そこはエリス王女がいるから問題ないわ」
「フェリクスは⋯⋯」
「ぺーちゃんはね───」

皇后様とのやり取りに、ルネさんがわたくしの身代わりをするという事がわかり、口を挟もうとしたが、テオ様に止められる。ディバイン公爵夫人として相応しい行動を取れと、そう彼の目が訴えていた。

「⋯⋯テオ様、申し訳ありませんわ⋯⋯」

このまま、黙って見ているしかないのかしら。この誘拐事件も、元を正せばわたくしが新素材ベリッシモを発見してしまったから⋯⋯

「ベル、君のせいではない。それにこうなる事は最初から予想していた」
「予想⋯⋯」
「君を拘束し、義父上を手に入れたと思い込んだロギオン国王は、未来を予知するぺーと、新素材を発見した君に会いたいと言い出すだろう事は、見当がつく」

ここまでは、テオ様の計画通りですのね⋯⋯

「テオ様⋯⋯、ロギオン国王はわたくしやぺーちゃんと対面して、どうする気だと考えておりますの?」
「ベルに関しては、義父上を盾に新素材ベリッシモについて聞き出そうと考えているのだろう」

そうですわよね。ただ、ぺーちゃんは⋯⋯

「ぺーは未来予知が出来ると、ロギオン国王は神託により気付いている。ぺーはベルに懐いているからな。君にぺーの能力を引き出させる気ではないか、というのが私たちの考えだ」
「ぺーちゃんの能力だなんて⋯⋯っ、あの子はまだ赤ん坊ですし、わたくしに能力を引き出すような力もございませんわ」

ノアやフロちゃんは、神々に愛されすぎているのか、祝福の義を行う前から、なぜか魔法が使えますけれど、もしぺーちゃんが魔法を使えるとしても、コントロール方法のわからない赤ん坊では、魔力が暴走して、ぺーちゃんも周りも、命の危機にさらされてしまいますわ!

「ロギオン国王は、ノアが祝福の義を行う前に魔法を使える事を、あの誘拐事件で気付いたはずだ」

確かノアはあの時、氷の攻撃魔法で誘拐犯を凍らせたのでしたわよね⋯⋯。

「そしてぺーは、瞳に魔法陣のような模様が浮かび上がる。その情報をエンプティを使って手に入れていれば、ぺーもすでに魔法を使用できると考えているだろう」

なんてこと⋯⋯っ

「厄介なのは、ベル、君が言っていたロギオン国王の能力だ。もし現ロギオン国王の中身が初代ならば、追い詰めた途端別の器に移る可能性がある」

それだけは避けたいと、テオ様は眉間に皺を寄せたのだ。

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