継母の心得

トール

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第二部 第5章

554.忍び寄る恐怖?

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「───という事で、義父上の協力によって、誘拐を指示されていた奴らのアジトが特定され、その規模も調査できた。その後は影が速やかに制圧した」

テオ様は何があったのか、別室でわたくしに教えてくれた。眠っているノアはなーたんが見てくれている。

「お父様は無事ですの!?」
「ああ。影と妖精たちを付けていたからな。傷一つない」

影と妖精がお父様の護衛でしたの!? そういえば、アカとアオ、それにチロの姿もみえませんし、随分静かだと思っておりましたのよ。

というか、テオ様は妖精をすっかり手足のように使っておりますわ⋯⋯。

「良かった⋯⋯。では、お父様はすぐこちらに帰ってきますのね」
「ああ、義父上には頭が下がる思いだ。ベル、君にも心配をかけてしまった⋯⋯すまない」

立場上、頭を下げるなんて、してこなかっただろう夫が、わたくしに頭を下げるのだ。そんな状況に胸が痛くなり、彼を抱きしめた。

「テオ様⋯⋯っ、わたくし、テオ様を信頼しております。お父様の事も、テオ様が大丈夫だと言うのなら、大丈夫だと思っておりましたわ。だって、あなたは嘘を吐く方ではありませんもの」
「⋯⋯ベル、ありがとう」



ーーーーーーーーーーーーーーー



グランニッシュ帝国 皇城 ~ 貴賓室 ~


「───ディバイン公爵夫人とフェリクス教皇を連れてきました⋯⋯」
「何故、お前がここにいる。エリス」

ロギオン国王の冷めた声に、エリス王女は内心の緊張を隠し、淡々と答える。

「ディバイン公爵夫人を捕らえていたのは私です。当然同行します⋯⋯」
「監視の者はどうした」
「王よ、ここにいます」

ルネは今、イザベルに変装している為、監視者は当然別の者が成り代わっているわけだが、いつ気付かれるかわからないと、一瞬皆に緊張が走る。しかし、ロギオン国王は全く気付かないのだ。

「ふんっ、⋯⋯それで、こっちがディバイン公爵夫人だな」
「はい。仰せの通り、ディバイン公爵夫人とフェリクス教皇を連れて参りました」

監視者に変装した監視者がそう言って一歩下がると、ロギオン国王はイザベルに変装したルネを、上から下までじっくりと視認する。

ルネは不快な気持ちになり、イザベル本人が来なくて良かったという思いを強めた。

「噂以上の美しさだな。あのディバイン公爵が惚れ込むだけはある」
「⋯⋯」
「そう睨むな。従順であれば、お前も、お前の父親も悪いようにはしない」
「っ⋯⋯父はどこにいるんですの!?」
「お前の態度次第で対応が変わる事を、頭に刻んでおけ」

スッと温度が引いていく目に、背筋がゾッとしたルネは思わず一歩後退りしてしまう。

「教皇は眠っているのか⋯⋯」
「この子はまだ赤ん坊ですわ。この子だけでも家に返して⋯⋯っ」

こんなやり取りをしながらも、ルネは室内を観察していく。

扉の前には騎士のような格好をした男が二名、ロギオン国王の斜め後ろに一人、隣の部屋にも恐らく数名⋯⋯。王の護衛は特異魔法が使えるものがいるという⋯⋯他にも魔法を使用して潜んでいるだろう。

ルネの腕の中でおくるみに包まれている甥っ子の身代わりは、白いテディ。ノアがイザベルからもらった大事な宝物だ。ルネが甥っ子の身代わりを連れて行くとどこからか聞きつけたのか、ノアが貸してくれたのだ。

本当に大丈夫なのだろうか⋯⋯

腕の中のテディを見て不安を覚えるルネに、ロギオン国王が近付く。

「先程からピクリとも動かないが、それは本当に教皇なのだろうな」
「兄上、間違いありません。フェリクス教皇です。赤子なので眠っているのです」
「⋯⋯」

またしてもその場に緊張が走る。その時、ルネの腕の中でテディがモゾモゾと動いたのだ。

「⋯⋯人形かと思ったが、本物か」

ロギオン国王の言葉に、ルネの血の気が一気に引いていったのだ。

どうして、人形が動いているの!?

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