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その他
番外編 〜 公園の完成(庶民視点) 〜
しおりを挟むとある庶民A視点
ディバイン公爵領都は、元々他の領都と比べても良い所だと商人たちは話していたし、自分も実際数十年住み続けて、良い場所だと思っていた。
特に今のご当主様の代になってからは、領民にも尽くしてくれる素晴らしいお方で、氷の大公と呼ばれているとはとても思えない方だとずっと思っていた。
まぁ、会った事はないのだが。
そんなディバイン公爵家のご当主様に、隣の領地からお若く、美しい奥様が嫁いでこられて一年後、大規模な領地開拓を行うとの噂が耳に入り、私の友人を含め、移民して来た者たちも浮かれていた。
今までにない大規模な雇用が生まれたからだ。
そうして始まった『公園』という憩いの場所の開拓は、数年続く事となる。
そんな工事もとうとう、一週間前に終わりを迎えた。
とはいえ、公園内に建設予定のレストランやお店などはまだ完成していないが、公園自体は完成しており、誰でも無料で散策が出来るんだとか。
今日はそんな公園がオープンする日で、自分たち家族も、公園の入口で、封鎖されている出入口が開くのはまだかと、大混雑するこの人混みの中で待っているのだ。
「父ちゃん、『こうえん』ってのには、何があるの?」
9歳になったばかりの息子が、ウズウズしながら聞いてくるが、実は自分も大した情報はなく、何も答えられないでいた。
「おう坊主、この公園にゃあ、おめぇさんらが大喜びする遊び場や、乗り物かあるんだぜ!」
この公園の建設に携わったのであろう。見知らぬ男が、親切に教えてくれて、息子は目を輝かしている。
「公園散策も良いが、レール馬車もおすすめだぜ! 有料だがなぁ」
「有料……、お高いんですかね?」
「いいや、子供の小遣いで乗れる値段だよ」
れーる……馬車? が子供の小遣い程度で乗れるのか! 馬車なんて、商人や貴族しか乗らないものだろうに。
「アンタが想像している馬車とは全く違うものだぜ! とにかく、楽しむ場所はたくさんあるからな。まずは出入口のすぐ側にある地図が描かれた看板を見て、行きたい所を決めてからレール馬車に乗ってみな!」
男の言葉に、「わかったよ! おじさん、ありがとう!」と息子は礼を言い、男は「おうよ!」と楽しそうに返事をする。
我が子ながら、良い子に育ったものだ。
自分の周りにいた人たちも聞き耳を立てていたみたいだし、地図の前は混雑しそうだ、と思いながら、自分もその男に礼を言って、ワクワクしながら公園のオープンを待った。
「───うわぁ!! すっげー! 父ちゃん、本当に、これで遊んでもいいの!?」
「お、あ、ああ……、多分……?」
レール馬車という巨大な馬車に乗り、驚きと楽しさに疲れを感じるほど騒いだ後やって来たのは、『あすれちっく』という巨大な遊具のある広場だった。
息子が絶対行くと言って聞かないので、妻と苦笑いしながらやって来たのだが……、
「父ちゃん、一緒にやろうよ!」
「え!?」
息子に手を引かれ戸惑っていると、妻がひらひらと手を降って、友達を見つけたのか、そちらへ行ってしまったのだ。
「父ちゃん、オレあの網の上に行きたい!」
息子が指差す所は、吊り橋を渡った後にある、宙吊りになった網で、子供たちが楽しそうにジャンプしたり、寝転んだりしている。何とも気持ち良さそうだ。
よく見ると親も子供と楽しそうに遊んでいる。
「よし! 父ちゃんと競争だ!」
「やったー!!」
あすれちっくで息子と大はしゃぎし、全力で遊んでしまった。
妻からは、「楽しそうだったわね」と笑われ、恥ずかしくなったが、悪くない気持ちだった。
「楽しかったね! 父ちゃん」と笑う息子に、来て良かったと思った。
その後、きゃんぷ広場という所で食材を買って、『ばーべきゅーこんろ』という便利な道具で野菜や肉を焼いて食べたのだが、いつもは妻がする料理を、自分が率先してやった事で、少しだけ、妻子から尊敬の目で見られるようになった。
ただ焼いただけだが、家族揃って外で食べる食事は、とても美味かった。
食事後は三人で公園を散策し、こんなにゆっくりしたのは久しぶりで、どこにでもある木々や花がいつもよりも綺麗に見えて……、
「あなた?」
「……綺麗だなぁ」
「そうね」
そう言って、咲き乱れる花々に目を細める妻が綺麗で、愛おしくて、こんな素敵な広場を作ってくださった領主様に、感謝したのだ。
この日から、我が家では休みの日に、家族揃って公園に行くという習慣が出来、家族仲がますます深まったのだった。
「よし! 明日は奮発して、公園レストランに行こう!」
「あなた、ステキー!」
「父ちゃんかっけー!!」
領主様、父親としての威厳、貴方のお陰で取り戻しました!
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