継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 父と息子の休日 イザベル視点 〜

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「テオ様、明日はお伝えしていた通り、ロペス侯爵家のお茶会に行ってまいりますので、よろしくお願いいたしますわ」
「……朝からだったか」
「ええ。テオ様の貴重なお休みの日に、お茶会が被ってしまうのは残念なのですが……」

夕食後のリビングで、まったりと寛いでいる時の事。

ひと月前にロペス侯爵夫人からお茶会の招待状が届き、テオ様にお伝えした時は特に問題なかったのだけど、一週間前にテオ様のお休みが取れることになり、それがお茶会に被ってしまった事で少しご機嫌斜めなのだ。

もちろん仕方ない事ではあるので、何も言われたりはしないのだけど、お茶会の話に触れると途端に口数が減る。

今もまた、眉間に皺を寄せて、口はへの字になっており、表面だけを見ると少し前のわたくしたちに戻ったような、そんな不思議な感覚に陥った。

「……近いうちに、もう一度休みを取るようにする」
「テオ様……」
「その時は、一緒に過ごそう」

やっとご機嫌を直していただけたみたい。

「嬉しいですわ!」

そんなわたくしたちの隣で、アオとチロと遊んでいるノアは、明日のお留守番の事は何も気にしていないようでほっとする。

ほんの少し前まで、わたくしがお出かけする時には玄関まで追いかけてきていたものね。あれはあれで可愛いのだけど、毎回の攻防が大変で、今のところ勝率は4割……。

さすがに明日は、初めてお伺いするお茶会ですもの。お子様もまだお生まれになっておられないお宅ですし、連れては行けないから良かったですわ。

そう思っていた翌日───


「テオ様、ノアとお留守番お願いしますわね」
「ああ……」
「ノアにはこまめに水分補給もさせてくださいませ。それとおもちゃの使い方がわからない時には、ウォルトに聞いてノアの相手をしてあげてくださいましね。後、お外で遊ばせる事も忘れずにお願いいたしますわ」
「わかっている」

テオ様は、わたくしの手を握ったまま離そうとしない。

ノアではなく、テオ様が離してくれませんわ。

これが夫婦の寝室での事だったのだけど、やっとテオ様が離してくださって、玄関に向かったのだけど……、

「ノア?」
「おかぁさま!」

お出かけ用のお洋服に身を包み、クマさんの小さなショルダーバッグを斜めがけにしたノアが、玄関前に陣取っているではないか!

「ノア、その格好は……」
「わたち、たんぶりゃ、もってりゅの!」

飲み物を忘れてないよ、とアピールしてくるノアに愕然とする。

もしかして、昨夜何も言わなかったのは、一緒に行くものと思っていたからですの!?

「奥さま、申し訳ありません! の、ノア様がご自身でお洋服を選ばれたので、それをお着せした所……っ、玄関に走って来て、し、しまわれて……」

カミラが肩で息をしながら頭を下げる。

カミラったら、慌ててノアを追いかけて来たのね。

「おかぁさま、ばしゃのりゅ!」

さも当然のように、馬車に乗ろうと玄関を出ようとするノアを止めたのは、テオ様だった。

「ノア、今日は私とお留守番だ」
「ちがうのよ? おとぅさま、おりゅしゅばん、わたち、おかぁさま、いっしょ!」
「違う。ベルは今日、お茶会でお前を連れて行く事はできん」
「おとぅさま、めっ! わたち、おちゃかぃ、できりゅ!」

ノアとテオ様の間に、火花が散っておりますわ……。

「ノア、今日のお茶会は、子供は連れて行けないのよ……」
「!? おかぁさま、わたち、きりゃい……?」
「くっ、大好きに決まっているでしょう!」
「わたちも、おかぁさまだいしゅきよ」

ノアのキラキラな上目遣いに、心が揺れ動く。

「ノア、私も行けぬのだぞ。お前を連れて行けるわけがないだろう」
「おとぅさま、だめ。わたち、だいじょおぶなの」
「大丈夫なものか」
「わたち、みーんな、ごあいさちゅ、できりゅの」

お父様は女性嫌いだから挨拶が出来ないだろう。だからお茶会にも一緒に参加出来ないのだという顔をするノアに、テオ様が大人げなく反論する。

「私はそれが出来る立場だ」って、子供の前でそんな事言うのは止めてくださいまし。

暫く二人の言い合いが続き、やっとノアが諦めて出発出来た時には、すでに息も切れ切れという状態で、お茶会に行く前から疲弊していたのだった。

旦那様と愛息子は、やっぱり中身も似た者同士なのかもしれない。


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