継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 狙われたイザベル3 〜 ノア4歳、イーニアス5歳

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ミランダには止められたが、お返事していないとはいえ、手紙をくださった上でお越しになっているのですもの。

そう考え、カミラと護衛にはノアをお願いし、お客様をお迎えしたのだけど……、

「お願いいたします!!」

わたくしの目の前で、二人の男性の土下座が繰り広げられているこの状況、一体どうしたら良いのかしら……。


話は少し前に遡るのだけど、お客様を客用の応接室にお通しするよう指示をして、わたくしもそちらへ向かったのよ。
部屋に入ると男性が二人、立ち上がって頭を下げ、挨拶を交わすと、

「ディバイン公爵夫人、私はウィニー男爵領で商人の同業組合の組合長を任されております、ケヴィンと申します。本日は不躾に突然の訪問をいたしました事、お詫び申し上げます」

と謝罪をいただいたのよね。
もう一人の男性は、ケヴィンさんの部下らしいのだけど、二人ともとても腰が低い方でしたわ。

「こちらこそ、お手紙をいただいたのに、すぐにお返事が出来ず申し訳ありませんわ」
「いえ、とんでもございません! ディバイン公爵夫人がお忙しいのは重々承知しております」
「そうですか……あの、それで、本日はどのようなご用件でお越しになられたのでしょう?」
「っ実は……」

用件を話してくださるのだと思っていたその時、どういう訳かケヴィンさんとその部下は土下座をしたのだ。

そして今、わたくしの目の前で、その土下座は続いているというわけだ。

「ちょ、お二人ともどうされたのです!? お立ちになって!」
「ディバイン公爵夫人、お願いいたします! どうか……っ、どうか我々に、奇跡と言われるその知恵を、お貸しいただけないでしょうか!」
「お願いいたします!」

えぇ!? 

ミランダと護衛がわたくしの前に立ち、警戒しているが、二人は土下座をし、額を地につけたまま懇願していた。

「……お二人とも、何か理由がございますのね。その理由をわたくしに教えていただけないかしら?」
「公爵夫人……っ」

その後、メイドが二人を支えソファに座らせると、再度向き直ってから話を聞いたのだ。

「───実は……」

ケヴィンさんはウィニー男爵領の現状を話してくれた。

「ウィニー男爵領地は、この国の最北端に位置し、火の季節(夏)であっても防寒着コートを着なければ過ごせない、8割が未開拓の大地と言われる、人が住むには大変困難な土地なのです」
「ええ。文献からの知識ではありますが、存じ上げておりますわ」
「な、なんとっ、あの不毛な領地をご存知でしたか!」

わたくし、趣味が貴族名鑑と歴史書と地図を照らし合わせて読むことですの。この国の貴族家の成り立ちは大体把握しておりましてよ。

「そんな領地で唯一、人が住める場所に小さな町を作り、細々とですがやってまいりました。確かに過酷な場所ですが、人々は逞しく、ウィニー男爵も代々民の事を考えてくださるお人柄で、貧乏領地ですが、平和に暮らしていたのです」

少し前のシモンズ伯爵領と似ておりますのね……。他人事とは思えませんわ。

「しかし昨年、ウィニー男爵が雪崩に巻き込まれ、帰らぬ人となり、一人息子のニール様が、たった15歳の若さで男爵を継ぎ、一年頑張ってこられたのですが……、昨年の、男爵様のお命を奪った雪崩が……っ、我々の糧である山への入口を塞いでしまい……っ」

涙を流しながら、危機的状況の領地の話をしている二人に、胸が痛んだ。

「奥様、少しよろしいでしょうか」

その時、ミランダが珍しく話を遮ったのだ。

「どうしたの? ミランダ」
「そのお話で少し疑問に思ったのですが……、現ウィニー男爵でも、補佐でもなく、商人組合の組合長がこちらに来られたのはどういう事なのでしょうか」

確かに、商人が領地に関して、しかもわたくしのような素人に嘆願してくるのは、変よね。

「ニール様は、現在帝都へ、皇帝陛下に人員の派遣を嘆願しに向かっております。そしてニール様の補佐を務めておりますのが、私です! なにぶん貧乏な領地ですので、商人と兼業しております」

なるほど。現ウィニー男爵の補佐もされていましたのね。

「昨年雪崩が起きたと仰っておりましたが、なぜ今、陛下に嘆願をするのです?」
「その、今までの皇帝陛下は……あまり評判がいいとはいえず……」

しどろもどろになるケヴィンさんに、ああ、そういえば皇帝陛下は、洗脳されて悪辣非道と言われておりましたわよね……、と思い出し、納得してしまった。

「わかりましたわ。ですが、陛下への嘆願に行かれたのであれば、わたくしのような素人ではなく、陛下がお知恵と人手を貸してくださいますわ。どうしてわたくしなのです??」


「それは……あなた様が、奇跡を起こす女神様だからです!!」


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