継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
70 / 175
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 狙われたイザベル4 〜 ノア4歳、イーニアス5歳



奇跡を起こす女神!?

「とんでもないっ、わたくし、奇跡なども起こせませんし、女神でもございませんわよ!?」

おかしな噂が広まっていますわ! もしかして、庶民街の女神像が原因ですの!?

「しかし、新素材やレール馬車、あのおもちゃの宝箱も、全てあなた様が考案なさったのですよね!?」

どうしてそれを!?

ミランダと護衛を見れば、首を横に振られた。
わかりません、という意味ではなく、そんなもの、派手に動いているからバレバレですよ。という呆れた意味のものだった。

「新素材は弟が開発したものですわ!」

偶々わたくしが木の板を見つけて、オリヴァーが色々実験をしてくれていますもの。そこは譲れませんわ。

「それに、レール馬車は技術者の方々が考えて、試作を繰り返し出来たものですし、おもちゃの宝箱は現場のスタッフや開発チームが頑張ってくれておりますわ」
「ですが、お知恵を出されたのはディバイン公爵夫人ではありませんか」

確かに提案はいたしましたが、それも前世の知識ですもの!

「雪崩などをどうにかしろと言われましても、わたくしどうにもできませんし……」
「いえ、ディバイン公爵夫人に雪崩をどうにかしてほしいなど、そのような無理難題は申しません!」

え?

「では……?」
「恥ずかしながら、ウィニー男爵領には薪や食料の蓄えがなく、このままいけばこの氷の季節(冬)に大量の凍死者、餓死者が出るでしょう」

凍死に、餓死……っ

「ですが、ニール様が皇帝陛下に現状を伝えているはずです。韜晦皇帝と名高い、ネロウディアス皇帝であれば、お助けいただけるのではないかと思っております」
「そうですわよね」

だから、わたくしに助けを求めるというのが、よくわかりませんわ。

「しかし、ウィニー男爵領は一年のほとんどが雪と氷に包まれた不毛な大地です。また同じような災害も起きるでしょう。その都度、国にお世話にというのは、たとえ韜晦皇帝であろうと、予算を割くことが難しくなると思うのです」

災害時の臨時予算は、レーテ様でしたら蓄えているでしょうけど……ウィニー男爵領だけではありませんものね。現にディバイン公爵領でも雨季に土砂災害や川の氾濫もありますもの。

「もちろん、我々も何とか、食料や燃料の確保をする為に、他領との交易を盛んにしようと考えましたが、我が領地にお金にできる物も、それに代わる物もなく……っ、そもそも植物は育ちにくく、育ったとしても、特産品として外部に出す余裕もありません。狩猟もまた同様で、とにかく民に余裕がないのです……」

これは、深刻ですわ……っ

「つまり、わたくしはウィニー男爵領の町興しをしたらよろしいのですね」
「お、お知恵を、お貸しいただけるのですか!?」
「死者が出るような危機的状況ですもの。わたくしも何かできるのであれば、と思っておりますわ」

わたくしに何が出来るかはわかりませんが……。そう言えば、二人はおいおいと泣き出し、「ありがとうございます」と何度もお礼を言われたのだ。


テオ様に、何て報告すればいいのかしら……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



テオバルド視点


『テオっ、大変、大変だー!! イザベルを訪ねて、怪しい男が二人やって来たんだよ!!』
「何だと!?」

突然現れた正妖精の言葉に席を立つと、ウォルトの肩が大きく揺れたが、そんな事に構っていられない今の私は、冷静さを失っていたのだろう。

「皇后はどこだ!」
「旦那様!? どうなさったのですか!?」

皇后の元へ行かねばならないと、執務室を飛び出すと、ウォルトは慌てて私を止める。

「離せ! ベルが……っ、すぐに領地に戻らねば!」
「旦那様! 落ち着いてくださいっ、奥様に何があったのですか!?」
「怪しい男が二人、ベルを訪ねて来ているんだ!!」
「奥様が、その男たちに拉致されたのですか!?」
『されてないよ! 何か応接室で、ミランダと護衛の騎士と一緒に話を聞いてるってチロが言ってる!』

話をしているだと……?

「応接室で話をしているらしい……」
「それは、お客様がいらっしゃったという事でしょうか……」
『そう! でも、ベルは手紙の返事をしてないのに勝手に押しかけて来て、ベルに土下座してるって! 怪しいよねっ』

ウォルトの言葉と正妖精の話に、徐々に冷静になっていく。

「正妖精……、その男たちは、どんな用件でベルに会いに来たのかわかるだろうか」
『うん! 何か、自分の所の領地が危機的状況で、奇跡を起こす女神様だと噂のベルを訪ねて来たって』

つまり、相談……。てっきり例の馬鹿貴族が動いたのかと思ったが、勘違いか。

「旦那様、奥様はどういった状況なのでしょうか?」

心配するウォルトに、溜め息と共に出た言葉は、自分でも驚くほどマヌケだった。

「……客の相談を受けているらしい……」


感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。