継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 妖精大戦争3 〜 ノアもうすぐ5歳

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いえ、閉じ込められてはいませんわよ!?

テオ様の眉間に皺が寄り、視線が上空にいる妖精王たちに向かう。

「おかぁさま」

わたくしに抱きつこうとしたノアは、手を伸ばし、風の膜のせいで抱きつけない事を察したらしい。

「おかぁさま、とじこめられた……」

ショックを受けたような顔で呟くノアに、イーニアス殿下が「そんな……」と悲壮な顔をする。

「ノア、イーニアス殿下、わたくしは閉じ込められたのではありませんわ。あの少女のような見た目の妖精さんが、チロや妖精の卵たちを守る為に……って、テオ様!? 何で冷気を出しておりますの!?」
「君にこのような事をしたのは、あの女か」
『まおー、おこったー!』
『まおーのげきりん、ふれたー!!』

アカ、アオ、魔王とか言わない!

『なんだ? あの人間から、尋常じゃねぇ魔力を感じる……だと!?』
『ふんっ、テオはすごいんだからね! テオに勝てる妖精なんていないよ!』
『たかが人間に、妖精王のオレが負けるわけねぇだろ!』

天井近くでぎゃーぎゃー言い合いしている正妖精と焔妖精の様子に、テオ様の目元がピクリと動いた。

テオ様、怒っております……?

「わたし、おかぁさまたすける!」
「うむ、まずはイザベルふじんを、どうにかしなければな」

ノアとイーニアス殿下はそう言って、風がの膜をペタペタ触っている。「ふしぎな、かんしょくなのだ……」と若干楽しんでいるのは気のせいだろうか。

『ノア! あなたノアでしょ! 私とも契約しましょうよ!』

テオ様が怒っている事に気付かず、ノアのそばに嬉しそうにやって来た風の妖精王は、「やっぱりかわいい! ノアかわいい!」とキャッキャとはしゃいでいる。

確かに誰が見てもノアはかわいいですが、その後ろにいる魔王の顔を見なさい!

「だぁれ?」
『私、風の妖精王なの! 私と契約すると、とーっても強くなれるの!』
『だめー!! ノア、アオとけーやくしてる!!』
『契約は一人一妖精じゃないとダメなんてルールないでしょ。独り占めは良くないわ!』
『やだやだ!! アオだけ!! ノア、アオだけ!!』

まぁ。アオったら独占欲かしら。

「アオ、だいじょおぶよ」
『ノア……!!』

よしよしとアオのキノコを撫でるノアに、優しい子に育っているのね、と感動しつつも、少しだけ、嫉妬する恋人を宥めてる図に見えると思ってしまった。

何だかノアの将来が垣間見えましたわ……。

『ねぇ、ノア……っ、な、何!?』

アオをよしよししているノアに話しかけようと寄っていく風の妖精王が、その時、ノアの後ろの影に気づき顔を上げて、盛大に顔を引きつらせたのだ。

ええ。魔王が降臨しておりますのよ。

『だ、だ、誰!?』
「貴様こそ何者だ」

ゴゴゴ……という擬音がテオ様の後ろに見えますわ。

『わ、私は、風の妖精王よ!!』
「妖精王、だと?」

ますます眉間にシワを寄せるテオ様に、『ヒィィッ』と声を上げる風の妖精王。

『あ、あなた人間じゃないでしょ!? こんな魔力量、人間なはずない……っ』
「私は人間だ」
『嘘よ! 』

即座に否定され、テオ様も困惑気味だ。

『ワハハハッ、テオはね、すごいんだぞ!』
『お前、あの人間に何をしたんだ!?』
『ボクは何もしてないよ! ベル式魔力コントロールの修行をしたら、勝手に魔王に進化したのさ!』

わたくしのせい!?

ドヤ顔で焔の妖精王に飼い主の説明をする正妖精に、三人の妖精王が恐れおののいている。

「正妖精」
『何? テオ』
「馬鹿みたいなことを言っていないで降りてこい……そして、なぜこんな事になったのか説明しろ」
『はい!!』

胸を張っていた正妖精が、テオ様のひと睨みにビクッとして姿勢を正し、シュタッと地面に降りてきた。



『───っていうわけで、ボクの縄張りに侵入してきたコイツらが悪いんだ!』
「ここはお前の縄張りではなく、私の邸だ」
『そうでした!』

テオ様は、正妖精にあらましを説明させ、ブスッとした顔であぐらをかきながら宙に浮かんでいる焔の妖精王と、警戒しているのか、少し離れた所に浮いて様子を伺っている水の妖精王、そしてわたくしの後ろで震えている風の妖精王を一瞥すると……、

「貴様ら、今すぐ住処に帰れ」

妖精王だというのに、正妖精やアカとアオのせいで妖精の威厳はテオ様の中では地に落ち、無礼すぎる扱いになってしまっている。

『おい、たかが人間が妖精王のオレ様に向かって何言ってやが……ぎゃー!! 足が、足が凍ったー!!』

焔の妖精王の靴が凍りつき、弾けるように砕け散る。

『あばばばば……』

わたくしの後ろで風の妖精王が腰を抜かした。

「おとぅさま、よおせえさん、おどかしちゃ、めっ、よ」
「ノア……しかし、コイツらは勝手に侵入して来た者たちだ」
「あのね、わたしと、アスでんかに、あいにきてくれたのよ」
「うむ! おきゃくさま、なのだな」
「そおなの。だから、おいしぃおかしと、おちゃ、だすの」
『『『天使たち……っ』』』

わたくしの心の声と、妖精王たちの声が被ってしまったわ。


結局、ノアの一言で落ち着きを取り戻した妖精たちの争いは、定期的に妖精王たちとのお茶会を開く事で納得してもらい、たくさんのお菓子とおもちゃと共にお帰りいただいたのだ。

『ボクは認めてないからね!』
「お前も住処へ帰れ」
『ボクの住処はここだよ!?』


そういえば、土と闇の妖精王はどうしたのかしら?

『ベル~、チロ、ツヨクナル~』

まぁ、チロが可愛いからいっか。

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