継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 父子の時間 〜 ノア5歳、イザベル出産間近



テオバルド視点


ベルの出産予定日が間近に迫る中、マディソンに言われたのが、ノアとの父と子だけの時間を作るべきだという言葉だった。

考えてみれば、今までノアとはベルを介して話していた所があった。今後の事を考えると、父親としてノアと腹を割って話すべきなのかもしれない。

そう思った私は、その夜妻に相談したのだ……。

「まぁ、テオ様からそう仰ってくださるなんて……っ」

ベッドでベルを後ろから抱きしめて腕の中へ閉じ込め、膨らんだお腹を撫でながら話をする。

「この子が生まれてきた時に、ノアが不安にならないよう、話をしようと思う……」
「はい……っ、わたくしも賛成ですわ。ノアはとても優しくて繊細な子ですから、テオ様から愛されている事を伝えてあげれば、安心すると思いますの」
「ああ。さっそく明日にでも時間を取ろう」

妊娠してさらに美しくなった妻が嬉しそうに私に擦り寄るので、愛おしくて堪らない。

「ベル、君が無事に出産出来るよう、最高の医療チームも揃えたから、心配せず、出産の事だけを考えていてほしい」
「はい。わたくしは幸せ者ですわね」

私も幸せ者だ。



翌日、朝食後にノアと私をリビングに二人きりにしてくれたベルに心の中で感謝しながら、ノアに向き直る。
ノアは首を傾げ、キョロキョロとベルを探しているので、「ベルは今部屋で休んでいる」と伝える。
するとノアは、「おかぁさま、おつかれなの?」と心配そうにソワソワし始めたので、「私がお前と話があるから、席を外してくれたんだ」と伝えた。

「おはなし……?」
「そうだ。偶には父と二人の時間も悪くないだろう」
「わたし……おかぁさまとも、いっしょがいいの……」
「……これから、ベルは赤ん坊を産む。そうなると、なかなかノアに構っていられないかもしれん」
「え……」

ショックを受けたような顔をするノアに、扉付近で待機していたマディソンが、ゴホンッ、とわざとらしい咳をする。

「……もちろん、一緒に散歩やお茶をする時間はあるが、ノアだけでなく、赤ん坊のお世話もしなくてはいけないから、今より少しだけ時間がなくなるという意味だ。全く構えなくなるわけではない」

私はなぜ、こんな言い訳を並べているのだろうか……。

「あかちゃん、おせわ……、までぃそん! までぃそん、てつだって、くれる! カミラも、いるの!」
「ノア、お前は……自分はベルにそばにいてもらって、赤ん坊のそばにはベルは居なくても良いと考えているのか?」
「!? ちがうの……、ちがうのよ」

ノアの湿ってくる瞳に、マディソンがさらに咳払いをする。

「ノア。もちろん皆が赤ん坊の世話をしてはくれるだろう。だが、赤ん坊にも母親との触れ合いは必要だ。そうだろう?」
「はぃ……」
「何も、ベルが赤ん坊の世話をしている時に会ってはいけないなどと言ってはいない。そばで見ている分には良いだろう」

落ち込んで俯いていたノアは、その言葉にはっと顔を上げると、私をじっと見つめた。

「ベルもお前がそばにいると喜ぶ」
「はいっ」
「ただ、赤ん坊はよく泣くらしい。その時にベルは、赤ん坊ばかり構ってしまうかもしれない。お前は寂しい思いをする事もあるだろう」
「さびし……」
『アオいる!! ノア、さびしくない!! アオおもちゃで、あそんであげる!!』

妖精、お前は今黙って菓子を食べていてくれ。

「……妖精もいるかもしれないが……その、」
「?」
『アオ、ベルのかわり、ノア、ぎゅーっ、する!!』

話の邪魔をするな。

「ゴホンッ、そんな時は、私の所へ来るといい。お前には、母親だけでなく、父親もいるのだから」
「おとぅさまのところ……はい!」
『テオより、アオのほーが、たのしい!!』

だから黙れ。

『ヒッ!! テオのかお……あくまよりこわーい!! ノア、たすけてー!!』
「アオ、だいじょおぶよ。おとぅさま、やさしいの」
『やさしくない!! ノア、だまされてる!!』

ずっと放置していた私を、優しいと……っ

「ノア、今更と思うかもしれんが……今まですまなかった」
「おとぅさま??」
「私は、三年もの間、お前を放置し……冷遇していた」
「れぃぐ?」
「許されぬ事をしたと思っている」
『よくわからないけど、ゆるさなーい!!』
「これから先、何があっても、お前とベル、そして新しく生まれてくる子供を守っていくと約束する」
「……はい! わたしも、おとぅさまといっしょ、おかぁさまと、あかちゃん、まもるの!」

やはり、この子はベルに似ているな……。

「ああ。……ノア、これだけは覚えていてほしいのだが」
「?」
「これから先、お前が誰に何を言われたとしても、お前は私とベルの子供だ」
「? はい! わたし、ずーっと、おとぅさまとおかぁさまの、こどもよ!」

ふと、マディソンが扉の前で微笑んでいるのが視界に入り、少し照れくさくなったが、この後のキノコの言葉にそんな感情も一瞬で霧散した。

『アオも!! アオも、テオとベルのこども!!』

お前は私よりも長く生きているだろうが。キノコの子供などいらん!

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