継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 イザベルが回帰した理由3 〜 ノア5歳、イザベル臨月

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「テオ様、それはまさか……母が生きているという事ですの……?」
「その可能性もあるという事だ」

テオ様の言葉にサリーを見れば、相変わらず表情はピクリとも動いていない。

「サリー、お母様は……生きておりますの?」

サリーに聞いたはいいが、心臓がバクバクして落ち着かない。

もし、お母様が生きていたとして、だからって、もう何年も会いに来てくださらないのよ……それはきっと……、

「ベル、そんな顔をしないでくれ」

テオ様の手がわたくしの頬に触れる。

一年前は、その大きな手に安心させられる日が来るとは思ってもいなかったけど、優しい手に目を閉じる。

「私が無神経な事を聞いてしまった。君にそんな顔をさせるつもりはなかったんだ……すまない」
「テオ様……」

テオ様はわたくしをぎゅっと抱きしめて、頭をそっと撫でてくれた。

落ち着かない気持ちをテオ様に慰められていた最中だ、


「セレーネ様はお亡くなりになりました」


サリーはわたくしの予想とは違い、お母様は亡くなったのだと、はっきり口にしたのだ。

「そう、なの……」

亡くなったと言われると、それはそれでがっかりしてしまう。

「ですが、亡くなったのは人間の器で、ディバイン公爵が仰るように、神として消滅したわけではございません」
「え……」

やっぱ、生きてるという事??

「闇の女神としてのセレーネ様は現在、深い眠りについております」
「眠り……?」
「お嬢様の異世界転生と回帰で、人間の器のまま大幅に力を使ってしまいましたので、回復するまでに100年はかかるかと」

ひゃく!?

「では、闇の女神は実質いないに等しいという事か」
「はい。もちろん、世界に支障が出ないよう、創造神とカーラがフォローしておりますので問題はございません。ただ、闇属性の者の誕生が少なくなる程度でございます。闇属性は元々希少な存在ですし、当面は大丈夫かと存じます」

それ、本当に大丈夫ですの!? それにオリヴァーもわたくしも闇属性ですわよね!? 何か影響を受けるんじゃ……。

「お嬢様方は力が封じられ、もはや闇属性とすら言えぬ状態ですから全く問題ありません」
「なんか腑に落ちない言い方ですわね!?」

相変わらず失礼なサリーとのやり取りに、少しだけ癒やされていたら、いつの間にか公爵家のリビングへと景色が戻っていた。

「元に戻ってる……」
「先程の映像は記憶。すなわち幻ですから」

という事は、動きまわっていたら、元に戻った時ソファの上に立っていたり、机の上に立っている事もありえるという事かしら。

「動き回らなくて良かったですね。お嬢様」

お母様の所に駆け寄ろうとして、テオ様に止められたからか、わたくしに痛々しい瞳を向けるふりをしているサリーは、内心面白がっていると思う。

「さすがお嬢様、私の内面をよくご存知ですね」
「さっきから、サラッと思考を読むの止めてもらえる!?」
「いつもの事でございます」

溜め息を吐きながら、お腹を擦りつつソファへ座ると、テオ様が心配そうにお腹を撫でてくれる。

「少し驚きましたが、大丈夫ですわ」
「そうか……」

サリーはいつの間にか紅茶を堪能してひと息吐いているが、このサリーが麒麟だと思うと、何とも言えない気持ちになりますわね……。

「ベル、私は君が女神の娘だろうがなんだろうが、関係なく愛している」
「テオ様……」
「ノアは……、君と私の子だと思えば愛しいものだと思っていたが、本当に私と君の間に出来るはずだった子だと聞いて、より愛しいと感じるのは、酷い親だろうか……」

もしかして、それで現金な親だと悩んでいましたの?

「ふふっ、テオ様、わたくしたちは人間ですわ。汚い感情も、マイナス思考になってしまう事も、当然ございますし、損得で行動する事もございます」
「ああ……」
「他の人から見れば、その考えはどうなのと思われるかもしれませんが、わたくしは、あなたがノアをより愛してくれるのだと思ったら、嬉しく思うのですわ」
「ベル……っ」

皇帝陛下に影響を受けたのか、素直に自分の気持ちをお話ししてくださるテオ様が、とても好ましいですわ。

「テオ様、わたくしの回帰前のお話をした時、約束した事がございましたでしょう」
「ああ」

悪魔の事が終わってすぐの事、わたくしは悪女だった頃にノアにしてしまった事をテオ様に話していた。

“わたくし、本当に酷い母親でした。今でも自分が許せません。きっと一生許せないでしょう。テオ様も、そうなのでしょう……? ───……だからこそ、これからは回帰前の分も合わせて、二人でノアをたくさん愛していきましょう”

「わたくしたち、まだまだ未熟なお父様とお母様ですが、自分がやってしまった罪を忘れず、わたくしたちのペースで、子供たちにとって素敵だと思ってもらえる両親になっていきましょうね」
「ああ……そうだな」

テオ様の腕の中で幸せを感じていたのだけど……、

「ゴホンッ、仲が良い事は結構でございますが、所構わずイチャイチャするのはどうかと思いますよ」
「私もサリーさんと同じ意見です」

サリーとウォルトの辛辣な言葉に、顔を引きつらせる事になったのだった。

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