継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
115 / 186
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ディバイン公爵家の影2 〜

しおりを挟む


「“影”というのは、ディバイン公爵家初代当主であるウェルス様に元々付き従っていた部隊が、公爵家を興した際にそのまま仕えた事で生まれたものだ。その子孫が現在も影として仕えており、主に諜報、破壊工作、暗殺、護衛、などを行う」
『アオも、かげー!!』

やはり忍者ですのね! アオは御庭番ごっこかしら。

「頭脳、身体能力共に優秀であり、ディバイン公爵家に忠誠を誓う者でなくては影にはなれない」
『アオ、あたまいー!! ゆーしゅー!!』

ノアは幼い子供ですのに、テオ様のお話を理解できているのかしら? と、チラリと横を見れば、じっとテオ様を見ているではないか。

息子の瞳はこの話を理解している事を物語っていた。

「そして、代々影の長を担うのがウォルトの一族だ」
「ウォルトが、影の長という事ですの?」

ウォルトを見れば、しっかり伸びた姿勢と、落ち着いた態度は通常通りに、「今代の影の長を務めさせていただいております」とはっきり言ったのだ。『おさー!!』とお化けキノコがウォルトの周りを飛んでいるのは締まらないが、ウォルトは見えていないので何も言わないであげたほうがいいかもしれない。

「もしかして、ミランダも……?」

ミランダの事は、ずっと忍者のようだと思っていた。

「はい。奥様の仰る通りでございます」

カミラと共に扉のそばで待機していたミランダが答えると、カミラが「エェ!?」と叫んだので、カミラは影ではないらしい。

「まぁ、ずっとわたくしを守ってくれていたのね。ありがとう。ミランダ」
「とんでもございません。奥様をお守り出来る事は、私共の栄誉でございます」

そう言ってくれるミランダに感謝する。

「テオ様も、最初からわたくしに影を付けてくださっていましたのね。嫌われているとばかり思っておりましたのに……ありがとう存じますわ」
「嫌うなどと……ベル、私の愛しい人。あの時はすまなかった」

テオ様がわたくしの手を両手でギュッと握る。

「テオ様、よろしいのですわ。テオ様にも理由がありましたもの」
「ベル……」
「ゴホンッ、旦那様、奥様、ノア様にご説明中です」

ウォルトの言葉にハッとし、テオ様の手を離す。テオ様は若干恨めしそうにウォルトを見ていましたけれど、子供たちの前ですわ。

「それで、テオ様。サイモン君が影というのは……」
「ああ、サイモンには将来ウォルトの後を継いでもらう事が決まっている。その為、幼い頃から基礎訓練を受けているんだ」

幼い頃からって……今も十分幼いですわよね。

「おくさま。わたしは、いやいやくんれんをうけているわけではなく、すすんでうけております。ですから、そのようなおかおをなされなくとも、だいじょうぶです」

サイモン君はそういってニコリと微笑む。それは子供の無邪気な笑みとは異なるものであったが、悲しみの感情はなかった。

どのような訓練かはわかりませんけれど、酷い扱いを受けているというわけではなさそうですわね。

「そうですの……ウォルトの一族の事でわたくしが口出ししてしまうわけにはいきませんわよね。サイモン君、ノアをお願いいたしますわ」
「もちろんです。おまかせください」
『ノアは、アオがまもるのー!!』

あらあらアオったら、ノアに抱きついてアピールしていますわ。

「アオ、わたしも、アオまもるのよ!」
『ノアー!!』

息子がお化けキノコと抱き合って、ほっこりするシーンだけれど、見えていないサイモンからしてみればちょっと怖いかもしれませんわね。

「ノアさま、もしかしてようせいさまが、いらっしゃるのでしょうか」
『アオ、ここいるー!!』
「アオ、ここにいるのよ」
「!? それは、たいへんしつれいいたしました」

ペコリと頭を下げるサイモンに、ウォルトは表情をくずさず見つめている。

「ほんじつより、ノアさまのじじゅうとして、おつかえすることになりました、サイモンともうします。ようせいさま、よろしくおねがいいたします」

アオに向かって、丁寧に挨拶するサイモンに、アオがびっくりしている。

『ノア、まもってくれるなら、そばいること、ゆるす!!』
「アオ、そばいること、ゆるすっていってるのよ」

ノアが通訳みたいになっていますわね。

「はい! ありがとうございますっ」

妖精の事も怖がったり、変に思ったりもしていないようだし、ノアともアオともうまくやれそうで良かったですわ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


「サイモン、奥様は現在妊娠中です。ノア様が奥様に抱きつく際、お腹にぶつかっていかないよう、注意してあげてください。良いですね」
「はい。マディソンおばあさま」
「もう一つ。ノア様のご友人である、皇太子殿下がほぼ毎日、転移でこちらに来られます。驚かず、失礼のないよう対応する事」
「こうたいしでんかが……。しょうちいたしました」
「それと、妖精様は甘いおやつとおもちゃをお好みになります。目の前で突然それらが消えたとしても驚いてはなりません」
「はい」
「最後に、ウォルトの仕事ぶりは参考にしても良いですが、恋愛面は参考にしてはいけませんよ」
「? はい」

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...