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番外編 〜 アベルとフローレンス 〜
番外編 〜 聖者コンビの大冒険2 〜 アベル5歳、フローレンス8歳
しおりを挟むアベル視点
「ねぇ、フロちゃん。おもちゃのたからばこ、どこでおりればいけるの?」
「うーん、いつも転移で来てるから、馬車だとよくわからないけど、人通りが多いところでおりたら行ける気がする!」
『さすがフローレンス! 名探偵だね!』
『いざとなったら転移で帰ろうね』
オレ、おしりいたくなってきた……。
「もうおりたい……」
「あーちゃん、まだ人通りが少ないよ」
「でも、オレおしりいたいよ」
「じゃあ、降りる?」
「うん。もうおりる!」
『アベル! 馬車が動いている時に降りるのは危ないんでしょ!?』
ウィルがあぶないっていうけど、のってるほうがあぶないきがする。おしりがいたいもん!
「ウィル、風魔法がある。アベルも私も使えるからだいじょーぶ!」
『さっきと言ってること違うよね!?』
『フローレンスは一つの意見に固執したりはしないのさ! 柔軟な考えの持ち主なんだ』
『ナサニエル! フロちゃんに甘すぎるんじゃないの!?』
『バディに甘くなるのは、妖精の性だよ』
『堕落に誘う悪魔みたいな事言わないの!』
ウィルとなーたんがさわいでるけど、ふたりとも、もうおりるよ。
「せーのでジャンプね!」
「あーちゃん、ちゃんと風魔法使うんだよ。着地は大事だよ」
「わかった!」
「「せーの!!」」
ばしゃからとびだして、まほーでちゃくちする。
こんなのかんたんだよ。
『アベル! 大丈夫!? ケガはない!?』
「へーき。ケガなんてしないよ。それより、ここ……どこだろうね?」
『まだ貴族街を抜けてないよ。ねぇ、危ないから戻ろうよ』
「だいじょぶ! オレをしんじて」
『アベル……』
ウィルが、なにかいいたそうなめをしていたけど、そのときね、フロちゃんがオレをよんだんだ。
「あーちゃん! あそこ見て、ネコがいる!」
フロちゃんが、ゆびさすさきにいたのは、よろよろあるいて、いまにもたおれそうなネコ。
「たいへんだ! たすけなきゃっ」
「あーちゃん、でも魔王様が、治癒魔法は使ったらダメって言ってたよ」
「おとうさま……っ、でも、ほおっておけないよ……」
「うーん……じゃあ、誰にも見つからない所に、あの子を連れて行こう」
「! うんっ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テオバルド視点
「アベルとフローレンスが、外に出ただと!?」
「影を付けてはいるので心配ないかと思いますが、どうやらスミスの馬車の荷台に乗り込んだようです」
ウォルトの話を聞きながら厩舎へと急ぐ。
「スミスの馬車だと……っ」
奴は影の一員だ。子供たちに気付いてくれれば、連れ帰ってくれるかもしれないが……。
「私の馬の準備は出来ているか」
「はい。厩舎の者にはすでに伝えております。一足先に、アベル様の護衛がスミスの馬車を追っておりますので、そろそろ追いつく頃かと」
「影からは何か情報は入ったか」
「スミスの馬車に乗ったとしかまだ……」
「妖精共も肝心な時にいないとはな……」
厩舎の外にはすでに私の馬がおり、馬丁から引き渡される。
「ウォルト、お前はここで影の連絡を待て」
「かしこまりました」
馬に乗ると、そのまま門の外へと飛び出す。
もし、子供たちが治癒魔法を使い、目撃されてしまえば、厄介な事になるだろう。
それだけは阻止しなければ……っ
スミスの馬車は、思ったよりも近くに停車していた。
アベルの護衛騎士が、スミスと何かを話している。
「お前たち! アベルはどうした!」
「閣下! 申し訳ありません!! 自分が馬車を停車させた時には、アベル様とフローレンス様の姿はなく……」
「テオバルド様、申し訳ございません! 私としたことが、子供たちの気配に気付かず、連れ出してしまいました!」
護衛騎士とスミスの話に頭痛がしてくる。
子供たちは妖精や精霊のせいで、気配が分かりにくいとウォルトが言っていたが、まさかこんな所で弊害が出るとは……。
「子供の足で遠くへ行ったとは思えない。近くにいるはずだ。探せ」
「「はっ!!」」
アベルたちに付いている影もいる。暫くすれば連絡が来るだろう。
「あれ? いまおとうさまのこえ、きこえなかった?」
「魔王様の声? ……聞こえないよ?」
「? きのせーかな」
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