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番外編 〜 ぺーちゃん 〜
番外編 〜 教皇とイザベル1 〜 ノア10歳、アベル5歳
しおりを挟む教皇フェリクス視点
悪女イザベル・ドーラ・ディバイン。クレオすらも誑かすお前の正体、私が直々に暴いてくれるわ!
「……猊下、そのように私の腕の中でふんぞり返られますと、頭に血が上ってしまいますよ。後、ヌハハハという笑い方は、ペーちゃんにはどうかと思いますがなぁ」
「う、うりゅちゃい! いみゃは、ペーちゃにゃんだかりゃ、ぼりょをだすにゃよ」
「ボロですか? それはペーちゃんにこそ言いたいですが」
ニコニコと私に苦言を呈するクレオに、ちょっとビクッとする。
クレオは人は良いが、あの氷の大公と火花を散らせるくらいの胆力はあるのだ。
まぁ、私がいなければすぐ騙される奴だがな!
「そろそろ公爵邸ですよ」
「にゅ!」
窓の外を一生懸命見ようとするが、この小さな背と手足では、馬車の窓すら除くことは難しい。
「しかし、まだ門にも辿り着いていないというのに、迫力のあるお城ですなぁ。ディバイン公爵邸は帝都で皇城の次に美しいと評判ですが、誠ですな!」
「みえにゅ……っ、ペーちゃも! ペーちゃもみりゅ!」
クレオの首に必死に手を伸ばしていると、やっと気付いてくれたのか、私を窓の方へ抱き上げてくれた。
「ふぉぉ!」
回帰前、私が自由に外に出られるようになった年には、戦地になっていた帝都は、ほぼ壊滅していたから、ディバイン公爵邸をこうして見る事もなかったが、皇城に勝るとも劣らぬ立派な城だ!
「世界の富と権力が集まると言われるだけありますなぁ」
「ちょんにゃこと、いわりぇてりゅにょか!?」
「はい。元々グランニッシュ帝国の軍事のトップであり、鉱山や貿易港なども保有していたディバイン公爵家は、もちろん富も権力もございましたが、シモンズ伯爵家から現在の奥様を娶ってからは、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、様々な商業革命を起こし、現在世界一と言われるほどの富を手にされているそうですよ」
そ、そんな事になっているのか……!
「おおっ、やはり門番も体つきからして違いますな! ペーちゃん、あちらには騎士たちが中と外で巡回しておりますぞっ」
「はちゃぐにゃ、くりぇお」
「ホホッ、これは失礼しました。我々のいる教会も素晴らしい建造物ですが、このように立派な歴史的建造物を見るのは楽しゅうございましてなぁ」
クレオは芸術作品を鑑賞するのが大好きだからな。
「そうそう、ペーちゃん。ディバイン公爵家からは、教会に多額の寄付をいただいておりますから、あまり失礼のないようお願いしますよ」
「にゃ!? にゃじぇ、ちょりぇを、いまいうにょだ!?」
「いえ、何となく……ペーちゃんがとても失礼な事をするのではないか、という未来が見えました」
「おまえは、みりゃいち、できにゅだりょう!?」
クレオが未来視出来るなど聞いたこともないわ!
「おおっ、門をくぐりましたぞ! ペーちゃんっ、ワンワンがおりますよ! ドーベルマンですかな。シュッとして、筋肉質で、あれを格好いいというのでしょうなぁ。私もワンワンを飼ってみたいものです」
「わんわん、じょこだ!? みちゃい! ペーちゃ、わんわんみちゃい!」
「あそこに……、ああ、残念です。通り過ぎてしまいました……」
「ちょんにゃ……、ペーちゃ、わんわん……」
私は動物が大好きなのに! 見たかったっ、ドーベルマンが見たかった!!
「二匹おりましたよ」
「にひき!!」
ワンワン……犬の事ではしゃいでいると、馬車が停まり、御者が到着した事を教えてくれる。
「着きましたな。しかし、今まで我々を邸に迎える事を拒否されていた公爵が、何故突然、公爵邸での面会をお許しになったのでしょうなぁ」
「わかりゃにゅ。だが、ゆだんちゅりゅでにゃいぞ」
「はい」
馬車を降りると、思っていたよりも数倍大きな玄関に、使用人がズラリと並んでいた。皆、さすが公爵家の使用人と思うような、上等な制服に身を包み、身綺麗にしており、肌艶も良い。
酷い扱いは受けていないようだ。それどころか、いきいきとしているようにも見える。
「ディバイン公爵家へようこそお越しくださいました。旦那様と奥様が中でお待ちですので、ご案内いたします」
この執事が、回帰前にノアとサイモンの言っていた、『ウォルト』という、当主の片腕か。
ディバイン公爵家の『影の長』だと……? 何だ、この常人離れした数値は!? 本当に人間か!?
執事の鑑定をすれば、化け物だった。
使用人の中にも数人、『影』と出てくるおかしな数値の者が混ざっている。
私の鑑定は、視た者の能力を数値化する。最初は良く分からなかったが、色んな者を見ていくうちに、平均的な数値がわかるようになり、そこからは視た人物や物がどういうものなのか、詳細に知る事が出来るようになったのだ。
「大司教クレオ様、フェリクス様、こちらへどうぞ」
ウォルトという執事に案内され、私たちはとうとう、公爵邸の中へと踏み込んだのだ。
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