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番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャの日常、公爵邸招待編1 〜
しおりを挟むミーシャ視点
「そういやぁ、ミーシャ、お前んとこ、そろそろだよな」
「何が?」
「何って、時期的に参観日に決まってんだろうが。オレの時は大変だったぞ。父様と母様が馬車でアカデミーに乗り付けて、大騒動になった」
さんかんび…………、
「参観日!!」
アベルお兄様の言葉で思い出した参観日は、子煩悩な両親にとっては重要なイベントで、来ないという選択肢はないだろう。
どうしよう……、このままじゃ、最悪の形で私が公爵令嬢だってバレてしまう……。
頭を抱えていると、「ミーシャったら、そんなに頭を抱えて何を悩んでるのよ」と、クロエがやって来たのだ。
「授業中、珍しく集中出来ていない様子だったから、心配したのよ」
ここはアカデミーの教室だから、友人たちからも悩んでいるのが見えて、心配をかけてしまったらしい。
「ミーちゃん、何かあったの?」
「ミーシャ、悩みなら聞くよ」
私の席の周りに集まってきてくれたコニーとナツィーも、話を聞くと言ってくれるから、余計良心が痛んだ。
「……もうすぐ授業参観だから……」
「そっか~。親に授業風景見られるのって緊張するよね」
「あー、私もあまり親には来てもらいたくないなぁ。なんだか恥ずかしいし」
「でもさ、ミーシャは優秀だし、全然問題ないじゃない」
どうしよう……。もう三人に、黙ったままでいるのは無理かもしれない。参観日にバレるよりも、きちんと話したほうがいいのかも……。
「あのね……、私、みんなに黙ってた事があって……」
心臓がバクバクする。
「ん? どうした? ミーシャ」
「ミーちゃん?」
「何? もしかして、課題してくるの忘れたとか?」
この優しい三人に、もしかしたら嫌われるかもしれない。でも、参観日にバレた時の方が、三人を傷つけてしまうんじゃないだろうか。
「私、みんなに嫌われたくなくて……」
「何言ってるの! 例えミーシャが一週間お風呂入ってなくても嫌わないわよ!」
「フフッ、それは嫌わないけど、入ろうねって注意はするかも」
「確かに、それは注意するかもね」
クロエの言葉に皆が笑い、場が和む。
「ありがとう……」
嫌われたとしても、三人には嘘をついていたくない!
「三人とも、今週末、空いてるかな? あの、ウチに遊びに来ない!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「言っちゃった……、ついに、ウチに誘っちゃった……」
教室で、三人をウチに誘って、三人とも快諾してくれたのはいいけど、家に帰ってからも心臓がバクバクしている。
『ミーシャ、ドーシタノ? ナヤミ、アルノ?』
「チロちゃん……、実は───」
偶々、私の部屋で遊んでいたお母様の妖精、チロちゃんが、心配そうに顔を覗き込んできた。
『ワ~、ミーシャ、オトモダチクル~?』
「うん……。でも、嫌われちゃうかも……」
『ドーシテ?』
「だって、ずっと騙していたから」
自分で言っていて悲しくなる。チロちゃんは私の顔の周りをくるくると飛んで、肩にちょこんと座った。
『ミーシャ、オトモダチ、キライ?』
「まさか。大好きだよ」
『オナジ!』
同じ?
『オトモダチ、ミーシャ、ダイスキナノ』
「チロちゃん……」
『ダイジョーブ、オトモダチ、シンジテ』
「うん。ありがとうチロちゃん!」
『チロモ、シンジテ』
「うん。信じてる」
チロちゃんは私の頬にチュッとして、『バンゴハン、タベニイクノ~』と指の先を引っ張ってダイニングルームへ連れていってくれたのだ。
そして、とうとう、三人を公爵邸に招待する日がやってきたのだ。
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