155 / 175
番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャ15歳の日常5 〜
あの後、皆に心配されたが、私を祝う為に集まってくれたのだ。場をしらけさせる訳にもいかないと、兄のことはとりあえず頭から追い出し、開き直って楽しんだ。
顔色が悪かったのは、予期せぬ公子様との遭遇に緊張してしまったからだと、皆が納得してくれて助かった。
その後、楽しかった、と帰路についたが、家に帰るのがとても億劫だ。
お兄様がお父様に報告していたらと思うと……。
「───ミーシャ、お帰りなさい。楽しんできた?」
「お母様……っ」
「あらあら、どうしたのミーシャ」
朗らかに迎えてくれたお母様に、つい抱きついてしまう。
お母様に甘えている姿をアベルお兄様に見られたら、からかわれるに決まっているので、今お兄様がいなくて良かった。
「お友達とケンカしてしまいましたの?」
「ケンカ、していません……」
頭を撫でてくれるお母様に、ホテルでお兄様と出くわしてしまったことを話す。
「……お父様にバレたら、アカデミーは辞めさせられてしまうかも……」
「そんな風に考えていたの? 大丈夫よ。だってお父様は、初めから全部知っているもの」
え?
「お父様は全部知っていて、あなたをアカデミーに通わせていますのよ」
「ぇ……どうして……」
「あなたの好きにさせてあげたいと、お父様はそう思って何も言わなかったの」
「じゃあ……、辞めなくていいの?」
「もちろんですわ」
最初から知っていたなんて……。
安心したら力が抜けた。お母様に体重をかけてしまうが、お母様は黙って抱きしめてくれたのだ。
その後、お父様が帰ってきて、「お父様、ありがとう」と言ったら、珍しく無表情を崩し、目をまん丸くしてお母様を見て、クスクスと笑われていた。
その日は結局、私が起きている間にノアお兄様が帰って来ることはなかった。
翌日の朝食で、食堂に家族が集う。
お父様とお母様、アベルお兄様にフローレンスお義姉様(私はフロちゃんと呼んでいる)、そしてノアお兄様もいたが、特に昨日の事に触れられることはなかった。
「ミーちゃん、食欲ないの? エビフライ食べる?」
フロちゃん、朝からエビフライはいらない。
食後、部屋に戻る前にノアお兄様が声をかけてくれた。
「ミーシャ、昨日は友だちと遊んでいるところを邪魔をしてしまってごめんね」
ノアお兄様は、お兄様が悪いわけでもないのに、謝罪をしてくれた。
『ミーシャ、きのーのかっこー、なにー!!』
『昨日って? ミーシャ何かしたの?』
妖精たちが集まってくる。
キノコたちは、秘密にしている話には鼻が利くのだ。
「私は、お母様に似ているから、騒ぎになったら迷惑かけてしまうと思って……」と言い訳すると、お兄様はハッとした顔をする。
『ノア、いつもかこまれるー!!』
『だから昨日何があったの!?』
「私も変装した方がいいのかな……?」
今更ですか? お兄様。
『ノア、にんき、アオはなたかだかー!!』
『何で皆で無視するのさ!?』
キノコの気持ちはわからないでもない。お兄様が人気があるのは、鼻が高い。
『ねえ、聞いてる!?』
「なーたん、聞いてるよ。昨日はね、変装して友だちと遊んでいたらね、ノアお兄様とバッタリ遭遇したの」
『ぅわ~ん、ミーシャ好きー! 教えてくれてありがとう!!』
なーたんはフロちゃんの妖精で、キノコたちの親玉だけど、キノコたちより扱いが下らしい。人型の妖精よりキノコが偉いのだろうか。
妖精の生態はよくわからない。
「ミーシャ、ノア兄様にわがまま言ってるんじゃないだろうな」
ノアお兄様と妖精たちと楽しく話していたら、そこへアベルお兄様がやって来た。
「アベルお兄様、別にわがまま言ってない。お兄様こそ、アスお兄様の近衛隊に入りたいってわがまま言ったんでしょ」
「何でそれを!?」
「アカから聞いた」
「あのキノコ!!」
アベルお兄様はアスお兄様が大好きだから、毎回アスお兄様関係で問題を起こしている。その度に、アカがこんな事があったとお父様に報告にくるのだが、私もよくその場に遭遇するのだ。
「ところでアベルお兄様、新居の建設場所決まったの?」
「ああ、教会と皇城の真ん中になる予定」
ざっくりと場所を教えてくれた新婚のアベルお兄様は、現在新居を建設中だ。
2年以上は建設にかかるらしいから、それまではここに住むらしいのだけど、ノアお兄様は、
「新居を建てずに、このままここに住んでも良いって言ったんだけど、アベルが嫌だって言うんだ……」
アベルお兄様が家を出る事が寂しいらしい。
「当たり前だろ。兄様もいずれ妻を迎えるんだし、弟夫婦が一緒に住んでたら、未来の義姉に悪いしな。ミーシャも、ノア兄様に迷惑かけるなよ」
「かけない。ノアお兄様にお嫁さんがきたら、別宅に移る」
「ミーシャまで……」
『ノア、まだけっこんしない!! だから、ミーシャ、いどうしない!!』
キノコ、お兄様はもう25歳だ。まだ結婚しないとか言ったら可哀想だろう。
ほら、ちょっと落ち込んでる。
モテすぎても結婚できないんだなぁ、と思ったのは内緒だ。
「あのね、二人とも。お父様がお母様と結婚したのは30過ぎだから、そんなに慌てることはないと思うんだ」
「ノア兄様、そんな事言ってると、ウォルトみたいに生涯独身だぞ」
「うぅ……」
結婚は、完璧なノアお兄様にとって唯一の弱点かもしれない。
「そういやぁ、ミーシャ、お前んとこ、そろそろだよな」
「何が?」
「何って、時期的に参観日に決まってんだろうが。オレの時は大変だったぞ。父様と母様が馬車でアカデミーに乗り付けて、大騒動になった」
さんかんび…………、
「参観日!!」
両親をアカデミーに招待する日だ!!
〈アカデミー編へ続く〉
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。