継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャ15歳の日常5 〜



あの後、皆に心配されたが、私を祝う為に集まってくれたのだ。場をしらけさせる訳にもいかないと、兄のことはとりあえず頭から追い出し、開き直って楽しんだ。

顔色が悪かったのは、予期せぬ公子様との遭遇に緊張してしまったからだと、皆が納得してくれて助かった。
その後、楽しかった、と帰路についたが、家に帰るのがとても億劫だ。

お兄様がお父様に報告していたらと思うと……。


「───ミーシャ、お帰りなさい。楽しんできた?」
「お母様……っ」
「あらあら、どうしたのミーシャ」

朗らかに迎えてくれたお母様に、つい抱きついてしまう。
お母様に甘えている姿をアベルお兄様に見られたら、からかわれるに決まっているので、今お兄様がいなくて良かった。

「お友達とケンカしてしまいましたの?」
「ケンカ、していません……」

頭を撫でてくれるお母様に、ホテルでお兄様と出くわしてしまったことを話す。

「……お父様にバレたら、アカデミーは辞めさせられてしまうかも……」
「そんな風に考えていたの? 大丈夫よ。だってお父様は、初めから全部知っているもの」

え?

「お父様は全部知っていて、あなたをアカデミーに通わせていますのよ」
「ぇ……どうして……」
「あなたの好きにさせてあげたいと、お父様はそう思って何も言わなかったの」
「じゃあ……、辞めなくていいの?」
「もちろんですわ」

最初から知っていたなんて……。

安心したら力が抜けた。お母様に体重をかけてしまうが、お母様は黙って抱きしめてくれたのだ。
その後、お父様が帰ってきて、「お父様、ありがとう」と言ったら、珍しく無表情を崩し、目をまん丸くしてお母様を見て、クスクスと笑われていた。

その日は結局、私が起きている間にノアお兄様が帰って来ることはなかった。

翌日の朝食で、食堂に家族が集う。
お父様とお母様、アベルお兄様にフローレンスお義姉様(私はフロちゃんと呼んでいる)、そしてノアお兄様もいたが、特に昨日の事に触れられることはなかった。

「ミーちゃん、食欲ないの? エビフライ食べる?」

フロちゃん、朝からエビフライはいらない。

食後、部屋に戻る前にノアお兄様が声をかけてくれた。

「ミーシャ、昨日は友だちと遊んでいるところを邪魔をしてしまってごめんね」

ノアお兄様は、お兄様が悪いわけでもないのに、謝罪をしてくれた。

『ミーシャ、きのーのかっこー、なにー!!』
『昨日って? ミーシャ何かしたの?』

妖精たちが集まってくる。
キノコたちは、秘密にしている話には鼻が利くのだ。

「私は、お母様に似ているから、騒ぎになったら迷惑かけてしまうと思って……」と言い訳すると、お兄様はハッとした顔をする。

『ノア、いつもかこまれるー!!』
『だから昨日何があったの!?』
「私も変装した方がいいのかな……?」

今更ですか? お兄様。

『ノア、にんき、アオはなたかだかー!!』
『何で皆で無視するのさ!?』

キノコの気持ちはわからないでもない。お兄様が人気があるのは、鼻が高い。

『ねえ、聞いてる!?』
「なーたん、聞いてるよ。昨日はね、変装して友だちと遊んでいたらね、ノアお兄様とバッタリ遭遇したの」
『ぅわ~ん、ミーシャ好きー! 教えてくれてありがとう!!』

なーたんはフロちゃんの妖精で、キノコたちの親玉だけど、キノコたちより扱いが下らしい。人型の妖精よりキノコが偉いのだろうか。
妖精の生態はよくわからない。

「ミーシャ、ノア兄様にわがまま言ってるんじゃないだろうな」

ノアお兄様と妖精たちと楽しく話していたら、そこへアベルお兄様がやって来た。

「アベルお兄様、別にわがまま言ってない。お兄様こそ、アスお兄様の近衛隊に入りたいってわがまま言ったんでしょ」
「何でそれを!?」
「アカから聞いた」
「あのキノコ!!」

アベルお兄様はアスお兄様が大好きだから、毎回アスお兄様関係で問題を起こしている。その度に、アカがこんな事があったとお父様に報告にくるのだが、私もよくその場に遭遇するのだ。

「ところでアベルお兄様、新居の建設場所決まったの?」
「ああ、教会と皇城の真ん中になる予定」

ざっくりと場所を教えてくれた新婚のアベルお兄様は、現在新居を建設中だ。
2年以上は建設にかかるらしいから、それまではここに住むらしいのだけど、ノアお兄様は、

「新居を建てずに、このままここに住んでも良いって言ったんだけど、アベルが嫌だって言うんだ……」

アベルお兄様が家を出る事が寂しいらしい。

「当たり前だろ。兄様もいずれ妻を迎えるんだし、弟夫婦が一緒に住んでたら、未来の義姉に悪いしな。ミーシャも、ノア兄様に迷惑かけるなよ」
「かけない。ノアお兄様にお嫁さんがきたら、別宅に移る」
「ミーシャまで……」
『ノア、まだけっこんしない!! だから、ミーシャ、いどうしない!!』

キノコ、お兄様はもう25歳だ。まだ結婚しないとか言ったら可哀想だろう。
ほら、ちょっと落ち込んでる。

モテすぎても結婚できないんだなぁ、と思ったのは内緒だ。

「あのね、二人とも。お父様がお母様と結婚したのは30過ぎだから、そんなに慌てることはないと思うんだ」
「ノア兄様、そんな事言ってると、ウォルトみたいに生涯独身だぞ」
「うぅ……」

結婚は、完璧なノアお兄様にとって唯一の弱点かもしれない。

「そういやぁ、ミーシャ、お前んとこ、そろそろだよな」
「何が?」
「何って、時期的に参観日に決まってんだろうが。オレの時は大変だったぞ。父様と母様が馬車でアカデミーに乗り付けて、大騒動になった」

さんかんび…………、

「参観日!!」

両親をアカデミーに招待する日だ!!




〈アカデミー編へ続く〉


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