継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
175 / 186
番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編4 〜

しおりを挟む


ミーシャ視点


結局、馬車の事はお父様に相談したのだが、「お前が心配することは何もない。学業を頑張りなさい」と言われてしまい、それ以上は何も言えなかったのだ。

なぜ父がそんな風に言ったのか、翌日のアカデミーの噂で、全てが明らかになる。

「おいっ、聞いたか!」
「聞いた!! 参観日に、皇帝陛下とディバイン公爵閣下が視察に来られるんだろ!! あれ、本当の噂なのか!?」
「マジらしい。どうやらロペス侯爵令嬢が、皇太子殿下の婚約者候補だから、様子を見に来るんじゃないかって事らしいけど」
「あー、やっぱりロペス侯爵令嬢が本命かぁ」
「でもディバイン公爵令嬢に決まりとか言われてなかったか?」
「ディバイン公爵令嬢は、公爵閣下が溺愛していて、嫁に出さないって噂だろ」

つまり父は、皇帝陛下と共に、堂々とディバイン公爵閣下としてやって来る気なのだ。

「せっかく、チロちゃんとアオが変装を提案してくれたのにな……」

お母様はノリノリだったっていうのに……きっとアオがつけ髭すすめて、お母様に似合わないって言われたから、変装が嫌になったんだ。

「オーロラ様、もうオーロラ様に決まりですね!」
「何といっても皇帝陛下がいらっしゃるというのですもの!」
「ミーシャ様はお越しにならないのかしら……」
「ディバイン公爵令嬢は、公爵閣下が外出を禁止されていらっしゃるとか。……まぁ、貧乏男爵の方のミーシャはアカデミーにいますけれど」
「いやねぇ。公爵令嬢と同じ名前にだなんて、恥ずかしくないのかしら」

ずっと思っていたけど、私は何でロペス侯爵令嬢のお友だちに目の敵にされているのだろうか??



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミーシャの担任視点


~ 職員室では ~


「───警備は、近衛の他にも皇城から騎士団が派遣されるらしい」
「この国のトップ3が来るんだ。何かあってからでは遅い。アカデミー側からも警備の強化が必要なのでは!?」

昨日からの緊急会議は今日も続き、午前中は全学年が自習となるだろう。
それもそのはず、あの韜晦皇帝と名高い、グランニッシュ帝国の太陽と、それを支えるもう一つの太陽、皇后陛下、そしてグランニッシュ帝国の柱と言われるディバイン公爵閣下が、このアカデミーに視察に来られるのだ。

「ディバイン公爵閣下は、奥方を連れて来られるのだろうか……」

一人の教師の発言で、皆の脳裏に5年前の参観日が過った。

そう、アベル公子様の参観日だ。当時アベル公子様の担任だった副学長も、生徒たちも大興奮し、授業にならなかった上、他のクラスの生徒も集まって大混乱した事は記憶に新しい。

10年前の皇太子殿下とノア公子様の時代はもっと大変だったそうだ。
私はその頃教師ではなかったので人伝に聞いただけなのだが、アベル公子の頃を思うとゾッとするほどだ。

「恐らく、陛下が視察されるのは、皇太子殿下の婚約者候補と噂されるロペス侯爵令嬢のクラスだろう」

まさか、私のクラスが……っ

「先生、大丈夫ですか?」

何が起こるか分からなくなってしまった授業参観に、緊張の色が隠せなかったのか、隣に座っている教師から心配されてしまった。

「ええ、大丈夫です。生徒たちに危険のないよう、万全の注意をはらいますので」

3日後に迫った授業参観は、絶対に成功させなければならない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~

テオバルド視点


『テオ、ヒゲつける!!』
「まぁっ、テオ様がおヒゲ? 絶対素敵ですわ!」

ミーシャから、授業参観は変装して来て欲しいと言われ、寝る前の貴重な二人の時間に、ベルとどんな変装をするのか話していたら、青いキノコが邪魔をしにやって来た。
しかもつけ髭をしろとまで言ってくる。

まぁ、ベルがそこまでいうのなら、やぶさかでないが。

翌日、早速つけ髭を手配し、愛する妻の前で付けてみたのだが……、

『テオ、おもしろーい!!』
『テオ、ニアワナイノ……』
「…………っ」

呼んでもいない妖精がやってきて、馬鹿にするだけでは飽き足らず、ウォルトまで……表情を変えずに肩を震わせるという器用な笑い方をするではないか。

「ま、まぁ……っ、テオ様、その、びっくりするほど似合いませんわ」
「!?」

“二度とつけ髭は付けない”

この日、私はそう心に決めたのだ。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...